寒くなる季節になると、かぶの優しい味わいが恋しくなりますよね。

お味噌汁や煮物に入れると、口の中でとろけるようにやわらかく、じんわりと温かさが広がります。素朴なのに滋味深く、どこか懐かしい味がする野菜です。

昔から「蕪(かぶ)」は縁起のよい野菜として、お祝いの膳や冬の行事食にも登場してきました。
今日は、そんな日本の冬をやさしく彩る“かぶ”の魅力をたっぷりご紹介します。


蕪(かぶ)とは…

かぶは、アブラナ科アブラナ属の根菜で、古くから日本の食卓に親しまれてきた野菜です。

見た目は丸く白い根の部分が印象的ですが、実は根だけでなく、葉や茎もおいしく食べられるのが特徴。やわらかな食感と甘みがあり、煮ても焼いても、生でも楽しめます。

日本にはとても古い時代に伝わったとされ、『日本書紀』にもその名が登場するほどの歴史を持ちます。もともとはヨーロッパから伝わり、奈良時代にはすでに栽培されていたといわれています。

また、全国各地で土地の気候や風土に合わせた品種が生まれ、形も大きさもさまざま。京都の「聖護院かぶ」や、東京近郊の「金町小かぶ」など、地域ごとの個性豊かな“かぶ文化”が育まれています。

🍵ミニコラム|名前の由来

「かぶ」という名前は、「株(かぶ)」=根元がしっかりしているという意味に由来するといわれています。
この言葉は「株を上げる」「株が上がる」など、縁起のよい表現にもつながり、昔からお祝いの席でも親しまれてきました。


かぶの旬と産地

かぶのいちばんおいしい季節は、晩秋から冬にかけて
寒さにあたることで甘みが増し、やわらかな肉質の中に、ほんのりとした旨みが感じられます。

特に霜が降りるころのかぶは、まるで自然がくれた“冬の甘味”のよう。煮物やすり流しにすると、とろけるような口あたりになります。

春先にも出回る「春かぶ」もありますが、こちらはみずみずしく、サラダや浅漬けにぴったり。
季節によって味わいが変わるのも、かぶの魅力のひとつです。

かぶは全国各地で広く栽培されていますが、地域ごとに品種と食べ方に個性があります。

  • 関東地方 … 東京近郊の「金町小かぶ」が代表的。小ぶりでやわらかく、浅漬けや煮物に。
  • 関西地方 … 京都の「聖護院かぶ」は丸く大きく、煮崩れしにくいため、京料理に欠かせない存在。
  • 中部地方 … 長野県や愛知県でも多く栽培され、寒冷地の澄んだ空気の中で育つかぶは甘みが強いのが特徴。
  • 東北地方 … 赤かぶが有名で、山形の「温海かぶ」や秋田の「十文字かぶ」など、漬物文化が息づいています。

全国の市場に出回る一般的な白かぶは、主に関東・関西・中部が中心ですが、地方ごとに異なる品種や味わいが楽しめるのが、かぶという野菜の奥深さです。


かぶの種類と特徴

ひと口に「かぶ」といっても、形や大きさ、味わいは実にさまざまです。
全国には100を超える品種があり、土地の気候や食文化に合わせて姿を変えてきた在来の野菜も多く存在します。ここでは代表的な種類を紹介しますね。

直径5〜6cmほどの小ぶりなかぶで、全国的に最も流通しているタイプです。
やわらかくて甘みがあり、皮ごと食べられるほど繊細。浅漬けやサラダ、お味噌汁などに向きます。
代表品種には「金町小かぶ」「みやま小かぶ」などがあります。

🥢おすすめの食べ方: 生のままスライスして塩もみ、または軽くゆでてだし浸しに。

中かぶ

直径10cm前後のかぶで、煮物やすり流しなど火を通す料理に向くタイプです。
加熱しても形が崩れにくく、口にふくむとほろっとほどける食感。
地方によって「中野かぶ」「大野かぶ」などさまざまな名前で呼ばれています。

🥢おすすめの食べ方: 薄味の煮物や、白みそ仕立ての汁物に。

聖護院かぶ

京都を代表する伝統野菜。直径20cmを超える大きさながら、繊維が細かく煮崩れしにくいのが特徴です。
冬の京料理では「千枚漬け」や「蕪蒸し」に欠かせない存在。包丁を入れると、すっと刃が通るやわらかさと上品な甘みがあります。

🥢おすすめの食べ方: 千枚漬け、風呂吹きかぶ、蕪蒸しなど。

温海かぶの甘酢漬け

皮が赤く、中が白い色鮮やかなかぶ。東北・中部地方を中心に栽培され、漬物用として親しまれています。
山形の「温海(あつみ)かぶ」や長野の「日野菜かぶ」などが有名で、酢漬けにすると紅色がより美しく発色します。
見た目にも華やかで、お正月料理や行事食にもぴったりです。

🥢おすすめの食べ方: 甘酢漬け、浅漬け、紅白なます風。


かぶの栄養と効能

見た目は控えめでも、かぶには体を整えるやさしい栄養がたっぷり
実(根)と葉では含まれる成分が異なり、どちらも上手に取り入れることで、冬のからだを健やかに保つことができます。

かぶの白い部分には、消化を助ける酵素「ジアスターゼ(アミラーゼ)」が多く含まれています。
この酵素は、でんぷんを分解して消化を促す働きがあり、胃もたれや食欲不振の改善に効果的とされています。

また、水分が多く低カロリーで、体を内側から温める作用も。
風邪をひきやすい季節には、お味噌汁や煮物にして消化にやさしく取り入れたい食材です。

かぶの葉は、ビタミンC・βカロテン・カルシウム・鉄分などを豊富に含む“緑黄色野菜”。
中でもビタミンCは根の約5倍ともいわれ、免疫力を高め、風邪予防にも役立ちます。
鉄分やカルシウムも多く、女性や成長期の子どもにもおすすめ。
炒め物やおひたしにすれば、無駄なく栄養を摂ることができます。

  • 胃腸が疲れているとき
  • 風邪のひきはじめに
  • 冷えを感じる冬の食卓に

やさしい甘みが、体を内側からじんわりと癒してくれます。
古くから「蕪湯(かぶゆ)」として風邪の民間療法にも使われてきたほど、冬の養生にぴったりの野菜です。


下処理と調理のポイント

やわらかく火が通るかぶは、調理がしやすい一方で、少しの扱い方で仕上がりがぐんと変わります。
ここでは、日々の料理で役立つ下処理と調理のコツをまとめました。

小かぶは皮が薄くやわらかいので、基本的に皮は剥かずに調理できます。そのまま煮ても、軽く焼いても口あたりなめらかです。

一方で中かぶ・大かぶは、外側に筋があるため、料理によっては筋の部分まで皮を厚めにむく必要があります。
特に煮物にするときは、皮をむくことで味が染みやすくなります。

葉つきのかぶを買ったら、まず根と葉を切り分けて保存するのがポイント。
そのままにしておくと、葉が根の水分を吸ってしまい、根がしなびやすくなります。

葉はさっと塩ゆでして水にとり、水気をしぼってから冷蔵または冷凍保存すれば数日間もちます。
細かく刻んでおひたしや炒め物にすれば、ビタミンやカルシウムも無駄なく摂れます。

やわらかいかぶは煮すぎるとすぐに崩れてしまいます。
下ゆではせず、だしに直接入れて中火で静かに煮るのが基本。
加熱時間は10分前後が目安で、竹串がすっと通るくらいがベストです。

また、味をしっかり含ませたいときは、いったん火を止めて「冷ましながら味をしみ込ませる」と、煮崩れせず上品に仕上がります。

かぶはクセが少なく、だしや油の香りを受け止めやすい野菜です。
白だし・みそ・柚子など、やさしい香りを重ねる料理にぴったり。
肉類では鶏肉や豚肉、魚では鯛やぶりなど、淡泊なうま味の素材とよく合います。


おすすめレシピ

やわらかく煮えたかぶに、だしの旨みがじんわり。
寒い季節の食卓にぴったりの、やさしい定番おかずです。

レシピ|かぶの煮物

材料(2〜3人分)
かぶ(中サイズ)…3個
だし汁…200ml
みりん…大さじ1
うす口しょうゆ…小さじ2
塩…少々

作り方

  • かぶは葉を切り分け、皮を薄くむいて(筋が硬い場合は厚く剥く)くし形に切る。
  • 鍋にだし汁・みりん・しょうゆ・塩を入れて火にかけ、かぶを加えて中火で10分ほど煮る。
  • 葉を加えて1〜2分煮て、火を止めてそのまま味を含ませる。

ポイント
煮立てすぎず、静かに煮ることで形がきれいに仕上がります。

やわらかく煮たかぶに、鶏そぼろのあんをとろりとかけて。
見た目にも上品で、行事食やおもてなしの小鉢にもぴったりです。

レシピ|かぶのそぼろあんかけ

材料(2〜3人分)
かぶ(中サイズ)…3個
鶏ひき肉…100g
だし汁…200ml
しょうゆ…小さじ2
みりん…大さじ1
片栗粉…小さじ1(水小さじ2で溶く)

作り方

  • かぶは皮をむき、4〜6等分に切る。鍋にだし汁を入れてやわらかくなるまで煮る。
  • 別の鍋で鶏ひき肉を炒め、しょうゆ・みりん・少量のだし汁を加えて煮る。
  • 火を弱め、水溶き片栗粉でとろみをつける。
  • 煮たかぶを器に盛り、そぼろあんをかける。

ポイント
あんをやや濃いめにすると、淡白なかぶの甘みが引き立ちます。
おろししょうがを添えると冬らしい風味に。

みずみずしいかぶの甘みをいかした、さっぱり味の常備菜。
食卓の箸休めや、お弁当の彩りにもぴったりです。

レシピ|かぶの浅漬け

材料(2〜3人分)
かぶ(小〜中サイズ)…2個
塩…小さじ1/2
昆布(細切り)…少々
赤唐辛子(輪切り)…少々

作り方

  • かぶは葉を切り分け、皮つきのまま薄切りにする。
  • ボウルに入れ、塩をふって軽くもみ、10分ほどおく。
  • 水気をしぼり、昆布・赤唐辛子を加えて混ぜる。
  • 冷蔵庫で30分ほどなじませると食べごろ。

ポイント
葉を少し加えると彩りがよく、風味も引き立ちます。

かぶの葉は、ビタミンたっぷりの栄養源。
ごはんのお供やお弁当の彩りにぴったりな、簡単常備菜です。

レシピ|かぶの葉炒め

材料(2〜3人分)
かぶの葉…2株分
しょうゆ…小さじ1
かつお節…少々
ごま油…小さじ1

作り方

  • かぶの葉は3cmほどに刻み、水気をしっかり切る。
  • フライパンにごま油を熱し、葉を炒める。
  • しんなりしたらしょうゆを加え、全体に味をなじませる。
  • 火を止めてかつお節を加え、さっと混ぜる。

ポイント
白ごはんにのせたり、おにぎりの具にもおすすめです。

やわらかな甘みととろみが心地よい、冬のやさしい汁もの。
冷えた体を内側からあたためてくれます。

レシピ|かぶのすり流し汁

材料(2人分)
かぶ…2個
だし汁…300ml
白みそ…大さじ1
塩…少々

作り方

  • かぶは皮をむいて薄切りにし、やわらかくなるまでゆでる。
  • ゆでたかぶを少量のだし汁とともにミキサーにかけ、なめらかにする。
  • 鍋に戻して残りのだし汁・白みそ・塩を加え、弱火で温める。
  • 器に盛り、好みでゆずの皮を添える。

ポイント
すりおろしてから煮てもOK。白みそを加えると、上品なコクが出ます。

京都の冬を代表する味。大きな聖護院かぶを薄く重ね、甘酢に漬け込む上品な漬物です。
口に入れるとやわらかく、ほのかな甘みと酸味が広がります。

レシピ|聖護院かぶの千枚漬け

材料(作りやすい分量)
聖護院かぶ…1個(約1kg)
塩…20g(かぶの重さの約2%)
甘酢(酢100ml・砂糖40g・みりん小さじ1・塩少々)
昆布(5cm角)…1枚
赤唐辛子(輪切り)…少々

作り方

  • かぶは皮を厚め(1〜2mmほど)にむき、薄い輪切りにする。
  • 塩をふって重しをし、2〜3時間おいて水気をしぼる。
  • 鍋で甘酢の材料を軽く温めて冷ます。
  • 保存容器にかぶ・昆布・赤唐辛子を重ね入れ、甘酢を注ぐ。
  • 冷蔵庫で半日〜1日おいて味をなじませる。

ポイント
皮をしっかりむくことで、なめらかな口あたりに仕上がります。
翌日以降が食べごろです。


保存方法

かぶは水分が多く、乾燥しやすい野菜です。
上手に保存するには、「根と葉を分ける」ことが第一のポイント。それぞれの部分に合った方法で保存すると、鮮度と甘みが長持ちします。

購入後はすぐに根と葉を切り分けます。
そのままにしておくと、葉が根の水分を吸ってしなびてしまうためです。

  • 「根の部分」は新聞紙で包み、ポリ袋に入れて野菜室で4〜5日が目安。
  • 「葉の部分」はさっと塩ゆでして水気を切り、冷蔵で2〜3日保存可能です。

長く保存したいときは、加熱してから冷凍がおすすめです。

  • 根は皮をむいて食べやすく切り、軽く下ゆでして冷まし、小分けにして冷凍。
  • 葉はゆでて水気を絞り、ざく切りにしてラップで包んで冷凍。

どちらも1か月程度を目安に使い切りましょう。
汁物や煮物に凍ったまま加えれば、味もなじみやすく便利です。

冬場であれば、室温が低い場所に立てて保存することも可能です。
新聞紙に包み、風通しのよい冷暗所に置けば、2〜3日程度はみずみずしさを保てます。
ただし暖房の効いた室内では傷みやすいため注意を。


ミニコラム|蕪(かぶ)と株(かぶ)—縁起のよい言葉遊び

「蕪(かぶ)」という名前は、古くから「株(かぶ)」=しっかり根を張るという意味に通じる言葉として親しまれてきました。
この“株”には、「株を上げる」「株が上がる」という表現もあり、運気上昇や出世の象徴とされています。

お正月料理や祝い膳にかぶが登場するのは、そんな言葉の縁起の良さにも理由があります。
また、白くてまるい形には「円満」「清らかさ」を、根と葉がひとつながりになっている姿には「家族の結びつき」や「長寿」の願いが込められているとも。

淡い甘みの中に、そんなおめでたい意味が宿っていると思うと、かぶを使う料理が一層ありがたく感じられますね。


おわりに|やわらかな甘みを冬の食卓に

寒さが深まるほどに、かぶはやわらかく、そして甘くなります。
煮ても、焼いても、生でも、そのやさしい味わいが食卓をほっと温めてくれる――そんな冬の野菜です。

素材そのものの甘みが、どんな料理とも自然になじみます。ときには葉まで使って一品にすれば、季節の恵みを丸ごといただく気持ちになりますね。

日々のごはんに、そしてお祝いの席にも。
やさしい甘みと縁起の良さをあわせ持つかぶは、まさに冬の和ごころを映す野菜です。

参考元

  • 農林水産省「野菜ナビ|かぶ」
  • JA全農「旬を味わう|かぶ」
  • 京都市農業協同組合「京の伝統野菜 聖護院かぶ」
  • 山形県鶴岡市観光連盟「温海かぶ漬け」紹介ページ

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