~和ごはん歳時記~
季節がひとつ動くたびに、台所にも小さな変化が訪れます。
昔から受け継がれてきた行事や、その日に食べたい和のおかずたち——そんな“季節のしるし”を、日々のごはんといっしょに楽しんでみませんか。
「和ごはん歳時記」では、その月らしい習わしや、心ほっとする和のごはんをやさしくお届けします。季節の台所に、そっと寄り添うことができますように。
寒さの中にも、少しずつ春の気配を感じる頃。
静かに咲きはじめる梅の花は、「もうすぐ春ですよ」と、そっと教えてくれる存在です。
梅見(観梅)は、にぎやかに楽しむというよりも、季節の移ろいを静かに味わう時間。
そんな梅の季節に寄り添う、やさしい食卓のかたちをご紹介します。
梅見(観梅)とは

梅見とは、文字通り「梅の花を見ること」。
古くは「観梅(かんばい)」とも呼ばれ、平安時代には貴族の間で親しまれていました。
実は、日本で最初に花見として楽しまれていたのは桜ではなく、梅。中国から伝わった梅は、学問や高潔さの象徴とされ、和歌や詩の題材としても多く詠まれてきたのだそうですよ。
梅見の時期
梅の開花時期は、1月下旬〜3月上旬頃。
地域や品種によって差がありますが、立春を前後して見頃を迎えることが多いです。
- 早咲き:1月下旬〜2月上旬
- 見頃 :2月中旬〜下旬
- 遅咲き:3月上旬頃まで
「まだ寒いけれど、確かに春は近づいている」…そんな季節の節目を教えてくれるのが、梅の花です。
鑑賞する梅と、私たちが食べる梅のはなし
ひと口に「梅」といっても、調べるとたくさんの種類があることに驚きます。
大きく分けると、花を楽しむ梅と、実を食用にする梅。梅見で目にする梅と、梅干しや梅酒になる梅は、少し役割が違います。
花を楽しむ梅(観賞用の梅)
梅見で親しまれているのは、主に観賞用の梅です。
◆白梅
白い花を咲かせ、香りがやさしく上品。凛とした印象があります。

◆紅梅
赤や桃色の花が特徴。白梅よりも華やかで、早咲きが多い傾向です。

◆八重咲き・枝垂れ梅
花びらが重なったものや、枝がしなやかに垂れる品種もあり、庭園や梅林でよく見られます。

これらは「花を愛でること」が主な目的で、実は小さかったり、食用には向かないことも多いです。
実を食べる梅(実梅)
私たちが食卓で親しんでいる梅は、実梅(みうめ)と呼ばれる種類です。
- 梅干し
- 梅酒
- 梅シロップ
- 梅酢
などに使われるのは、果肉が厚く、酸味のしっかりした実梅。青梅や完熟梅として収穫され、保存食として活用されてきました。
梅干しになる梅も、白くかわいらしい花を咲かせます。

春は花を愛で、初夏に実を仕込み、仕込んだ梅が出来上がった頃、それを味わう・・・梅は季節を通じて様々な楽しみ方ができますね。
梅見と食文化
梅見そのものに、決まった行事食はありません。けれど、梅の季節には、身体をととのえる食が自然と食卓に並びます。
- 梅干し・梅酢
- 菜の花や春野菜の小鉢
- 白粥や雑炊など、やさしいごはん
寒さでこわばった身体をいたわり、春に向けて少しずつ整えていく。梅見は、そんな食の切り替えの合図でもあります。
梅見の頃に楽しみたい、やさしいおすすめレシピ
梅干しと菜の花のさっと和え
ほろ苦い菜の花に、梅干しの酸味を合わせた春の小鉢。箸休めにもおすすめです。
梅酢入り 春野菜の浅漬け
大根やきゅうりを梅酢で漬けるだけ。さっぱりと、食卓が明るくなる一品です。
梅干し入り 白粥(梅がゆ)
食欲がない日にも食べやすい、定番のやさしいごはん。梅の酸味がほどよいアクセントに。
おわりに|梅が知らせる春の入口
桜が満開になる前、静かに、けれど確かに春を知らせてくれるのが梅の花ですね。
急がず、比べず、「季節が移ろう時間」をそのまま受け取る——それがこの梅見という行事の、昔から大切にしてきたものであり、いちばんの魅力かもしれませんね。
寒さの中に、ほのかな香りを感じたら、それはもう、春の入口。そんな心の余裕をもっていたいものです。
参考元
・農林水産省|梅について(花・実・利用)
・文化庁|年中行事・季節の行事(花見・観梅の歴史)
・和歌山県|梅の基礎知識(実梅・梅干し文化)
※この記事は、上記資料を参考に、家庭の台所に取り入れやすい形で紹介しています。
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