~和ごはん歳時記~
季節がひとつ動くたびに、台所にも小さな変化が訪れます。
昔から受け継がれてきた行事や、その日に食べたい和のおかずたち——そんな“季節のしるし”を、日々のごはんといっしょに楽しんでみませんか。

「和ごはん歳時記」では、その月らしい習わしや、心ほっとする和のごはんをやさしくお届けします。季節の台所に、そっと寄り添うことができますように。

3月の後半、空気がやわらぎはじめるころに迎える「春分の日」と「春のお彼岸」。冬から春へと移り変わる、ちょうど境目の時期です。

自然を見つめる日でもあり、ご先祖に思いを向ける日でもあるこの期間。

この記事では、

・春分の日とはどんな日?
・春のお彼岸の意味は?
・なぜぼたもちを食べるの?
・どんな献立が向いているの?

といった疑問を、やさしく整理していきます。


スポンサーリンク

春分の日とは|季節が切り替わる節目の日

【2026年の春分の日】

3月20日

春分の日は、昼と夜の長さがほぼ同じになる日。法律では「自然をたたえ、生物をいつくしむ日」と定められています。

この日を境に、本格的に春へ。

昔の人にとっては、「立ち止まり、これからを見つめる日」でもありました。


スポンサーリンク

春のお彼岸とは|春分を中日とする七日間

【2026年 春のお彼岸】

  • 彼岸の入り:3月17日
  • 中日(春分の日):3月20日
  • 彼岸明け:3月23日

春のお彼岸は、春分の日を中日として、前後三日ずつ、合わせて七日間にわたる期間を指します。ご先祖を敬い、命や自然に思いを向ける時間として、暮らしの中に受け継がれてきました。

彼岸の入りは、お彼岸が始まる日。
この日から、少しずつ心を整え、ご先祖や家族のことに思いを向けて過ごす期間に入ります。

中日(ちゅうにち)は、春分の日にあたる日。
昼と夜の長さがほぼ同じになることから、この世とあの世がもっとも近づく日と考えられてきました。お墓参りや供養が行われることが多いのも、この日です。

彼岸明けは、お彼岸の最終日。
静かに区切りをつけ、また日常へと戻っていくための節目の日とされています。

昼と夜の長さが同じになることから、この世(此岸)とあの世(彼岸)がもっとも近づく日と考えられてきました。

そのため、お墓参りや供養は中日に行われることが多いのです。


春分は、季節が静かに動き出す「自然の節目」
お彼岸は、心を整えるための「心の節目」

外の季節と、内側の気持ち。その両方に目を向けるのが、この頃なのかもしれません。

また、日本の行事には、昔から「始まり」「真ん中」「結び」という流れがあります。

一日で区切るのではなく、ゆっくりと整えていく時間。その重なりの中に、日本らしいやわらかな時間の流れが感じられますね。


スポンサーリンク

🌿 春のお彼岸の行事食

華やかさよりも、素朴さを大切にするのが、この時期の食卓です。

旬の野菜や豆、穀物を中心に、身体に負担をかけすぎない、やさしい味わいの料理が並びます。

静かに季節を感じながら、心も少し落ち着いていく。そんな食事が受け継がれてきました。

ぼたもち

春彼岸の代表的な行事食です。

小豆の赤色には、魔除けの意味があるとされてきました。
ご先祖への供え物としても親しまれています。

ミニコラム|「ぼたもち」という名前の由来

春のお彼岸に食べられる「ぼたもち」。この名前は、春に咲く牡丹(ぼたん)の花に由来するといわれています。

丸く大きく仕上げた姿が、ふんわりと咲く牡丹の花に似ていることから、そう呼ばれるようになりました。

一方、秋のお彼岸では「おはぎ」と呼ばれます。こちらは秋に咲く萩(はぎ)の花が由来。

同じ食べ物でも、季節の花にちなんで名前を変えるところに、日本らしい、やさしい感性が感じられますね。

精進料理

肉や魚を使わず、野菜や豆、穀物などを中心にした料理です。

もともとは仏教の教えにもとづき、生きものの命をむやみに奪わないという考えから生まれました。

とはいえ、決して質素なだけの料理ではありません。旬の野菜の持ち味を引き出し、だしや調理法の工夫によって、素材のうま味を大切にしてきた食文化でもあります。

お彼岸に精進料理が食べられてきたのは、ご先祖に思いを向けると同時に、「命をいただいて生きている」ということに、あらためて心を向けるため。

豪華に整えるというよりも、静かに心と身体を整える食事が、精進料理です。

旬の野菜のおかず

菜の花やほうれん草、春先のやわらかな根菜など。この時季に出回る野菜を、できるだけシンプルに味わうのが、おすすめです。

派手さはなくても、季節の移ろいを静かに感じられる一皿が、春のお彼岸にはぴったりですね。

おすすめレシピ春根菜のやさしいすまし汁

材料(2人分)

新じゃがいも …… 1個
新ごぼう …… 1/3本
にんじん …… 3〜4cm
だし(昆布だしでも可)…… 400ml
しょうゆ …… 小さじ2
塩 …… ひとつまみ

(あれば)木の芽や三つ葉 少々

作り方

  1. 新じゃがいもは小さめの一口大に切る。新ごぼうは薄めのささがきにし、さっと水にさらす。にんじんは薄切りにする。
  2. 鍋にだしと野菜を入れ、やわらかくなるまで弱火で静かに煮る。
  3. しょうゆと塩でやさしく味をととのえる。

※煮立てすぎないのが、澄んだ味わいに仕上げるポイントです。

春先の根菜は、水分を含んでやわらかく、甘みも穏やか。静かに煮ることで、土の香りとやさしい甘みが引き立ちます。

ごま和え・白和え

素材の味を生かした、やさしい味わいの和え物です。ごまや豆腐の風味が加わることで、野菜の持ち味がやわらかく引き立ちます。

動物性の食材を使わなくても満足感があり、家庭の食卓でも無理なく取り入れやすい、精進料理の一品です。

おすすめレシピ菜の花のごま和え

材料(2人分)

菜の花 …… 1束
白すりごま …… 大さじ2
しょうゆ …… 小さじ2
砂糖 …… 小さじ1
(お好みで)だし少々

作り方

  1. 菜の花はさっと塩ゆでし、水にとって色止めをする
  2. 水気をしっかり絞り、食べやすい長さに切る
  3. すりごま・しょうゆ・砂糖を混ぜ、菜の花を和える

※ゆですぎないのが、ほろ苦さを生かすポイントです。

和ごころ素材図鑑【菜の花】🔗
春の食卓を彩る菜の花の旬・下処理・レシピをまとめています。

【白和えレシピ】まとめ🔗
やさしく整える白和えの一皿を集めました。

汁物(すまし汁・味噌汁)

だしの香りや野菜の甘みがふわっと広がる一椀、食べる人の気持ちや体を想い、そっと落ち着かせてくれる一椀にしたいもの。

華やかさよりも、整えるためのやさしさ。そんな役割を担うのが、お彼岸の汁物ではないでしょうか。


忙しい人のための簡略お彼岸ごはん

お彼岸は七日間ありますが、毎日きちんと整えようとすると、かえって負担になってしまうこともありますよね。行事食は、暮らしを縛るものではあってはいけないと常々感じています。

そんなときは、「一品だけ」「一日だけ」を意識してみるのもおすすめです。

  • 市販のあんこで作る、簡単ぼたもち
     ごはんにあんこをのせるだけでも、お彼岸らしい一皿になります。
  • 旬の野菜のおひたし・和え物を一品
     菜の花やほうれん草など、季節の野菜を一品添えてみましょう。
  • 手軽な市販の精進料理を取り入れる
     精進料理は植物性食材を活かした料理です。市販の胡麻豆腐・こんにゃくの煮物・白和えの素などを取り入れても〇。

スポンサーリンク

おわりに|春を楽しむ、やわらかな時間

春分とお彼岸は、季節の変わり目を楽しむ、やわらかな時間です。

難しく考えなくても、旬の野菜をひとつ取り入れたり、ぼたもちを囲んだりするだけで、季節はぐっと身近になります。

できるかたちで、季節を楽しむこと。その小さな積み重ねが、日々を整えてくれるのかもしれませんね。

3月の行事食まとめ🔗
春分やお彼岸を含む、3月の行事を一覧でご覧いただけます。


和ごころ素材図鑑|菜の花🔗
春の食卓を彩る菜の花の旬・下処理・レシピをまとめています。


参考元

・内閣府「国民の祝日について(春分の日)」
・全国仏教会「彼岸とは」
・農林水産省「和食文化・年中行事と食」

※本記事は上記公的資料・関連団体情報を参考に、家庭の食卓に取り入れやすい形でまとめています。


スポンサーリンク