~和ごころ素材図鑑~
季節の移ろいとともに、旬を迎える日本の食材たち。
そのひとつひとつには、自然の恵みと、昔から受け継がれてきた知恵が息づいています。
「和ごころ素材図鑑」では、そんな和の素材を、旬・産地・調理法・行事との関わりなど、暮らしに寄り添う目線でご紹介します。
夏から秋にかけて出回る、ちょっと珍しい野菜「金時草(きんじそう)」。
葉の表は深い緑色、裏は鮮やかな紫色をしていて、茹でると赤紫の汁が出てくるユニークな姿が特徴です。
地域によって呼び名もさまざまで、昔から暮らしに寄り添ってきた伝統野菜のひとつでもあります。
今日は、そんな金時草の魅力をまるごとご紹介します。
金時草(きんじそう)とは?

金時草は、石川県金沢市の「加賀野菜」の一つとしても広く知られる、日本の伝統野菜です。
最大の特徴は、なんといってもその美しい色彩。表は深い緑色、葉の裏側は鮮やかな赤紫色という、とても神秘的なコントラストを持っています。
茹でるとモロヘイヤのような「ほんのりとした独特のぬめり」が出てきますが、野菜特有の青臭さやクセはほとんどありません。
和食の食卓に、手軽にパッと美しい季節の彩りを添えてくれる心強い食材です。
地域で変わる「呼び名」と豊かなストーリー
実は、この金時草には土地ごとに異なるたくさんの粋な「呼び名」があります。
同じ野菜でありながら、日本各地の豊かな風土や暮らしの中で、それぞれ大切に親しまれてきた証拠でもありますね。
- 石川県(加賀野菜):金時草(きんじそう)
- 茹でたあとの鮮やかな赤紫色が、金沢で古くから親しまれている高貴な「金時芋(さつまいも)」の色に似ていることから、この名がついたと言われています。
- 熊本県:水前寺菜(すいぜんじな)
- 熊本市の水前寺清流近くで栽培が始まったことからこう呼ばれ、現在でも熊本の伝統野菜(ひご野菜)に指定されています。
- 沖縄県・九州地方:ハンダマ
- 沖縄では古くから「血の薬(不順な血をきれいにする)」と呼ばれ、島野菜として長寿の食卓を支えてきました。
- 愛知県:式部草(しきぶそう)
- 紫色が高貴な平安の女流作家「紫式部」を連想させることから、なんとも風流な名前で親しまれています。

ネーミングからも、和食文化のロマンを感じる伝統野菜ですよね。
金時草の旬はいつ?
金時草の出回る季節は、初夏から秋(6月〜10月頃)。
特に葉がやわらかく、色鮮やかなのは梅雨明けから夏にかけての時期です。
- 6〜7月 … 葉が柔らかくて食べやすい
- 8〜9月 … 紫色が濃く、栄養も豊富に
- 10月頃まで … 直売所や家庭菜園では晩秋まで収穫できることも
石川県の加賀野菜としては夏の代表格で、夏バテ予防の食材としても昔から親しまれてきました。
スーパーではあまり多くは出回らないので、見かけたら旬の味覚としてぜひ手に取ってみてくださいね。
金時草の優れた栄養と効能|夏バテ対策にぴったりの理由

金時草の魅力は、美しい彩りだけではありません。実は、夏の強い日差しや暑さで疲れた体を労る栄養素がぎゅっと詰まっています。
女性や成長期のお子さんにはもちろん、家族みんなで毎日食べたい「天然のサプリメント」のような驚きの効能をご紹介します。
① 紫外線と戦う「アントシアニン」
金時草の最大の特徴である美しい赤紫色の正体は、ポリフェノールの一種である「アントシアニン」です。
強い抗酸化作用を持っており、夏の紫外線によるダメージから体を守る「老化防止(アンチエイジング)」や、スマホやパソコンによる「眼精疲労の軽減」に高い効果が期待できます。
② お腹を優しく整える「ぬめり成分」
刻んだり茹でたりすると出てくる独特の強い粘り気は、水溶性食物繊維などの「ぬめり成分(植物性粘液質)」によるものです。
弱った胃腸の粘膜を保護し、お腹の調子を整える整腸作用があるため、食欲が落ちがちな季節の「夏バテ予防」や、「疲労回復」に力を発揮してくれます。
③ 免疫力を高める「ビタミンA・ビタミンC」
肌の健康維持や、風邪に負けない体づくりに欠かせない「ビタミンA(β-カロテン)」や「ビタミンC」が豊富に含まれています。エアコンによる冷えや、室外との温度差で崩しがちな免疫力をしっかりと底上げしてくれます。
④ 女性やお子さんに欠かせない「鉄分・カルシウム」
金時草には、一般的な野菜に比べて「鉄分」や「カルシウム」が多く含まれているのも大きな特徴です。 汗と一緒に流れ出てしまいがちなミネラルを補給できるため、貧血気味になりやすい女性や、骨を丈夫に育てたい成長期のお子さんの栄養補給にぴったりです。

これだけの栄養が1つの野菜で摂れるからこそ、金時草は古くから「夏の養生野菜」として大切にされてきたんですね。
調理と保存のコツ
金時草はちょっとした扱い方で、彩りや風味をきれいに保てます。保存の仕方を知っておくと、旬の時期にまとめて買ったときも安心です。
調理のコツ

- 茹で時間は短く
20〜30秒ほどで十分。長く茹でると紫色が濁り、ぬめりも出すぎてしまいます。 - 冷水にとる
茹でたらすぐ冷水にさらすことで、色鮮やかに仕上がります。 - 茎と葉は分けて使う
茎は少し硬めなので、葉はおひたしや和え物に、茎は天ぷらや炒め物にすると無駄なく美味しくいただけます。 - 酸味との相性に注意
酢やレモン汁を加えると紫色が抜けやすいので、彩りを楽しみたいときは控えめに。
保存のコツ
- 冷蔵保存
濡らした新聞紙やキッチンペーパーに包み、ポリ袋に入れて冷蔵庫へ。2〜3日で食べきるのがおすすめ。 - 冷凍保存
さっと茹でて水気を絞り、小分けにしてラップ+保存袋で冷凍。約1か月保存可能。解凍は自然解凍か、汁物にそのまま加えてOK。 - 作り置きおかずとして
おひたしや胡麻和えは、冷蔵で2日程度保存できます。味をしみ込ませることで、翌日も美味しくいただけます。
金時草のおすすめレシピ

金時草はシンプルに食べても、少しアレンジを加えても美味しい野菜です。
ここでは、手軽に作れるおすすめレシピを5点ご紹介します。詳しい工程や写真は、個別レシピ記事でチェックしてくださいね。
金時草のおひたし
シンプルに金時草の風味と色合いを楽しめる定番の一品。副菜にぴったりで、作り置きもできます。
金時草と豆腐の白和え
まろやかな豆腐と金時草の風味がよく合い、彩りも美しい一皿。箸休めやおもてなしにもおすすめです。
金時草の胡麻和え
ごまの香ばしさが金時草の爽やかな風味を引き立てる定番レシピ。お弁当のおかずにもぴったりです。
金時草の味噌汁
鮮やかな色合いとぬめりが楽しめる味噌汁。シンプルながら体がほっと温まる一杯です。
金時草の天ぷら(茎も美味しい)
葉はサクッと軽く、硬めの茎も香ばしく仕上がります。塩でシンプルに味わうのがおすすめ。
おわりに|
金時草は、鮮やかな紫色と栄養たっぷりのパワーで、食卓を楽しく彩ってくれる野菜です。
加賀野菜としての歴史や、沖縄での長寿の食文化に触れると、より一層ありがたみを感じられます。
スーパーや直売所で見かけたら、ぜひ手に取って試してみてくださいね。


