ころんと丸い里芋を、だしの香りとともに煮含めた「煮っころがし」。
秋から冬にかけて、台所をほっと温かくしてくれる日本の代表的な家庭料理ですね。

ほくほくとした食感と、照りのある見た目。シンプルながら、里芋本来の甘みやだしのうま味を味わえる一品です。

今回は、煮崩れせずにつやよく仕上げるコツと、里芋の下ごしらえのポイントもあわせてご紹介します。


里芋料理の定番「煮っころがし」

豆知識コラム|「煮っころがし」という名前の由来

鍋の中でころころと転がしながら煮ることから「煮っころがし」と呼ばれています。
もとは関西で使われた言葉とされ、里芋に限らず、小じゃがいもなどを同様に煮る料理にも使われます。
シンプルな手順ながら、「煮る」「照りを出す」「味を含ませる」という和食の基本がつまった一品です。

レシピ|里芋の煮っころがし

材料分量
里芋6〜8個(約400g)
だし汁200ml
砂糖小さじ2
みりん大さじ2
濃口しょうゆ大さじ2
サラダ油(またはごま油)少々
STEP1
下ごしらえ
  • 里芋は洗って上下を切り落とし、皮をむく。
  • 塩小さじ1をまぶして軽くもみ、ぬめりを洗い流す。
  • 鍋に湯を沸かし、酢少々(小さじ1)を加えて3分ほど下ゆで。
    → ぬめりが落ち、煮崩れしにくくなる。
  • ザルにあげ、水気をしっかり切る。
STEP2
油をまとわせる

鍋にサラダ油少々を熱し、下ゆでした里芋を加えて転がすように炒める。

STEP3
調味料を加えて煮る

だし汁200ml、砂糖小さじ2、みりん大さじ1を加えて中火に。

5分ほど煮たらしょうゆ大さじ2を加え、落とし蓋をして弱火で10〜12分煮含める。(満遍なくに煮絡めるように、途中で鍋をゆすって里芋を動かす)

STEP4
照りを出す仕上げ

煮汁が少なくなったら落とし蓋を取り、鍋をやさしくゆすりながら煮詰める。
煮汁が里芋に絡み、照りが出たら火を止める。

STEP5
盛りつけ

器に盛りる。(あれば木の芽やゆず皮を添えて)


美味しく仕上げるコツ

目指すのは、里芋のやわらかさを残しつつ、つややかに照りの出た上品な仕上がり

里芋は煮崩れしやすい一方で、火の通し方や煮詰め方で食感や見た目が大きく変わります。
やさしく煮含め、最後に煮汁を煮詰めることで、だしの香りをまとった“ほくほく・つやつや”の一皿に。ここでは、そんな仕上がりを叶えるためのコツを紹介します。

  • 塩もみ+酢ゆでの合わせ技
    ぬめりが抑えられ、煮崩れしにくいすっきりした仕上がりになります。
  • 最初に全体に油をなじませる
    煮崩れを防ぎ、コクと仕上がりのツヤを出します。
  • やさしく転がすように煮る
    里芋は煮崩れしやすいため、菜箸で何度も触らずに、鍋をそっとゆすって煮汁をからめましょう。名前のとおり「煮っころがす」イメージです。
  • 落とし蓋で均一に味を含ませる
    落し蓋をすることで、煮崩れを防ぎつつ全体に味がなじみます。
    アルミホイルやクッキングシートでも代用可能です。
  • 照りを出すタイミングは“煮汁が1/3”
    煮汁がほどよく減ってくるまで、焦らず弱火で仕上げましょう。最後に鍋をやさしくゆすって煮汁を絡ませるようにすると、自然なつやが出て美しい見た目になります。
  • 一晩おくと、味がさらになじむ
    煮物は冷めるときに味がしみ込みます。作りたてより、翌日少し温め直した方が里芋の甘みが際立ちます。

\落し蓋の役割について/


🍴 アレンジレシピ紹介

煮っころがしをベースに、ひと工夫加えたアレンジもおすすめ。
和ごころごはん帖で紹介している里芋レシピとあわせて、季節や献立に合わせて楽しんでみてください。

まろやかな白味噌仕立てで、やさしい甘みのある煮物に。
煮っころがしよりも上品な味わいで、おもてなしにもぴったり。

カリッと揚げた里芋に、温かいだしをかけた人気の一品。
外は香ばしく、中はほくほく。冷めても美味しく、おつまみにも。

やわらかな里芋に、いかのうま味がしみ込んだ味わい深い煮物。
同じ煮る料理でも、煮っころがしとはまた違うコクと香りが楽しめます。
旬のいかを使えば、季節のごちそうとして食卓がぐっと華やかに。
レシピを見る|いかと里芋の煮物

里芋を中心に、れんこんやごぼうなどの根菜を盛り合わせた正月料理。
祝いの席にぴったりの、華やかな煮物です。

十五夜(芋名月)にぴったりの季節献立。
行事ごはんを見る|お月見特集


🌕ミニコラム|十五夜(芋名月)と里芋

秋の夜空に浮かぶ満月を愛でる「十五夜」は、別名「芋名月(いもめいげつ)」とも呼ばれます。
旧暦の8月15日、ちょうど里芋の収穫期にあたることから、その年に掘りあげた里芋を月に供えて収穫を感謝したのが始まりとされています。

もともとは稲作が広まる以前、里芋などの根菜を主食としていた時代の名残ともいわれ、月に里芋を供える風習は古くから日本各地に伝わっています。
家庭では、月見団子とともに小芋や煮物をお供えし、秋の恵みに感謝する静かな時間を過ごします。

🌾「芋名月」は、秋の実りを喜び、自然に感謝する夜。
ほくほくとした里芋の煮ものを味わいながら、夜空を見上げて季節を感じてみてはいかがでしょうか。

おわりに|和ごころ詰まったおかず

ころんと丸い里芋が、だしの香りをまとって輝く煮っころがし。
手間を惜しまず下ごしらえすることで、口の中でほろりとほどける上品な味わいに仕上がります。
派手さはなくとも、季節のぬくもりを感じさせてくれる――そんな「和ごころ」の詰まったおかずですね。


\里芋について詳しく知る/

\ほかの里芋料理を見る♪/

\9月行事食|十五夜(芋名月)/

\秋野菜としょう油の美味しい関係/