~和ごころ素材図鑑~
このシリーズでは、季節ごとの食材をていねいに紹介しています。
野菜や魚、乾物やお肉など、和食に寄り添う素材たちの魅力を知って、台所でのひとときをもっと楽しく。

夏の台所には、日差しをたっぷり浴びた緑の野菜がたくさん並びますね♪
今回の「つるむらさき」も、暑い時季の体をそっと労わってくれる野菜です。

茹でると鮮やかな緑と独特なぬめりが出るのが特徴。
和食では、このぬめりや独特な香りを活かして、おひたし、和え物、汁物と、幅広く活躍します。

今回は、つるむらさきの特徴や栄養、下処理の方法や調理法、そして、簡単にできるおすすめ定番レシピ5選をご紹介します。

暑い夏を美味しく過ごすヒントが見つかりますように♪


つるむらさきとは?

つるむらさき(蔓紫)は、東南アジア原産のツル性の葉野菜です。

日本には江戸時代に伝わったといわれ、夏の高温多湿にも負けず、むしろその環境を好む珍しい青菜です。

葉は肉厚で軽く茹でると深い緑色に。茎は赤紫色や緑色のものがあり、色合いも涼やかです。

香りはやや土っぽく、茹でたときに出る独特のぬめりが特徴です。
この「ぬめり」は、モロヘイヤやオクラにも含まれる水溶性食物繊維で、夏場の胃腸にもやさしい成分です。

つるむらさきの旬はいつ?

つるむらさきは、夏の盛りにこそ真価を発揮する野菜です。

出回り始めるのは初夏の6月頃から。そして本当に味わいが深まるのは、太陽の力がいちばん強まる7月〜8月です。

《ミニコラム》夏の恵み…体を整える旬の緑

和食の世界では、旬の食材は「その時期に体が求めるもの」として尊ばれます。

暑い夏に体から失われやすいミネラルビタミンを、つるむらさきはたっぷりと含んでいます。これは、自然がくれた理にかなった恵み。冷房で冷えた体や、胃にもやさしく、夏バテ気味の疲れた体の強い味方です。

つるむらさきの栄養価と効能

つるむらさきは、夏に不足しがちな栄養をしっかり補ってくれる優秀な野菜です。

  • βカロテン … 抗酸化作用があり、皮膚や粘膜の健康維持に。
  • ビタミンC … 疲労回復や免疫力アップに。
  • カルシウム・鉄分 … 骨や血液の健康をサポート。
  • 水溶性食物繊維(ぬめり成分) … 胃腸の調子を整え、便通改善にも。

特に、βカロテンは油と一緒に摂ると吸収率が高まるため、ごま油やオリーブオイルを使った料理がおすすめです。

つるむらさきの産地って?

つるむらさきは全国各地で栽培されていますが、特に有名なのは熊本県・沖縄県・高知県などがあげられます。

全国各地、夏場の直売所や道の駅、スーパーの農産物コーナーなどでも、地元の農家さんが朝採りの束を並べています。

朝採れのものは葉がしっかり立ち、茎の切り口がみずみずしい!これを見つけたら、迷わず手に入れてほしいです。

つるむらさきの下処理と調理のコツ

つるむらさきの下処理のポイントはズバリ!
「茹で時間」です。
より美味しく、なおかつ栄養を逃がさない、適切な下処理をしたいものですね。

  1. 葉と茎を分ける(茎のほうが火が通りにくい)
  2. 鍋にたっぷり湯を沸かし、塩ひとつまみを加える
  3. 先に茎を30秒ほど茹で、その後葉を加えてさらに20〜30秒
  4. すぐに氷水に落とし、色止めする
  5. 水気をしっかり絞る

ワンポイント

忙しいときには…
葉と茎を分けるのがベストな方法ですが、忙しい合間での調理ならそのままでも◎。
茹でる際は、先に茎側1/3~1/2くらいを湯に沈めて茹で、その後全体を湯に沈めてください。

茹ですぎるとぬめりが抜けて食感が損なわれますので、短時間でシャキッと火を通すのがポイントです。


”つるむらさき”を味わう定番レシピ5選

やさしくだしを効かせたお浸しは、つるむらさきの風味をもっとも感じられるシンプルな食べ方です。

茹でたつるむらさきに、かつお節かけてお醤油をチョロリ…これも◎。

つるむらさきのおひたしの作り方

  • 材料(2人分)
    つるむらさき…1束
    だし…50ml
    薄口しょうゆ…小さじ2
  • 作り方
    1. 下処理したつるむらさきを食べやすく切る
    2. だしと薄口しょうゆを合わせ、かける
    3. 鰹節を添えて

香ばしい胡麻が、つるむらさきの独特な風味ととてもマッチします。

”つるむらさきのごま和え”の作り方

  • 材料(2人分)
    つるむらさき…1束
    すりごま(白)…大さじ2
    しょうゆ…小さじ2
    砂糖…小さじ1
  • 作り方
    1. 下処理後、食べやすく切る
    2. 調味料と和える

コクのある味噌汁との相性も◎!

”つるむらさきと油揚げの味噌汁”の作り方

  • 材料(2人分)
    つるむらさき…1/2束
    油揚げ…1枚
    だし…400ml
    味噌…大さじ2
  • 作り方
    1. 油揚げは短冊切り
    2. だしで油揚げを煮る
    3. 下処理したつるむらさきを加え、味噌を溶く

さっぱりポン酢とおかかで、箸が進む爽やかなおかず。

”つるむらさきのポン酢おかか和え”の作り方

  • 材料(2人分)
    つるむらさき…1束
    ポン酢…大さじ1
    かつお節…適量
  • 作り方
    1、つるむらさきをさっとゆでて水けをしぼる。
    2、ポン酢とおかかで和える。

ピリッとした辛みが後を引く、大人の味。

”つるむらさきのからし和え”の作り方

  • 材料(2人分)
    つるむらさき…1束
    しょうゆ…小さじ2
    練りからし…小さじ1/2
  • 作り方
    1、つるむらさきをゆでて水けをしぼる。
    2、しょうゆとからしを混ぜ、和える。

適切な保存方法

つるむらさきは鮮度が命。買ったらなるべく早く使い切るのがおすすめですが、保存する場合は以下の方法が有効です。

  • 冷蔵:濡らしたキッチンペーパーで包み、ポリ袋に入れて野菜室で2〜3日。
  • 冷凍:固めに下茹でして冷水に取り、水気を絞って小分け冷凍(約1ヶ月保存可)。
  • 加工:茹でてからおひたし用にだしと一緒に冷蔵保存も可

栄養を生かす組み合わせ:簡単アレンジ

和食では「食材同士の相性」を大切にしますが、それは味覚だけの話ではありません。

調理方法によって、栄養吸収アップが期待できるので、ぜひ参考にしてみてください。

  • (ごま油・オリーブオイルと和える):βカロテン吸収UP
  • 酸味(酢・レモン汁でさっぱり仕上げる):鉄分吸収UP
  • 発酵食品(味噌・納豆と一緒に):腸内環境サポート
  • (一緒に炒める):βカロテンの吸収up

おわりに

つるむらさきは、夏の食卓に涼やかな彩りと滋味をもたらす野菜です。

少し独特の香りも、上手に火を通し、和の調味料と合わせれば、旬のごちそうに変わります。

まさに季節を感じる一皿♪
暑さをやわらげながら、体と心を満たしてくださいね。


参考文献
・『日本の食材事典』
・農林水産省 野菜の栄養情報
・熊本県農業協同組合 直売所情報


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