和だし帖|うま味と季節をたのしむ台所便り~
【第2回】

毎日のごはん作りに欠かせない「だし」。でも、こんなふうに思ったことはありませんか?

「だしって、結局どれを使えばいいの?」
「かつお節が王道だけど、他のだしとの違いって?」

実は「だし」とひとくちに言っても、その種類や特徴はさまざま。素材が変われば、味も香りもぐんと変わります。

今回の「和だし帖」第2回目は、「素材ごとのだしの味くらべ」。うま味・コク・香り…それぞれの違いや活用法をわかりやすくまとめてみました。

和食の土台となる“うま味のちがい”を知ることで、皆様の料理がもっと自分らしく、そして楽しくなりますように。

前回の【和だし帖|第1回】はこちら
はじめての「だし」入門|昆布・かつお・煮干しの種類と使い方をやさしく解説

素材別に味くらべ!和だし7種の特徴

それぞれの素材がもつ、香りや旨みのちがいを比べてみましょう。
料理に合わせて、ぴったりの「だし」を選ぶヒントが見つかります。

「これぞ和食!」といえるような、豊かな香りとキレのあるうま味が特徴のかつお節だし。
お吸い物や味噌汁、煮物など、出汁の香りを前面に出したい料理にぴったりです。

  • 香り:★★★★☆
  • コク:★★★☆☆
  • 透明感:◎
  • 向いている料理:お吸い物、茶碗蒸し、煮物全般

かつお節の選び方
初めてなら「花かつお」タイプでOK。保存は密閉容器で湿気を避けましょう。

昆布だしは、関西地方を中心に愛されてきた透明感のあるうま味が魅力。
ほんのり甘みがあり、後味もすっきり。素材の味を引き立てたいときにおすすめです。

昆布に含まれているうま味成分「グルタミン酸」は、ほかのだし素材との相性がいいので、合わせだしにも広く使われます。

  • 香り:★★☆☆☆
  • コク:★★★☆☆
  • 透明感:◎
  • 向いている料理:湯豆腐、おでん、野菜の炊き合わせ、白だしベースの料理

ワンポイント
水にじっくりつけて「水出し」することで、えぐみのないまろやかな味に仕上がります。

煮干し(いりこ)だしは、どこか懐かしさを感じる力強い味わい。
魚の骨や内臓も使われているため、コク深く濃厚なのが特徴です。

  • 香り:★★★☆☆
  • コク:★★★★☆
  • 透明感:△(少し濁りあり)
  • 向いている料理:味噌汁、うどん、和風ラーメン

ワンポイント
頭と腹わたを取り除くと、雑味がなくクリアな味わいに。
濃い味噌との相性も抜群ですよ。

植物性素材の中でも、うま味が非常に強いのが干ししいたけ。
ベジタリアンや精進料理でも活躍します。

  • 香り:★★★☆☆(きのこ特有)
  • コク:★★★☆☆
  • 透明感:△
  • 向いている料理:炊き込みごはん、鍋もの、茶碗蒸し

ワンポイント♪
しいたけの軸も一緒に入れてOK。戻し汁ごと使えば、無駄なく風味が活かせます。

いわし節

さば節、いわし節は、かつお節に比べて脂分が多く、味がしっかりしています。
コクや旨味が欲しいときの「裏方」としてとても優秀です。

  • 香り:★★★★☆
  • コク:★★★★★
  • 透明感:△(少し濁る)
  • 向いている料理:そばつゆ、濃い味の煮物、炊き込みごはん

ワンポイント♪
少量でもインパクトある味に。かつお節や昆布との“合わせだし”にすることで、バランスよくまとまります。

6.あごだし|上品で香ばしい、澄んだ味わい

あご(飛び魚)を焼いてから乾燥させただしは、香ばしさとすっきりしたうま味が特徴。
くせがなく澄んだ味わいで、上品な椀ものや和え物など、素材の持ち味を生かしたい料理におすすめです。

  • 香り:★★★★☆
  • コク:★★★☆☆
  • 透明感:◎(すっきり澄んだ仕上がり)
  • 向いている料理:すまし汁、茶碗蒸し、おでん、炊き込みごはん

ワンポイント♪
焼きあごの丸ごとタイプは風味が豊か。時間がないときはティーバッグや粉末タイプも便利です。濃い味にせず、素材の香りと調和させるのがポイント。

昆布+かつお節、煮干し+しいたけ…
複数のだしを組み合わせることで、味に奥行きとバランスが生まれます。

  • 香り:★★★〜★★★★
  • コク:★★★〜★★★★★
  • 透明感:◎(素材による)
  • 向いている料理:鍋もの、味噌汁、煮物全般、おせち

ワンポイント♪
うま味成分は“掛け合わせ”で相乗効果を発揮します。昆布+かつおの王道コンビは、科学的にもベストバランスです!

素材ごとの味くらべチャート

だし素材ごとの特徴を、透明感・コク・香りの観点から簡単に比較できるチャートにまとめました。お料理に合うだしを選ぶヒントとして、ぜひご活用ください。

素材うま味コク香り透明感
昆布だし★★★☆★★☆☆☆★★☆☆☆
(やさしい)
★★★★★(すっきり)
かつお節だし★★★★★★★☆☆★★★★☆
(華やか)
★★★★☆
(澄んだ)
煮干しだし★★★☆★★★★☆★★★☆☆
(個性あり)
★★☆☆☆
(少し濁り)
干し椎茸だし★★★★☆★★★★★★★★★★
(濃厚)
★★☆☆☆
(やや濃い)
さば節・いわし節だし★★★★★★★★★★★★★★★
(力強い)
★☆☆☆☆
(濃いめ)
あごだし(飛び魚)★★★★☆★★★☆☆★★★★☆
(香ばしい)
★★★★★
(すっきり澄む)

※味の感じ方には個人差があります。お好みに合わせて、お試しください。

📌活用ヒント
・透明感がほしい → 昆布・かつお
・コクが欲しい → さば・いわし、煮干し
・香り重視 → 干ししいたけ、かつお
など…


【合わせだし】だし素材の“いいとこどり” 組み合わせて広がる味わい

ひとつの素材でもおいしいだしはとれますが、いくつかを組み合わせることで、さらに奥深い風味が生まれます。

味のバランスや、料理に合わせた「自分好みのだし」を見つける楽しさも、和だしの魅力のひとつです。

和食の基本ともいえる、いわゆる「一番だし」です。
昆布のまろやかなうま味とかつお節の香りが合わさることで、すっきりと上品な味に仕上がります。
お吸いものや茶碗蒸しなど、素材の味を生かした料理にぴったりです。

動物性の食材を使わない組み合わせで、精進料理にもよく使われます。
干し椎茸の香りとコク、昆布のうま味が合わさり、やさしくも奥深い味わいに
野菜たっぷりの煮物や、炊き込みごはんにおすすめです。

力強く、しっかりとした味のだしが欲しいときにおすすめ。
さば節のコクと煮干しのうま味に、昆布のまろやかさが加わることで、どっしりとした味わいになります。
郷土料理や家庭の煮物にぴったりで、味がしっかり決まります。

そばやラーメンのつゆなど、風味にパンチをきかせたいときに重宝する組み合わせ。
かつお節の香り、さば節のコク、昆布のうま味が三位一体となり、食欲をそそる力強いだしがとれます。
しょうゆの風味とよく合い、つけ汁や濃いめの味つけにもよく合います。


料理に合う「だし」がひと目でわかる!おすすめ相性表

「どの料理に、どのだしを使えばいい?」
そんなお悩みにこたえる、基本の相性表です。だしの特徴と料理の相性を知れば、いつもの一品がぐっと本格的になります。

料理ジャンル合うだしの種類
お吸い物かつお節、昆布、あごだし
味噌汁煮干し、合わせ
炊き込みごはん干ししいたけ、さば・いわし、あごだし
鍋もの合わせ、干ししいたけ、あごだし
そば・うどんつゆさば節、かつお節、あごだし、昆布
煮ものかつお節、昆布、干ししいたけ
茶碗蒸しかつお節、昆布、あごだし
おでん昆布、さば・いわし、あごだし

【ミニコラム】だしのはじまり、うま味の発見

日本で「だし」が本格的に用いられるようになったのは、室町時代以降といわれています。特に精進料理の中で昆布や干ししいたけが使われるようになり、動物性のだしが禁じられた背景も相まって、植物性の「うま味」を引き出す工夫が発展していきました。

そして明治時代、化学者・池田菊苗博士によって「グルタミン酸=うま味成分」が昆布から発見されたことで、「うま味」は甘味・塩味・酸味・苦味に続く第5の味覚として世界でも注目されるようになったのです。


現在、和食はユネスコ無形文化遺産に登録され、その中心にある「だし文化」もまた、世界中の料理人たちの関心を集めています。

私たちが日ごろ使うだしは、そんな長い歴史と知恵の積み重ねから生まれた、世界に誇るべき日本の食文化ですね!

まとめ|だしの味を知れば、料理はもっと楽しくなる

だしの世界は、とっても奥深い。でも、決して難しく考える必要はないと思っています。
料理をしていて「ちょっと味が物足りないな」と感じたときに、もう少しだしを効かせてみたり、いつもと違う素材のだしを選んでみたり…

料理に正解はありません。

香りが好き、コクが好き、すっきりした味が好き…
そんな「自分の好み」を知るためにも、ぜひ素材別のだしを試してみてください。

もちろん、忙しいときや、疲れているときは「だしパック」や「顆粒だし」を頼るのも◎。無理をせず、ゆっくり楽しみながら日々のお料理を楽しんでくださいね。

\和だしシリーズ一覧はこちら/

【和だし帖|うま味と季節をたのしむ台所便り】
(以下の日程で投稿予定です)

第1回:はじめての「だし」入門
第2回:だしの味くらべ 〜素材別で変わる香りとコク〜(この記事です)
第3回:四季のだしごはん 〜春夏秋冬で味わう、だしの魅力〜8/11)
第4回:だしの保存と活用術 〜作り置き・冷凍・再利用〜(8/18)
第5回:だしと和のこころ 〜味覚を育む、だし文化の魅力〜(8/25)