~和ごころ素材図鑑~
このシリーズでは、季節ごとの食材をていねいに紹介しています。
野菜や魚、乾物やお肉など、和食に寄り添う素材たちの魅力を知って、台所でのひとときをもっと楽しく。

初めて「白いなす」を手にしたとき、その不思議な見た目に戸惑ったのを覚えています。

料理してみるとその食感は驚くほどなめらかで、油や調味料の吸い方も、どこか上品でやさしいのです。

今回は、そんな魅力たっぷりの白なすについて、食材の背景から、おいしい食べ方、
おすすめの和食レシピまで、たっぷりご紹介します。


白なすとは…

白なすは、その名の通り果皮が白〜淡いクリーム色をしたなすの仲間です。原産地はインドとされ、紫なすと同様に世界各地で栽培されています。

日本では「埼玉白なす」「長崎白なす」といった在来品種のほか、イタリア料理で使われる「ビアンカ(Bianca)」「ホワイトベル」など海外原産の品種も知られています。

紫色のなすとの大きな違いは、果皮に含まれるアントシアニン(色素)がほとんどないこと。
そのため見た目は真珠のように白く、味はクセが少なくあっさりとしています。


「白なす」という名前は、特定の品種ではなく、皮の色が白〜淡いクリーム色をしたなす全般の総称です。
地域や生産者によって形や食感、調理に向く料理が少しずつ異なります。

代表的な品種と特徴は以下の通りです。

  • 長白ナス(ちょうはくなす)
    細長い形で、身はやわらかく煮崩れしにくいのが特徴。炒め物や煮びたしに向く。
  • 白丸ナス(しろまるなす)
    丸くて肉厚。火を通すととろけるような食感になり、田楽やステーキに最適。
  • カプリス(Caprice)
    海外原産の白なすで皮はやや厚め。ローストやグリルにすると香ばしさが引き立つ。
  • 白神なす(しらかみなす)
    秋田県で栽培される希少品種。皮がやわらかく甘みがあり、焼き料理でも美味。
  • ビアンカ、クララ
    イタリア料理でよく使われる品種。見た目や風味が異なり、地域によって栽培方法やサイズもさまざま。

同じ「白なす」でも、出会える品種や味わいは一期一会。
直売所や産地で手に入れる際は、品種名や特徴を生産者に聞くことができたらラッキー♪より美味しい食べ方がわかるかもしれません。

補足|日本で栽培される「白なす」と呼ばれるものには、実際は緑色をしたものもあります。どちらも肉質がきめ細かく、加熱するととろける食感が特徴。どちらも美味しいです。


白なすの旬は夏(6〜9月)で、特に7〜8月が美味しさのピークです。

国内では新潟県、長野県、鹿児島県、熊本県、秋田県など各地で栽培され、地域ブランドとして販売されているものもあります。

産地や品種によっては初夏から秋口まで楽しめます。スーパーではまだ珍しいですが、農家直売所やマルシェではよく見かけるようになりました。

紫なすより皮がやや厚めなものが多く、加熱調理に向いています。


白なすは見た目のやさしさだけでなく、火を入れたときのとろける食感や自然な甘みが魅力です。

  • 見た目:真っ白〜ややアイボリー色の皮。ツヤがありヘタとのコントラストが美しい。
  • 食感:加熱するととろけるように柔らかく、クリーミーな舌触り。
  • 味わい:苦味が少なく、油や出汁をよく吸い、調味料との馴染みが良い。
  • 皮の厚さ:品種によりやや厚めで硬い。加熱方法によっては気にならない。

白なすは主成分の多くが水分ですが、カリウムを含み、体内の余分な塩分を排出する働きがあります。
さらに食物繊維も含まれており、腸内環境の改善にも役立ちます。
紫なすに比べるとアントシアニンは少ないものの、その分クセが少なく、あっさりとした味わいで食べやすいのが特徴です。

  • カロリー:100gあたり約20kcal(紫なすとほぼ同じ)
  • 主な成分:食物繊維、カリウム、葉酸、ビタミンC
  • 色素成分:紫なすに多いアントシアニンは少ないが、代わりにクロロゲン酸などのポリフェノールを含む
  • 健康効果:むくみ予防(カリウム)、腸内環境改善(食物繊維)などが期待される

おいしい白なすの選び方

白いなすは見た目で鮮度を判断しやすい野菜です。
皮のハリや色ツヤ、ヘタの状態を確認すると、良いものを見分けられますよ。

  • 表面:ツヤがあり、傷や黒ずみがないもの
  • ヘタ:みずみずしく、濃い緑色でとげがピンと立っている
  • 重さ:持ったときにずっしりと重みを感じる(=水分が豊富)
  • :品種によって丸型・長型があるが、ふっくらと均一な形が良い
  • 避けたい状態:皮にしわが寄っている、変色している、ヘタが乾燥しているもの

調理のポイントとコツ

白いなすは、火を通すととろりと柔らかくなるため、加熱方法を選ぶことで甘みや旨みを最大限に引き出せます。

  • 皮の扱い:生食や短時間加熱は皮をむくと口当たりが良い。煮込みや蒸し焼きは皮ごとでもOK。
  • アク抜き:アクが少ないため不要な場合が多いが、白さを保ちたいときは塩水に5分浸す。
  • 加熱法ごとの特徴
    • 焼く:香ばしさと甘みが際立つ
    • 蒸す:水分を閉じ込めしっとり
    • 揚げる:油をよく吸いコクが増す
    • 生食:薄切りでマリネや浅漬けにできる(品種による)

白なすに合う料理アイデア

白いなすは油や出汁をよく吸い、加熱後はとろけるような食感になります。
そのため、和食から洋食まで幅広くアレンジ可能で、季節の食材とも合わせやすい野菜です。

  • 和食:田楽、煮びたし、みそ汁、塩こうじ漬け、揚げびたし
  • 洋食:グリル(オリーブオイル+塩)、ラタトゥイユ、チーズ焼き
  • 中華:甜麺醤炒め、麻婆なす、香味ダレかけ
  • さっぱり系:レモンとオリーブオイルのマリネ、浅漬け
  • 組み合わせのコツ:油、味噌、醤油、チーズ、トマト、にんにく、しょうがなどと好相性

白なすを使ったおすすめ和食レシピ3選

白なすの上品な甘みは、味噌やしょうゆなどの和の調味料とも相性抜群。
ここでは、家庭でも作りやすく、白なすの持ち味を存分に生かした和食レシピを3品ご紹介します。旬の時期にぜひお試しください。

とろりと柔らかく焼き上げた白なすに、甘みそをたっぷりのせた定番の一品。ご飯にもお酒にもよく合います。

白なすの田楽レシピ

材料(2人分)

  • 白なす…1本(約200g)
  • 赤みそ…大さじ2
  • みりん…大さじ1と1/2
  • 砂糖…大さじ1/2
  • ごま油…大さじ1

作り方

  1. 白なすは縦半分に切り、皮に格子状の切り込みを入れる。
  2. フライパンにごま油を熱し、切り口を下にして弱火でじっくり焼く。
  3. 小鍋で赤みそ・みりん・砂糖を練り合わせ、弱火でひと煮して練りみそを作る。
  4. 焼き上がったなすに練りみそを塗り、好みで白ごまをふる。

\写真付きの詳しいレシピ記事はこちら/

だしの旨みをしっかり吸い込んだ白なすに、しょうがの香りを添えてさっぱりと仕上げます。冷やしても美味しい夏の常備菜。

白なすの煮びたし(しょうが風味)レシピ

材料(2人分)

  • 白なす…2本(約300g)
  • だし汁…200ml
  • 薄口しょうゆ…大さじ1と1/2
  • みりん…大さじ1
  • おろししょうが…小さじ1

作り方

  1. 白なすは縦半分に切り、食べやすい大きさに切る。
  2. フライパンで軽く油をひき、なすをさっと焼き目がつくまで焼く。
  3. 鍋にだし汁・薄口しょうゆ・みりんを入れ、なすを加えて中火で5分煮る。
  4. 火を止め、おろししょうがを加えてそのまま冷ます。冷やしても美味しい。

揚げた白なすを熱々のうちにだしに浸し、山椒の香りをふわりと効かせた大人の味わい。

白なすの揚げびたし 山椒風味

材料(2人分)

  • 白なす…2本(約300g)
  • 揚げ油…適量
  • だし汁…150ml
  • 薄口しょうゆ…大さじ1と1/2
  • みりん…大さじ1
  • 粉山椒…少々

作り方

  1. 白なすは縦半分に切り、食べやすい大きさに切る。
  2. 170℃の油で素揚げし、油を切る。
  3. 鍋にだし汁・薄口しょうゆ・みりんを煮立て、なすを加えてひと煮。
  4. 器に盛り、粉山椒をふって仕上げる。

ミニコラム|白なすと「油」の相性の理由

なすはスポンジのように油を吸う野菜ですが、白なすは特に肉質がやわらかく油をしっかりと吸います。

油と合わせることで、旨みやコクが増し、甘みも引き立つ”絶品なす料理”になるのは間違いないのですが、その反面、油を吸いすぎると重くなってしまうというリスクもあります。
そのため、揚げる前に軽く下焼きする、または高温で短時間揚げるといった工夫で、べたつかず軽やかな仕上がりになります。

また、オリーブオイル、ごま油、なたね油など、香りのある油を使うと、白なすの上品な風味に深みが加わります。


保存方法

新鮮な状態を保つためには、温度と湿度の管理が大切です。特に夏場は冷蔵庫での保存が安心です。

  • 常温:夏場は避ける。涼しい場所で2〜3日程度まで。
  • 冷蔵:ポリ袋やラップで包み、野菜室で約3〜5日保存可能。
  • 冷凍:生のままは食感が損なわれるため、加熱後に冷凍するのがおすすめ。
  • 劣化サイン:皮のしわ、色のくすみ、ヘタの乾燥

おわりに|夏の食卓は一期一会

白なすは、その見た目の美しさだけでなく、やさしい甘みととろける食感が楽しめる夏の旬野菜です。
加熱すると驚くほど柔らかく、シンプルな味付けでも、だしや味噌、香味野菜と合わせても、それぞれに違った表情を見せてくれます。

品種や産地によって個性が異なり、直売所や農家から手に入れる白なすはまさに一期一会の出会い。
ぜひこの夏は、白なすを食卓に迎えて、旬ならではの瑞々しさとやさしい味わいを楽しんでみてください。

私の白なすとの初めての出会いは、安曇野で農業を営む叔母からのいただきものでした。

つややかにきれいな色をしている白なすでしたが、「なすは紫色の野菜である」という固定観念とは恐ろしいもので…「え?ほんとに美味しいの?」と、そんな戸惑いが先立ってしまったのでした(涙)。

今は亡き叔母に、疑ってごめんね…というお詫びとともに、素敵な出会いをありがとう!と伝えたいですね。

今日も最後まで読んでいただきありがとうございました!


参考文献
・農林水産省「野菜の図鑑」なす類の説明
・文部科学省「食品成分データベース」
・農研機構「ナスの品種と特徴」資料

農家web「白なすの特徴と栽培」


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