さしすせそ歳時記|季節の食材と和の調味料で楽しむ、四季の台所

日本の台所には、昔から受け継がれてきた「さしすせそ」の知恵があります。
砂糖(さ)・塩(し)・酢(す)・醤油(せ)・味噌(そ)
それぞれの調味料は、旬の食材を引き立て、季節の食卓を豊かに彩ってくれます。
このシリーズでは、旬の恵みと和の調味料を組み合わせた、季節感あふれるレシピをご紹介します。

冬になると、ふと味噌の香りが恋しくなりませんか。
湯気の向こうに立ちのぼる香ばしい香り。根菜の甘みがじんわり溶け込んだ味噌汁をすすると、冷えた体の芯まで温かく満たされていくようです。

味噌は、日本の冬の台所に欠かせない存在。大根や里芋、かぶ、白菜など、冬野菜のもつ自然な甘みやとろみと出会うと、その相性は抜群です。

今回は、冬野菜と味噌の美味しい関係をたどりながら、味噌の種類やおすすめの料理、冬ならではの味わい方をご紹介します。


冬に味噌が恋しくなる理由

寒くなると自然と塩気やコクのあるものを食べたくなるのは、身体があたたかさを求めているから。
味噌には、発酵の力で生まれるうま味と、塩分による保温効果があります。味噌汁を一杯飲むと、体温が上がるだけでなく、胃腸もやさしく刺激され、内側からぬくもりが広がります。

また、味噌の原料である大豆には、たんぱく質やビタミンB群が豊富。冬の疲れた身体を整える力を秘めています。
特に長野や東北など寒い地方では、昔から「冬は味噌を多く食べる」と言われるほど、味噌は冬の保存食・健康食として重宝されてきました。

味噌の香ばしさや甘みが、冬の冷たい空気と対照的に、心まで温めてくれる――。
それこそが、味噌が冬にこそ美味しく感じられる理由です。

🪶 ミニコラム|「寒仕込み味噌」と冬の台所
冬の寒さがいちばん厳しいころ、日本の各地では味噌の仕込みが行われてきました。
「寒仕込み味噌」と呼ばれるこの時期の味噌は、低温でじっくり熟成することで、香り高くまろやかな味に。
春を待ちながら樽を見守る――そんな風景こそ、昔ながらの冬の情景です。


味噌の種類と味わいの違い

味噌とひと口にいっても、その種類は実に多彩です。
色や風味の違いは、原料の配合や発酵期間によって生まれます。冬の料理では、素材の甘みを引き立てたり、深みを与えたりと、味噌選びが味の印象を大きく左右します。

種類特徴向いている料理例
赤味噌大豆の割合が多く、長期熟成でコクと塩気が強い。豚汁、味噌煮込みうどん、ぶりの味噌煮
白味噌米麹が多く、発酵期間が短い。甘みとまろやかさが特徴。かぶの煮物、白味噌仕立ての雑煮
合わせ味噌赤と白のいいとこ取り。家庭の定番味味噌汁全般、煮物、炒め物
麦味噌麦麹由来の香ばしさと素朴な甘み田楽、焼き味噌、野菜炒め

冬の台所で活躍するのは、コクのある赤味噌や合わせ味噌
濃いめのだしと合わせれば、根菜の甘みを引き立てながらも、深みのある味に仕上がります。

一方で、白味噌は冬の行事食にも登場。お正月の白味噌雑煮や、かぶの煮ものに使うと、やさしい甘みが広がります。

🍶 豆知識コラム|味噌の発酵と香りのひみつ

味噌の香りが「ふわっ」と立つ瞬間、心までほっとする――。
あの香りには、発酵によるたくさんの“自然の働き”が隠れています。

  • 味噌は「麹菌」「乳酸菌」「酵母」の三つの微生物によって発酵。
  • 発酵の過程でアミノ酸・有機酸・香気成分が生まれ、豊かなうま味と香りが生まれます。
  • 特に加熱したときに香ばしさを生むのは「メイラード反応」。
    味噌の糖分とアミノ酸が熱で反応し、こうばしい茶色の香り成分(メラノイジン)ができます。

この反応があるからこそ、焼き味噌や味噌田楽、味噌煮込みなどは冬の台所にぴったり。
温度と香りが重なり、食欲を誘う“冬のごちそうの香り”になります。

ひとことメモ
発酵が進んだ味噌ほど香りは強く、色も濃くなります。
甘口の白味噌は香りが控えめでまろやか、辛口の赤味噌は香ばしく深い香りが特徴です。


味噌と相性のよい冬野菜

冬野菜の多くは、寒さによって甘みが増すのが特徴。
その甘みをまろやかに包み、旨味を重ねるのが味噌の得意技です。

冬の味噌料理といえば、やはり「味噌田楽」
火を通すほどに透きとおるように柔らかくなる大根に、甘辛い味噌だれをとろりとかけると、口の中いっぱいに冬の香りが広がります。

また、味噌汁に入れても美味しく、赤味噌なら力強く、白味噌なら優しい味に。

\和ごころ素材図鑑【大根】について詳しく知る/

白味噌仕立てのかぶ煮は、冬の京都を代表する味。
やわらかな身に味噌の甘みが染み、口の中でほどけるような上品さです。葉も一緒に煮ると、彩りも栄養も満点。

ねっとりとした里芋の食感と味噌のコクは好相性。
合わせ味噌や麦味噌を使って煮ると、郷土料理風のほっとする味になります。

\和ごころ素材図鑑【里芋】について詳しく知る/

鍋料理の定番。味噌ベースの鍋つゆにすれば、白菜の水分と味噌の旨味が溶け合い、格別のスープに。
豆乳を合わせて「味噌豆乳鍋」にするのも人気です。

焼き味噌ぬたにすると、ねぎの甘みが引き立ちます。
寒さで甘みを増したねぎを味噌と合わせると、冬ならではの香ばしさととろみが楽しめます。


冬の定番味噌レシピ

寒い朝にぴったりの一杯。根菜の甘みと味噌の香ばしさが溶け合う、冬の定番汁ものです。

材料(2人分)

  • 大根 … 5cm
  • にんじん … 1/3本
  • ごぼう … 1/4本
  • 里芋 … 小2個
  • 長ねぎ … 1/2本
  • だし汁 … 400ml
  • 味噌 … 大さじ2

作り方

  1. 根菜は食べやすい大きさに切り、ごぼうはさっと水にさらす。
  2. 鍋にだし汁を入れ、根菜を加えてやわらかくなるまで煮る。
  3. 里芋が煮えたら火を弱め、味噌を溶き入れる。
  4. 最後に小口切りのねぎを加え、ひと煮立ちさせて火を止める。

具だくさんで食べ応え満点。炒めてから煮ることで、コクと香りがぐっと引き立ちます。

材料(2人分)

  • 豚こま切れ肉 … 80g
  • 大根 … 5cm
  • にんじん … 1/3本
  • ごぼう … 1/4本
  • こんにゃく … 1/4枚
  • 長ねぎ … 1/2本
  • だし汁 … 400ml
  • 味噌(赤味噌または合わせ味噌) … 大さじ2
  • ごま油 … 小さじ1

作り方

  1. 具材は食べやすく切り、ごぼうはさっと水にさらす。
  2. 鍋にごま油を熱し、豚肉を炒めて色が変わったら野菜を加える。
  3. 全体に油がまわったらだし汁を注ぎ、やわらかくなるまで煮る。
  4. 味噌を溶き入れて仕上げ、ねぎを加えてひと煮立ち。

甘辛い味噌だれが大根にじんわり染みる、冬の定番おかず。お酒のお供にもぴったりです。

材料(2人分)

  • 大根 … 1/3本
  • 味噌 … 大さじ2
  • みりん … 大さじ1
  • 砂糖 … 大さじ1
  • 酒 … 小さじ2

作り方

  1. 大根は2cm厚の輪切りにし、下ゆでしてやわらかくする。
  2. 味噌・みりん・砂糖・酒を小鍋で軽く煮詰め、味噌だれを作る。
  3. ゆでた大根をグリルまたはフライパンで軽く焼く。
  4. 温かいうちに味噌だれを塗り、こんがり焼き目をつける。

かぶの甘みを引き出す、やさしい味わいの一品。おもてなしにもぴったりの上品な煮物です。

材料(2人分)

  • かぶ … 2個(葉つき)
  • だし汁 … 300ml
  • 白味噌 … 大さじ2
  • みりん … 小さじ1

作り方

  1. かぶは皮をむいて4等分し、葉は軽くゆでて3cmに切る。
  2. 鍋にだし汁とかぶを入れ、やわらかくなるまで煮る。
  3. 火を弱め、白味噌とみりんを加えて軽く煮含める。
  4. 盛りつけ時にかぶの葉を添える。

野菜ではありませんが、味噌を使った冬の料理にぜひ♪
脂ののったぶりに、赤味噌のコクとしょうがの香りをきかせた冬のごちそう。ご飯にもお酒にも合います。

材料(2人分)

  • ぶり切り身 … 2切れ
  • 赤味噌 … 大さじ2
  • 酒 … 大さじ2
  • みりん … 大さじ2
  • 砂糖 … 小さじ2
  • 水 … 100ml
  • しょうが(薄切り) … 3枚

作り方

  1. 鍋に水・酒・みりん・砂糖・しょうがを入れて煮立てる。
  2. ぶりを加え、落とし蓋をして中火で5分ほど煮る。
  3. 赤味噌を溶き入れ、煮汁をかけながらさらに5分煮る。
  4. 煮汁がとろりとしたら火を止め、器に盛る。

👉詳しいレシピ記事はこちらへ


味噌の種類で変わる味わい方

同じ料理でも、味噌を変えるだけで印象ががらりと変わります。

  • 白味噌×かぶの煮もの
     → やさしくまろやか、上品な味わい。
  • 赤味噌×豚汁
     → 力強く、食欲をそそる濃厚さ。
  • 麦味噌×田楽味噌
     → 香ばしく、田舎風のぬくもり。
  • 合わせ味噌×味噌汁全般
     → 迷ったときの万能タイプ。

味噌を“色”で選ぶのもおすすめです。
白っぽい味噌はやさしい味に、濃い赤褐色は深みのある味に。
季節や気分で使い分けると、家庭の食卓に豊かな変化が生まれます。


味噌の保存と上手な使い方

味噌は生きた発酵食品。保存の仕方ひとつで、風味や香りが変わります。
毎日の台所で長く美味しく味噌を使うために、ちょっとした工夫を覚えておきましょう。

  • 冷暗所または冷蔵庫で保存
     → 直射日光・高温を避け、15℃以下が理想。夏場は冷蔵庫が安心。
  • 空気に触れさせない
     → 味噌の表面をならしてラップをぴったり貼り、酸化を防ぐ。
  • 使うたびに清潔なスプーンで
     → 雑菌の混入を防ぎ、発酵のバランスを保ちます。

保存中も発酵はゆっくり進み、香りや色が変化します。
・少し色が濃くなるのは自然な熟成の証。
・香りが強まってきたら、煮込みや炒め料理に使うのがおすすめ。
・まろやかに使いたいときは、白味噌や合わせ味噌をブレンドして調整しても◎。

味噌は保存するほどに“味わいが育つ”食品です。
季節や料理によって使い分けながら、冷蔵庫の中でも小さな発酵の世界を楽しんでみてください。


おわりに|冬に恋しい味噌の香り

台所に立つと、湯気の向こうからふわりと漂う味噌の香り・・・どこか懐かしく、やさしい冬の匂いです。
寒い日に味噌汁をすする、味噌田楽を焼く、そんなひとときが、季節を味わう最高のごちそうです。

忙しい日々の中でも、冬の寒い日も、味噌料理でなんだか心がほっとする・・・
そんな幸せな冬の台所を過ごしたいものですね♪


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