~和ごころ素材図鑑~
このシリーズでは、季節ごとの食材をていねいに紹介しています。
野菜や魚、乾物やお肉など、和食に寄り添う素材たちの魅力を知って、台所でのひとときをもっと楽しく。
夏の食卓に彩りを添えてくれる「ししとう」。
その姿は青唐辛子に似ていますが、ほとんど辛味はなく、食べやすい野菜が、ときどき“当たり”のように辛い実が混ざっているのも「ご愛敬」といったところでしょうか。
素揚げや素焼き、含め煮などの、シンプルな調理法と味付けで、十分美味しく味わうことができるのもししとうの魅力です。
今回は、ししとうの特徴や旬、栄養、調理のコツから簡単に楽しめるレシピまで、たっぷりとご紹介します。
ししとうとは?

ししとうは、正式には「ししとうがらし(獅子唐辛子)」と呼ばれる、唐辛子の仲間です。
実の先端が獅子(ライオン)の顔のようにでこぼこしていることから、その名がついたといわれています。
見た目は青唐辛子にそっくりですが、基本的には辛くなく、青椒(ピーマン)のように甘味を楽しめる野菜です。
唐辛子の中でも未熟な状態で収穫するため、果皮はやわらかく、焼いたり炒めたりすると香ばしさとともにほろ苦さが加わり、大人の味わいになります。
ししとうの旬
ししとうの旬は、初夏から盛夏にかけて(6月〜8月)。特に梅雨明けからお盆の頃にかけては最も美味しい時期で、表面にハリとつやがあり、青々とした香りが際立ちます
夏の高温と日差しを受けることで香ばしさやほろ苦さが増し、焼いたときの風味が格別になります。
ハウス栽培や温暖な地域では春先から出回ることもあり、近年は秋口まで比較的長い期間、店頭で見かけるようになりました。
ただし味わいのピークはやはり夏場で、暑い季節にさっと焼いて食べるのが一番のごちそうです。
ししとうの産地

ししとうは日本各地で栽培されていますが、とくに高知県、宮崎県、千葉県などが主な産地として知られています。
- 高知県:年間を通じた出荷量が多く、全国有数の産地。温暖な気候を生かして栽培が盛んです。
- 宮崎県:九州の代表的な産地で、冬から春にかけても安定した出荷があるのが特徴。
- 千葉県:首都圏に近い地の利を生かし、夏場を中心に市場へ多く出荷されています。
このほか京都府や愛知県などでも栽培されており、地域ごとに出荷時期や特徴が少しずつ異なります。
流通が安定しているため、近年は一年を通してスーパーで手に入りますが、最も美味しい旬は夏と覚えておくと、季節の味わいを楽しめます。
栄養と効能
ししとうは小さいながらも、実の中には栄養が詰まっています。
- ビタミンC:美肌づくりや免疫力アップに。加熱にも比較的強いのが特徴です。
- βカロテン:体内でビタミンAに変わり、粘膜や皮膚を健やかに保つ働きがあります。油と一緒に調理すると吸収率がアップ。
- カリウム:体内の余分な塩分を排出し、むくみや高血圧予防に効果的。
夏場の食欲が落ちやすい時期に、さっと焼いて食べられるししとうは、まさに“夏バテ防止の味方”といえる野菜ですね。
美味しいししとうの選び方

ししとうを美味しく食べるためには、鮮度の良いものを選びましょう。次の点をチェックしてみてください。
- 色つやが鮮やか
濃い緑色でつやがあるものは新鮮。黄味や茶色がかっているものは鮮度が落ち始めています。 - ヘタがみずみずしい
ヘタの部分がしおれておらず、ぴんとしているものが良品。乾燥や変色は避けましょう。 - 実がふっくらしている
張りがあり、しなびていないものを選びます。細すぎる実やしわが出ているものは水分が抜けています。 - 大きすぎないサイズ
大きく育ちすぎたものは皮が固くなりやすく、小ぶり〜中くらいのサイズが食べやすくおすすめです。 - 種音チェック(おまけの見分け方)
手で軽く振ったときにカラカラと音がするものは、中の種が硬くなっているサイン。若い実の方が柔らかく美味しいです。

ししとうは“ヘタの元気さ”が一番の見極めポイント。青々としたツヤがあるものを選びましょう♪
調理の基本と下ごしらえ
ししとうはとても扱いやすい野菜ですが、いくつかのコツを知っておくとより美味しく仕上がります。
- 破裂防止の切れ目
加熱中に中の水分が膨張して破裂することがあります。調理前に包丁で実の先端や横に小さな切れ目を入れておくと安心です。 - 焼き方
魚焼きグリルやフライパンで表面に軽く焦げ目がつくまで焼くと、香ばしさが引き立ちます。 - 油との相性
油で炒める、揚げるとβカロテンの吸収率が上がります。天ぷらや素揚げは定番の楽しみ方。 - 辛い実に当たったら
見た目で見分けるのは難しいですが、辛いときは種やワタに含まれるカプサイシンが多いことが原因。辛味が苦手な方は、調理前に種を取っておくと安心です。
ししとうの保存方法
- 冷蔵保存:ビニール袋に入れ、冷蔵庫の野菜室で1週間ほど保存可能。ヘタがしおれてきたら早めに使い切りましょう。
- 冷凍保存:ヘタを取って生のまま保存袋へ。凍ったまま炒め物や味噌炒めに使えます。
常備菜レシピ3選|ししとうで楽しむご飯のおとも
夏の食卓にうれしいししとうは、冷めても美味しく保存がきく常備菜にぴったり。ここではおすすめの3品をご紹介します。
① ししとうとじゃこの炒め煮
香ばしいじゃことししとうを甘辛く煮含めた、ご飯に合う一品。冷蔵で2〜3日保存可能。
② ししとうの味噌炒め
甘辛味噌がからんでご飯が進む味わい。お弁当にも重宝する常備菜。
③ ししとうの甘辛煮びたし
酢を隠し味にした、さっぱり風味の煮びたし。翌日以降が味のしみ頃。
常備レシピのポイント
- 短時間で仕上げることで、色鮮やかに仕上がります。
- 冷蔵で2〜3日保存可能。常備菜やお弁当に活用してください。
- 味付けを甘辛にすると、ししとう特有のほろ苦さも食べやすくなります。
おわりに|夏の食卓に小さな彩りを
ししとうは、夏に旬を迎える手軽な青唐辛子の仲間。焼くだけで一品になり、炒めても、揚げても、煮ても美味しくいただけます。栄養も豊富で、夏バテ予防にも役立つ頼もしい存在です。
大げさな手間をかけなくても、ただ焼くだけで立派な一品になるところが、ししとうの魅力!
季節を感じられて、食卓にちょっとした彩りを添えてくれるししとうを、手軽に夏の食卓に取り入れてみてください。
\ほかの夏野菜も見る/
▼