~和ごころ素材図鑑~
季節の移ろいとともに、旬を迎える日本の食材たち。
そのひとつひとつには、自然の恵みと、昔から受け継がれてきた知恵が息づいています。
「和ごころ素材図鑑」では、そんな和の素材を、旬・産地・調理法・行事との関わりなど、暮らしに寄り添う目線でご紹介します。
切ったときに立ちのぼる香り―――。土の中から掘り上げた野菜らしい、ちょっと野性味のある香りは、台所の空気まで変えてくれますよね。
ごぼうは、一年を通して手に入る野菜ではありますが、寒さにあたる冬のごぼうは、香りがいっそう深まり、火を通したときのうま味も格別。
煮物や炊き込みご飯、きんぴらなど、冬の和食がしっくりくるのは、その力があってこそかもしれません。
ごぼうは、日本の台所で長く親しまれてきた、静かな名脇役。
この記事では、季節を感じるごぼうの魅力を入口に、旬や扱い方、日々の台所での活かし方を、和ごころ素材図鑑としてやさしくひもといていきます。
ごぼうの基本

ごぼうは、キク科に属する根菜で、香りと歯ごたえを楽しむ野菜です。地中深くまでまっすぐ伸びる根を食用とし、細長い姿と独特の風味が特徴です。
通年出回る身近な野菜ではありますが、寒さにあたる冬は香りが増し、火を通したときのうま味がより引き立ちます。
そのため、煮物や炊き込みご飯、きんぴらなど、冬の和食との相性がとてもよい野菜です。
世界的には、薬用や飼料として利用される地域もありますが、日常の料理に欠かせない食材として定着しているのは、日本ならでは。
土の香りやほのかな苦みを「おいしい」と感じてきた、日本の食文化を象徴する存在ともいえるでしょう。
主役にも脇役にもなれる柔軟さを持ちながら、料理全体の印象を静かに支えてくれる——それが、日本の台所で長く親しまれてきたごぼうの役割です。
ごぼうの旬
ごぼうは一年を通して出回る野菜ですが、季節によって香りや味わいに違いがあります。
特に、寒い季節のごぼうは香りとうま味が増し、春先の新ごぼうはやわらかく軽やかな味わいに。旬を意識して使い分けることで、ごぼうのおいしさをより引き出すことができます。
「秋冬」のごぼう
一般に「ごぼう」として流通しているものの多くは、秋から冬にかけて収穫されるごぼうです。
寒さにあたることで香りが増し、アクがやわらぎ、加熱したときのうま味が深くなるのが特徴です。
きんぴらや煮物、炊き込みご飯など、火を通す料理では、土の香りとコクがしっかりと感じられ、冬の和食によくなじみます。歯ごたえもほどよく残り、噛むほどに味わいが広がるのは、この季節ならではです。
「春~初夏」の新ごぼう
「新ごぼう」は、春から初夏にかけて若採りされるごぼうです。皮が薄くやわらかく、香りは穏やかで、えぐみが少ないのが特徴です。
さっと火を通す炒め物や、薄切りにして和え物にするなど、軽やかな味付けと相性がよく、季節の移ろいを感じさせてくれます。
皮をこすり落とす程度で使えるため、下処理が簡単なのも魅力です。

季節によって香りや食感が変わるのも、ごぼうのおもしろさですね。料理や献立に合わせて使い分けることで、旬の味わいをより楽しめます。
ごぼうの種類
ごぼうにはいくつかの品種や系統がありますが、日々の料理では、季節による違いや太さ・香りの傾向を知っておくと使いやすくなります。
ここでは、台所で出会うことの多いごぼうを中心にご紹介します。
◆秋冬のごぼう
秋から冬にかけて収穫されるごぼうの、代表的な種類がこちら。
滝野川ごぼう

もともとは東京都北区・滝野川周辺で栽培されていた在来系の品種で、江戸時代から栽培されてきた、日本を代表するごぼうです。太くて長く、香りが強く、歯ごたえがしっかりしています。
大浦ごぼう

愛知県大府(旧・大浦)周辺の在来系が由来とされたごぼうで、とても太く、短い形が特徴のごぼうです。
中心までやわらかく、輪切りにしても火が通りやすいため、形を生かした料理に向いています。
煮崩れしにくく、含め煮や田楽などにも向き、
加熱すると甘みが引き立つのも大浦ごぼうならではの魅力です。
◆新ごぼう
春から初夏にかけて出回る、若採りのごぼうです。皮が薄く、やわらかく、香りは穏やかでえぐみが少ないのが特徴です。

日常の料理では、品種に細かくこだわる必要はありません。秋冬のごぼうは香りを、新ごぼうはやわらかさを楽しむ——
そんな季節の意識があれば、十分にごぼうのおいしさを引き出せます。
ごぼうの産地

ごぼうは全国各地で栽培されていますが、寒冷地を中心に生産が盛んな野菜です。土の中でまっすぐ育つため、水はけのよい畑と、深く耕された土壌が適しているといわれます。
主な産地
- 青森県
- 茨城県
- 北海道
- 千葉県
とくに青森県や北海道など、寒さの厳しい地域で育ったごぼうは、香りが強く、加熱したときのうま味が深い傾向があります。
一方、関東地方を中心とした産地では、形がそろいやすく、アクが出にくいよう改良された品種も多く、家庭料理に使いやすいごぼうとして流通しているようです。
産地による違いは気にするべき?
日常の料理では、産地による違いを細かく意識する必要はありません。それよりも、
- 太さが均一か
- 乾燥していないか
- 香りが立っているか
といった点を目安に選ぶ方が、仕上がりの満足度は高くなります。
美味しいごぼうの選び方
ごぼうは、ちょっとしたポイントで味わいに差が出ます。買い物の際は、次の点を目安にしてみてください。
ハリがあり、折れにくいもの
手に持ったときに、しなっとせず、張りがあるものがおすすめです。水分が抜けているごぼうは、香りも弱くなりがちです。
太さが均一なもの
できるだけ、ごぼう全体がなだらかに均一な太さのものを選びたいもの。太さがそろっていると火の通りがそろいやすく、調理しやすい傾向があります。
表面がなめらかで、ひび割れが少ないもの
深い割れやシワが多いものは、乾燥が進んでいる可能性があります。表面が比較的なめらかなものを選ぶと安心です。
土付きの方が香りは豊か
可能であれば、土付きごぼうがおすすめです。洗いごぼうに比べて乾燥しにくく、香りや風味が残りやすいとされています。
新ごぼうを選ぶときのポイント
春先に出回る新ごぼうは、
- 皮が薄く
- 色が明るめ
- 全体にやわらかそうな印象
のものが良品です。
ひげ根が少なく、みずみずしさを感じるものを選びましょう。

ごぼうは、見た目よりも、香りが立っていることが美味しさのポイントです。
少し土の香りが残るくらいが、和の料理にはちょうどいいので、選ぶときは、「見た目のきれいさ」より「手に持ったときのハリや元気さ」を意識してみてください。
ごぼうの下処理の基本
洗い方
たわしで軽くこすり、皮をむかずに使うのが基本。皮の近くに香りとうま味が詰まっています。
アク抜きについて
切ったごぼうは、変色防止のためにさっと(30秒〜1分程度)水にさらしますが、長時間の水さらしは、ごぼうらしい風味まで失ってしまうのでNG。
(香りを活かしたい料理(きんぴら・炊き込み)は、水にさらさず手早く調理するのもおすすめです。)
切り方別|アクぬきの目安時間
◆ささがき・細切り
・水にさっとくぐらせる程度(30秒ほど)
・色が落ち着いたら、すぐにザルに上げる
――― きんぴら・炒め物向き
――― 香りをしっかり残したい場合は、さらさなくてもOK
◆乱切り・厚めの輪切り
・1分程度
・えぐみが気になる場合のみ、軽く水にさらす
―――煮物・含め煮向き
―――冬のごぼうなら短時間で十分
アクぬきをしなくてもいい場合
次のような料理では、アクぬきを省略しても問題ありません。
- ごま油で炒める料理(きんぴらなど)
- だしや調味料がしっかり入る料理
- 香りを主役にしたいとき
――― 火を通すことで、えぐみは自然に和らぎます。
新ごぼうの場合
新ごぼうはえぐみが少ないため、基本的にアクぬきは不要です。気になる場合でも、さっと洗う程度で十分です。

ごぼうのアクぬきは、「しっかり抜く」より「ほどほどに整える」くらいが◎。
香りを楽しむ野菜だからこそ、水にさらしすぎないことが、おいしさにつながります♪
ごぼうの保存方法
ごぼうは乾燥に弱く、香りが抜けやすい野菜なので、状態に合わせた保存をすることがポイントです。
土付きごぼうの場合
もっとも香りを保ちやすいのが、土付きのままの保存です。
- 新聞紙に包む
- 冷暗所(10℃前後)で立てて保存
この方法で、1〜2週間ほど保存可能です。土は洗い落とさず、使う分だけ下処理するのがおすすめです。
洗いごぼうの場合
スーパーでよく見かける洗いごぼうは、乾燥を防ぐことがポイントです。
- 1本ずつラップで包む
- ポリ袋に入れて野菜室へ
保存期間の目安は 5〜7日ほど。表面がしなびてきたら、早めに使い切りましょう。
切ったあとの保存
使いかけのごぼうは、切り口の乾燥と変色を防ぐのがポイント。
- 水を張った容器に浸す
- 冷蔵庫で保存(毎日水を替える)
この方法で 2〜3日程度保存できます。長期保存には向かないため、早めに調理してください。
冷凍保存はできる?
切ったごぼうは冷凍保存できるので、便利に使うことができますが、食感と香りはやや落ちてしまいます。
- ささがき・細切りにする
- 軽く下茹で、または油で炒めてから冷凍
きんぴらや炊き込みご飯用など、加熱前提の料理に使う場合に向いています。保存期間の目安は 1か月程度です。

ごぼうは、保存方法によっては、比較的長い期間保存できる野菜ですが、できるだけ香りがあるうちに使い切るのがおすすめ。
少し土の香りが残るうちに、台所でその季節の味わいを楽しんでください。
ごぼうの栄養

ごぼうは、派手な栄養価をうたう野菜ではありませんが、日々の食事に取り入れやすい、滋味深い栄養を持つ野菜です。
食物繊維が豊富
ごぼうといえば、やはり食物繊維。特に、不溶性食物繊維と水溶性食物繊維の両方を含んでいるのが特徴です。
- 不溶性食物繊維
腸を刺激し、すっきりとしたリズムを整える - 水溶性食物繊維(イヌリン)
腸内環境を整え、食後の血糖値の上昇をゆるやかにする働きがあるとされています
噛みごたえのある食感も、自然と咀嚼回数を増やしてくれます。
カリウム
ごぼうにはカリウムも含まれています。
体内の余分な塩分を排出する働きがあり、味の濃くなりがちな煮物や炒め物と組み合わせても、食事全体のバランスをとりやすい野菜です。
ポリフェノール類
ごぼうの切り口が変色するのは、ポリフェノール類によるもの。
この成分は抗酸化作用を持つとされ、ごぼう特有の香りやほのかな苦みとも関係しています。
アクとして流してしまいがちですが、さらしすぎないことが、栄養面でも理にかなっています。

ごぼうの栄養は、「たくさん摂る」よりも、少しずつ、続けて取り入れるのが向いています。
ごぼうの定番料理

香りと歯ごたえを生かせるごぼうは、和食の中で幅広く使われてきました。
まずは、家庭の食卓で親しまれてきた定番料理からご紹介します。
きんぴらごぼう
細切りにしたごぼうを炒め、甘辛く仕上げる定番中の定番。
ごぼうの香りと歯ごたえを最もダイレクトに楽しめる一品です。
ごぼうの炊き込みご飯
だしと一緒に炊き込むことで、ごぼうの香りがごはん全体に広がる一品。
油揚げや人参との組み合わせも定番です。
筑前煮(煮しめ)
鶏肉や根菜と合わせた煮物。ごぼうの香りが加わることで、煮汁の味に奥行きが生まれます。
ごぼうの天ぷら
細切りやささがきにして揚げると、香りと食感が際立つ一品。塩で食べるのもおすすめです。
ごぼうサラダ
茹でたごぼうを使った、少し意外性のある定番。ごま和え・マヨネーズなど、和洋どちらにも展開しやすい料理です。
たたきごぼう
下茹でしたごぼうを、ごま酢で和える正月料理の定番。
繊維をほぐすことで味がなじみやすく、噛むほどにごぼうの香りとコクが広がります。
たたきごぼうや筑前煮は、行事や節目の食卓でも親しまれてきた料理です。
季節や行事と結びついた和の食文化については、こちらの記事も参考にしてみてください。
▶︎ 1月の行事食・和ごはん歳時記🔗
おわりに|土の香りを、台所から
ごぼうは、見た目も味も、どこか素朴な野菜ですよね。
ですが、包丁を入れたときに立ちのぼる香りや、火を通したときに深まるうま味は、日本の台所が大切にしてきた感覚そのものだと感じます。
旬を意識し、アクを抜きすぎず、香りを残すように調理する…という小さな心がけで、料理の中で存在感を放ってくれます。
日々の副菜に、行事の一品に。ごぼうの土の香りを楽しんでみてください♪
ごぼうは、冬に旬を迎える根菜のひとつ。
ほかの根菜についても、素材図鑑でご紹介しています。
▶︎ 根菜の素材図鑑🔗
▶︎ 牛肉とごぼうのしぐれ煮のレシピはこちら
参考元
・農林水産省
・農畜産業振興機構(alic)
・日本食品標準成分表(文部科学省)
・農業・食品産業技術総合研究機構(NARO)
※本記事は、公的資料を参考にしつつ、日々の台所での経験をもとにまとめています。

