~和ごころ素材図鑑~
このシリーズでは、季節ごとの食材をていねいに紹介しています。
野菜や魚、乾物やお肉など、和食に寄り添う素材たちの魅力を知って、台所でのひとときをもっと楽しく。

夏の訪れとともに、野菜売り場に並びはじめる「甘長とうがらし」。

一見すると辛そうに見えるその姿ですが、実は穏やかな辛みと、ほのかな甘みが特徴の夏野菜です♪

炒めものや焼きもの、煮びたしなど、和食との相性も抜群で、夏の食卓に涼やかな彩りを添えてくれます。

この記事では、甘長とうがらしの産地や栄養、調理法、レシピまでを網羅し、その魅力をたっぷりとご紹介します。

甘長とうがらしとは?

甘長とうがらしは、細長く鮮やかな緑色をしたナス科の野菜で、ピーマンやししとうの仲間にあたります。

  • 長さ…10〜15cmほど
  • 皮…やや薄め
  • 味わい…苦みや辛味が少なく、炒めたり焼いたりすることで、ほんのりとした甘さが引き立つ。

一部の実に辛味を感じることがありますが、基本的には辛くない「甘味種」と分類され、辛味成分カプサイシンの含有量が少ないのが特徴です。

家庭でも育てやすく、ベランダ菜園などでも人気の高い野菜のひとつです。

甘長とうがらしは、全国各地で栽培されていますが、特に高知県、京都府、徳島県、長野県などが主な産地として知られています。地域によってブランド化されているものもあります。

  • 京都府:京野菜の「万願寺唐辛子」は、大振りで果肉が厚く甘味が強いのが特徴です。
    また、伏見地区で栽培される「伏見甘長唐辛子(伏見甘)」も有名で、果肉はしっかりとした肉厚。煮物にも適した品種です。
  • 高知県「土佐甘とう(品種名:あまとう美人)」。四万十川源流域の津野山地域。日照時間が長く温暖な気候を活かし、味がのった甘長とうがらしが育ちます。
  • 愛媛県:今治市で「甘とう美人」という品種を栽培されています。大きいので肉詰めなどにも◎
  • 鳥取県:いなば地方の伝統野菜である「三宝甘長トウガラシ」。長さ17~20㎝にもなる大型のトウガラシです。
  • 長野県:冷涼な気候を生かし、標高差のある地域で栽培。みずみずしく爽やかな味わい。
  • 奈良県「ひもとうがらし」は、長さ10㎝、太さ5㎜程度の、細長く皮の柔らかい甘唐辛子の仲間です。「ひもとうがらしとちりめんじゃこの炒めもの」は、夏の惣菜として親しまれている大和の郷土料理です。

甘長とうがらしの旬は、6月から9月にかけての夏季。特に7〜8月は味がよくのって、やわらかく、香りも豊かです。

選び方のポイント

  • ヘタがしっかりしていて、切り口が新鮮なもの
  • 実にツヤとハリがあり、しなびていないもの
  • 色むらが少なく、均一な緑色をしているもの
  • 冷蔵保存:ポリ袋に入れて野菜室で保存。3〜5日ほど。
  • 冷凍保存:ヘタを取って使いやすい大きさに切り、ジッパー袋で保存。炒めものや汁物に便利。1か月ほど。
伏見とうがらし

甘長とうがらしは、とても栄養価の高い野菜です。

【主な栄養素】

  • βカロテン:抗酸化作用があり、肌や粘膜の健康維持に。
  • ビタミンC:免疫力アップや美肌効果に。
  • ビタミンE:血行を促進し、冷えの予防にも。

特に油と一緒に調理することで、脂溶性のβカロテンやビタミンEの吸収率が高まり、効率よく栄養が摂れます。夏バテ予防や体の調子を整える食材としてもおすすめです。

甘長とうがらしは、焼いても炒めても煮てもおいしい万能野菜です。苦みが少ないため、小さなお子さんからお年寄りまで食べやすいのが特徴です。

  • 焼く:香ばしく、素材の甘みが引き立つ。
  • 炒める:油との相性がよく、旨みアップ。
  • 煮る:だしやしょうゆで煮ると、じんわり染みてやさしい味わい。
  • 揚げる:天ぷらや素揚げで食感◎。

答えは―― 食べても大丈夫です

甘長とうがらしの種やワタには、特に有害な成分は含まれておらず、丸ごと調理する人も多いです。むしろ、焼いたときにじんわり広がるうま味や香ばしさは、この部分から出ることも。ちょっとした苦みがアクセントになることもあります。

ただし、まれに辛い実に当たることも
その辛みの多くは、ワタや種のまわりに含まれる「カプサイシン」によるものです。辛味が気になる方や、小さなお子さんと一緒に食べるときは、ワタや種を取り除いてから調理するのもおすすめです。

ご自身の味覚や食べやすさに合わせて、よい食べ方を見つけてみてくださいね♪

忙しい日でもさっと作れて、素材の味がしっかり楽しめる甘長とうがらしの簡単レシピをご紹介します。

こんがり焼いた甘長とうがらしに、かつお節としょうゆをかけるだけのシンプルさが最高!素材の風味をダイレクトに味わえます。

「焼き甘長とうがらし」の作り方

【材料(2人分)】

  • 甘長とうがらし…6〜8本
  • しょうゆ…小さじ2
  • かつお節…ひとつかみ

【作り方】

  1. 甘長とうがらしは洗って水気をふき取る。
  2. グリルまたはフライパンで表面に焼き色がつくまで焼く。
  3. 器に盛り、かつお節をのせ、しょうゆをかけていただく。

カリッと香ばしいちりめんじゃこと一緒に炒めた、ご飯が進むおかずです。お弁当にも♪

「甘長とうがらしとじゃこの炒めもの」の作り方

【材料(2人分)】

  • 甘長とうがらし…6~8本
  • ちりめんじゃこ…大さじ2
  • ごま油…小さじ2
  • しょうゆ…小さじ1
  • みりん…小さじ1

【作り方】

  1. 甘長とうがらしはヘタを取り、斜め切りにする。
  2. フライパンにごま油を熱し、とうがらしとじゃこを炒める。
  3. しょうゆとみりんを加えて仕上げる。

だしの効いた甘辛味で、冷やしても美味しい夏の副菜に。

「甘長とうがらしの甘辛煮」の作り方

だしの効いた甘辛味で、冷やしても美味しい夏の副菜に。

【材料(2人分)】

  • 甘長とうがらし…10本
  • だし…100ml
  • しょうゆ…大さじ1
  • みりん…大さじ1
  • 砂糖…小さじ1

【作り方】

  1. 甘長とうがらしはヘタを取る(種はそのままでもOK)。
  2. 鍋に材料をすべて入れて中火で煮る。
  3. 煮汁が少なくなったら火を止め、冷まして味をなじませる。
  • 焼くときは切らずにそのまま焼くと、香ばしさが際立ちます。
  • 辛味を感じる個体は、ワタや種の部分に集中しているため、苦手な方は取り除いて調理を。
  • 余った甘長とうがらしは刻んで冷凍保存がおすすめ。味噌汁や卵焼きにそのまま使えて便利です。

おわりに|旬の恵みを食卓に

甘長とうがらしは、夏の間だけ楽しめる季節の恵み。クセがなく、栄養豊富で、調理も簡単!夏バテしやすい時期に、食欲をそっと支えてくれる存在です。

シンプルな焼きものから、だしを使ったやさしい煮ものまで、和の調味料との相性も抜群。

ぜひこの夏は、甘長とうがらしを食卓に取り入れて、そのやさしい辛さと自然な甘みを味わってみてください。

甘長とうがらしは、丁寧に焼くだけでごちそうになります!素材のうま味が強い食材だからこそ“シンプル”に食べるのがいちばんのオススメです♪

夏の食卓を彩る、簡単でおいしいレシピをまとめました
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