冬になると、産直や八百屋の片隅にそっと並ぶ「菊芋(きくいも)」。一見すると生姜に見えたりします^^。しょうがよりも小さくコロンとかわいらしい形をしていて、どこか素朴な温かみがあります。
「どうやって食べるの?」と、一見むずかしそうに見えますが、実はとても扱いやすい野菜で、アレンジの幅も広いです。
最近は“健康食材”として注目されることも増えましたが、何よりもまず「おいしい」ということを知ってほしい野菜。
このページでは、菊芋の特徴や旬、下ごしらえのコツ、そして定番から丁寧な一品まで——気軽に試せて、おいしく食べられるポイントをやさしく紹介していきますね。
初めての方にも、“ちょっと使ってみようかな”と思っていただけたら嬉しいです。
菊芋とは——冬にうれしい“天然の恵み”
土の中からコロンと現れる「菊芋」。
名前には“芋”とつきますが、実はじゃがいもやさつまいもの仲間ではなく、キク科の植物の塊茎です。秋には菊のような黄色い花を咲かせ、その姿が名前の由来になっています。

強い生命力を持ち、寒さにもやせ地にも負けずに育つ菊芋は、古くから家庭菜園や自家用の畑でも親しまれてきました。近年は健康食材としての注目度が上がり、冬になると直売所や産直にも並ぶ、少し特別で、でもどこか素朴な存在です。
シャキシャキと軽やかな食感、ほんのり甘い素朴な風味。
一度食べると「また使ってみたいな」と思わせてくれる、冬の台所にぴったりの野菜です。
菊芋の主な産地

菊芋には、じゃがいものような全国的ブランド産地はありません。
というのも、生命力が強く、どんな土地にも適応しやすいため、全国の農家や直売所で育てられてきた背景があります。
全国どこでも育てやすい野菜ですが、なかでも 栽培が盛んだったり、加工品づくりが活発だったり といった理由から、よく名前が挙がる地域があります。
- 青森県(南部町・十和田市など)
寒暖差のある気候で育ち、出荷量も全国トップクラス。
香りがよく、加工品も多い地域です。 - 長野県(信州各地)
標高差のある清涼な地域が多く、生食用としても人気の産地。
香りと甘みのバランスが良いと言われています。 - 岐阜県(飛騨地方)
冬の冷え込みとさらりとした空気が菊芋と相性抜群。
地元ファンの多い地域です。 - 九州地方(熊本・宮崎・鹿児島・佐賀・大分)
比較的温暖な地域では早掘りが可能で、長い期間出回ります。
香りが軽やかで、料理に使いやすいのが特徴です。
全国どこでも育つ野菜だからこそ、地域によってほんの少し風味が違うのが菊芋の面白さです。

もしも、冬の旅先で菊芋に出会ったら、その土地の味を味わってみるのも楽しいですね。いつかそんな旅がしてみたい・・・
菊芋の旬と選び方
菊芋の旬は 晩秋〜冬(11〜2月)。
寒さにあたることで甘みが増し、香りもよくなります。
選び方のポイント
- 皮に張りがあり、つやのあるもの
- 節の凹凸が少なく、丸みのあるもの
- カットされた部分が変色していないもの
軽く持ってみて、ずっしり感のあるものを選ぶと◎です。
菊芋の栄養とやさしい健康効果
菊芋といえば、よく耳にするのが イヌリン。
菊芋には芋類では珍しく、この水溶性食物繊維が豊富に含まれています。
- 食後の血糖値の上昇をゆるやかに
- 腸内の善玉菌のエサになり、環境を整える
- 便通のサポート
- 食物繊維としての満腹感も高める
下処理と保存——皮はむく?むかない?

菊芋は外皮が薄く、独特の香りと風味があるため、基本的には皮つきのまま調理するのがおすすめです。
皮つきで楽しむと、風味がぐっと豊かに
皮のすぐ下に香りと甘みがあり、薄切りにしてしまえば食感も気になりません。
調理前は、たわしやアルミホイルでこすり洗いすると、凹凸の汚れも落としやすいです。
皮つきのまま調理できるので、下ごしらえがラクなのも魅力です。
皮をむきたい場合は、酢水にくぐらせて
菊芋は切り口が空気に触れるとすぐに色が変わるため、
皮をむく場合は 酢水(1%程度) に軽くさらすと白さを保てます。
煮物やすり流しなど、なめらかな食感を楽しみたい料理では皮をむいてもよいでしょう。
保存方法
◆ 冷蔵(1〜2週間)
新聞紙に包み、冷蔵庫の野菜室へ。乾燥しにくく鮮度を保ちやすいです。
◆ 冷凍(1ヶ月ほど)
- 薄切り:炒め物や味噌汁向き
- 千切り:きんぴら向き
- すりおろし:すり流しやとろみ付けに便利
◆ 乾燥(長期保存)
薄切りにして天日干しすると、旨味が凝縮した乾燥菊芋に。
水戻しして煮物や炒め物などに使えます。

菊芋のおいしい食べ方——生・煮る・炒める・揚げる
菊芋は、さまざまな食べ方が楽しめる食材です。
「生」で味わう(サラダ・和え物)
シャキシャキ感がもっとも楽しめる食べ方。
りんごや大根など、水分の多い野菜と合わせても美味。
切ったら5分程水にさらすのがおすすめ。アク抜き&変色防止になります。
さっと「炒めて」香りを引き出す
火の通りが早く、短時間で仕上がるのが嬉しいところ。
味噌・バター・にんにくなど、香りを立てる調味料と相性抜群です。
カリッと「揚げる」と“甘さ”が際立つ
薄切りにして揚げるだけ。香ばしさが加わると、菊芋の甘みがぐっと増します。
半日~1日干すと、より香ばしい食感と味わいに♪栄養効果も〇
「煮物」にするとほっこりとやさしい
れんこんと里芋の中間のような食感で、煮崩れしにくいのが特徴。
鶏肉や油揚げと合わせると味がよく染みます。
菊芋の定番料理5品+丁寧料理2品|レシピ集

ここからは、日々のごはんに使いやすい定番5品と、少し丁寧に作りたい2品をご紹介します。
【定番1】菊芋のきんぴら
シャキシャキ感がいちばん生きる、菊芋の代表的な家庭料理。れんこん感覚で手軽に作れる優しい味わいです。
【定番2】菊芋チップス
薄切りにして軽く干してから揚げると、甘みがぐっと濃くなり、カリッと香ばしい仕上がりに。おやつにも、お酒のおつまみにもぴったりの一品です。
【定番3】菊芋の浅漬け(または甘酢漬け)
生のシャキシャキ感をもっとも手軽に味わえる常備菜。甘酢で漬ければ彩りも良く、冬の食卓の名脇役に。
【定番4】菊芋の味噌汁(豚汁にも)
火を通すとれんこんのような軽い食感に。味噌の香りと相性がよく、冬の汁物に少し足すだけで風味が広がります。
【定番5】菊芋の味噌バター炒め
味噌のコクとバターのまろやかさが菊芋の甘みを引き立てる、ご飯に合う定番おかず。
【丁寧料理6】菊芋と鶏肉のやさしい煮物
鶏の旨味を含んだ菊芋がほっこりとやわらかい一品。丁寧に作ると冬の主菜になる奥深い味わいです。
【丁寧料理7】菊芋のすり流し風 味噌仕立て
すりおろした菊芋のとろみがやさしく広がる、おもてなしにも使える上品な汁物です。
おわりに|冬の台所に、小さな楽しみを
菊芋は、どこか素朴で、でもひと口食べると少し驚きのある野菜です。
シャキッと軽やかだったり、ほっこり甘かったり、揚げれば香ばしさがふわっと広がったり——調理の仕方でこんなにも表情が変わるのかと、毎回ちいさな発見があります。
決して主張の強い野菜ではありませんが、いつもの料理にそっと寄り添ってくれる、冬の台所のやさしい相棒のような存在です。
もし旬の菊芋を見かけたら、ぜひ気軽に手に取ってみてください。
生のままスライスするだけでも、ほんの少し炒めるだけでも、冬の食卓に“新しいおいしさ”を届けてくれますよ♪
【参考元】
- 農研機構(NARO)|キクイモの基礎情報
- 旬の食材百科|キクイモ
- JAグループ|各地の農産物情報(キクイモ)
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