~さしすせそ歳時記|季節の食材と和の調味料で楽しむ、四季の台所~
日本の台所には、昔から受け継がれてきた「さしすせそ」の知恵があります。
砂糖(さ)・塩(し)・酢(す)・醤油(せ)・味噌(そ)。
それぞれの調味料は、旬の食材を引き立て、季節の食卓を豊かに彩ってくれます。
このシリーズでは、旬の恵みと和の調味料を組み合わせた、季節感あふれるレシピをご紹介します。
冬野菜は、寒さの中でじっくり育つことで、でんぷんが糖に変わり、もともと甘みが強いのが特徴。その自然な甘さをさらにふっくらと引き出し、料理に深みをつけてくれるのが、砂糖の大きな役割です。
照りを出したり、野菜の水分を安定させたり、味の浸透を助けたり——。
寒い季節の台所は、実は「砂糖づかい」がとても頼もしい存在。冬野菜のしみじみとした美味しさが、より“ほっとする味”へと育っていきます。
砂糖が冬野菜をおいしくする理由

① 甘みの相乗効果を引き出す
さつまいも・かぼちゃ・れんこん・にんじん・大根…冬野菜はどれも甘みを持っています。
砂糖を少量加えることで、素材が持つ甘さがより際立つ のが冬料理の魅力。「少しだけ砂糖」が味を丸くし、やさしくまとめます。
② 煮崩れ防止で、上品な煮物に
砂糖には食材の細胞壁を強くする働きがあり、煮崩れしにくくする 効果があります。
特に里芋・かぶ・にんじん・かぼちゃなどは、煮物がきれいに仕上がりやすくなります。
③ 味がしみやすく、調味料のバランスが整う
砂糖は塩よりも分子が大きく、先に砂糖→後から塩 が味をしみこませるコツ。
素材が水分を吸いすぎるのを防ぎ、ふっくらした仕上がりを助けます。
冬野菜 × 砂糖のおすすめ組み合わせ & 料理例
大根 × 砂糖
煮物の定番。少量の砂糖で大根の繊維がやわらぎ、甘みが立ちます。
- 大根のふろふき風
甘みを引き立てて味噌との相性が抜群 - 大根の甘辛焼き
焼きつけた後に砂糖としょうゆで照りを出す - 鶏大根の煮物
下味に砂糖を加えると味が奥までしみやすい
にんじん × 砂糖
にんじんの甘さが最も引き出されやすい素材のひとつです。
- にんじんのきんぴら(甘め)
砂糖の照りが美しい常備菜 - にんじんの含め煮
お出汁と砂糖でじっくり含ませる - 彩り炒め
バター+砂糖少しでコクが増す
れんこん × 砂糖
歯ざわりと甘辛味が好相性。照り焼きやきんぴら、酢の物にも◎。
- 甘辛れんこん炒め
少量の砂糖が“つや”の決め手 - れんこんの甘酢漬け
砂糖がまろやかさ・保存性をアップ - れんこん団子の照り焼き
もっちり食感と甘辛だれが相性抜群
里芋 × 砂糖
煮崩れ防止の効果が大きく、味もしみやすくなります。
- 里芋の煮っころがし
砂糖のコクが丸い味わいに - 白味噌仕立ての煮物
甘みが調和して上品な仕上がり - 鶏そぼろあん
砂糖を少し加えることで旨みが出る
かぼちゃ × 砂糖
素材の甘さがあるので、ごく少量の砂糖でも十分です。
- かぼちゃの甘煮
定番だが“砂糖少なめ”で現代風に - ごま味噌和え
ほんのり砂糖で味噌が引き立つ - かぼちゃの茶巾
砂糖と塩ひとつまみで味が決まる
ミニコラム|砂糖は「甘さ」だけじゃない——冬料理の名脇役
冬にうれしい、砂糖の種類と使い分け
冬野菜の甘みを上手に引き出すためには、砂糖の種類選びも実は大切なポイント♪
同じ“甘さ”でも、コクや香り、照りの出方が少しずつ違うため、料理の仕上がりにやさしく個性が出ます。
ここでは、冬の台所で特によく使う砂糖の特徴と、向いている料理をご紹介します。
上白糖(家庭向けの万能選手)

クセのないまろやかな甘さで、素材の味を邪魔しないのが魅力。溶けやすく扱いやすいため、煮物・炒め物・和え物まで幅広く使える基本の砂糖です。
冬野菜の自然な甘みを、そのまま引き立てたいときにぴったりです。
きび砂糖(冬野菜と相性◎)

サトウキビ由来のミネラルをほどよく含み、やさしい風味と深みのある甘さが特徴。
大根・里芋・れんこんなど、素朴で甘みのある冬野菜と合わせると、味に“奥行き”が出て料理全体がまとまります。
三温糖(照りとコクをしっかり)

加熱過程で生まれる淡いカラメル色とコクが持ち味。照りがよく、煮物を色よく、ふくよかに仕上げたいときに重宝します。
筑前煮や甘辛炒めのように、ほんのり濃いめの味にしたい料理におすすめ。
黒砂糖(香りが強いアクセント)

独特のコクと風味があり、少量でもしっかり存在感を出します。
里芋の煮物や豚肉を使った甘辛料理に加えると、滋味深い“冬らしい味”に仕上がります。使いすぎると主張が強くなるため、少量づかいがコツ。
冬に作りたい|砂糖 × 冬野菜のおすすめレシピ3選
① 大根と鶏のやわらか甘煮
素材の甘みがしみしみ♪寒い日にほっとする定番です。
にんじんとれんこんのきんぴら
砂糖が照りを出し、冷めても美味しい冬の常備菜です。
③ かぼちゃの甘みそ和え(控えめ砂糖で)
まろやかな甘さが味噌とよく合い、冷めてもご馳走。
④ 里芋のほっこり煮っころがし
砂糖で煮崩れしにくく、つや良く仕上がる一品。
⑤ 白菜のくったり甘煮
砂糖が白菜の甘みを引き立て、驚くほどやさしい味に。副菜にも箸休めにもおすすめ♪
おわりに|冬の台所に、小さなぬくもりを
冬の野菜は、じんわり心にしみるような甘さを持っています。
さらに、ほんのひとさじ砂糖を加えることで、味わいがぐっとやさしくい一皿になります。
寒さで体が縮こまる季節こそ、台所から生まれる小さな甘みが、心と体をふっとゆるめてくれますように。今日の食卓にも、あたたかな一品を。
参考元
- 農林水産省「野菜の栄養と特性」
- 日本食品標準成分表(文部科学省)
- 全国農業協同組合連合会(JA 全農)「野菜の基礎知識」
