さしすせそ歳時記|季節の食材と和の調味料で楽しむ、四季の台所

日本の台所には、昔から受け継がれてきた「さしすせそ」の知恵があります。
砂糖(さ)・塩(し)・酢(す)・醤油(せ)・味噌(そ)
それぞれの調味料は、旬の食材を引き立て、季節の食卓を豊かに彩ってくれます。
このシリーズでは、旬の恵みと和の調味料を組み合わせた、季節感あふれるレシピをご紹介します。

秋冬にぴったりの、ちょっと風情ある一品──「きぬかつぎ」。

里芋の小芋を皮ごと蒸して、素材の甘みをそのまま味わうシンプルな和の料理。
塩や味噌、柚子胡椒など、お好みの調味で変化をつけて食べるのも楽しみのひとつです♪

本来ならば小さな「小芋」を使う料理なのですが、地域によっては「小芋」の入手がなかなか困難・・・。

そこで!今回は、一般的に売られている小さめの里芋を使って、完全に見た目重視!おもてなしにピッタリなきぬかつぎを作っていきたいと思います。

セイロを使ってホクホクに…寒い季節にほっこり嬉しい田楽味噌を添えて召し上がってください♪


レシピ|小さめ里芋で作る【きぬかつぎ】

  • 里芋(小さめ) … 5〜6個
  • 田楽味噌(作りやすい分量)
      ・合わせ味噌 … 50g
      ・砂糖 … 30g
      ・酒 … 小さじ2
  • 白いりごま … 適量
STEP1
田楽味噌を作る

鍋に合わせ味噌・砂糖・酒を入れて弱火にかける。
混ぜながらフツフツと1~2分、好みの硬さになるまで煮る。(冷めると硬くなるのでゆるめでOK)

STEP2
里芋を洗う

土付きの里芋なら、たわしでしっかり汚れや毛羽を落とす。乾かしておくと◎。

STEP3
形を整える/切り込みを入れる

– 底面を少し切り落とし安定させる

– 上部は丸くなるように皮ごとカットして、なるべく形を整える。(小芋なら不要)
– 里芋の高さの2/3くらいのところで、ぐるりと一周皮に切り込みを入れる。

STEP4
蒸す

蒸し器またはセイロで約20分(中火)蒸す。竹串がスッと通れば蒸し上がり。

STEP5
皮をむく

熱いうちに、切り込みを入れた上部の皮をむく。

STEP6
盛り付け・仕上げ

器に並べ、田楽味噌と白ごまをのせて出来上がり!


ミニコラム|「きぬかつぎ」という名前の由来

「きぬかつぎ」は、蒸した里芋の小芋を、上の皮だけをちょっとむいて食べる料理。
その見た目が、平安時代の姫君がかぶった「衣被(きぬかづき)」という布のかぶり物に似ていることから、この名前がついたといわれています。

姫が薄衣をまとって顔を隠すような姿を、小さな里芋に重ねたもの。
素朴な料理ながら、平安の雅やかさを感じさせる、なんとも風情のあるネーミングですね。

  • 小芋が手に入れば、上部を丸く切る工程は省いて、切り込みだけで仕上げても十分きれいに仕上がります。
  • 皮のまま出す料理なので、洗い残しがないよう特に注意を。土や毛羽をしっかり落としましょう。
  • 田楽味噌は冷めると硬くなるので、緩めの仕上がりで◎。作りやすい分量にしてありますので、こんにゃく、豆腐、焼きおにぎりなどにお使いいただけます。

ミニコラム|里芋の小芋とは?

里芋は、親芋のまわりに子芋・孫芋がつく「親子だんらん型」の根菜。
その中でも、直径3~4㎝程度の丸い小芋は皮が薄く、ねっとりした食感と自然な甘みが魅力です。

昔から「子孫繁栄」を連想させることから、お祝いの席やおせち料理にも用いられてきました。小芋を丸ごと蒸した「きぬかつぎ」は、まさにその縁起をいただく料理でもあります。

そんな小芋を見つけたら迷わずゲット!洗って切込みを入れて蒸すだけで可愛い「きぬかつぎ」が出来上がります♪

おわりに|里芋のほっこりを味わう

きぬかつぎは、ただ蒸した里芋を食べる素朴な料理。

そんな素朴さとは裏腹に、その佇まいには平安の雅を映す「衣被」の風情や、里芋の子芋に込められた「子孫繁栄」の願いが息づいているんですね~^^

こんなエピソードも会話に添えて、秋の夜長にほっこり温かい里芋の甘みを楽しんでいただけたら嬉しいです♪

参考文献

  • 農林水産省「野菜の知識:里芋」
  • 日本国語大辞典(小学館)「衣被(きぬかづき)」項目

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