~和ごころ素材図鑑~
季節の移ろいとともに、旬を迎える日本の食材たち。
そのひとつひとつには、自然の恵みと、昔から受け継がれてきた知恵が息づいています。
「和ごころ素材図鑑」では、そんな和の素材を、旬・産地・調理法・行事との関わりなど、暮らしに寄り添う目線でご紹介します。
寒さが深まり冬至が近づいてくると、スーパーにゆずがたくさん並びます。
「もうすぐ年の瀬だな~」なんて、一年の早さをしみじみ感じるます。
ゆずは、日本の冬を象徴する香酸柑橘。
椀物には皮をひとかけ削るとふわりと香りが立ち、鍋や和え物は果汁を少し加えるだけで、すっと上品にまとまります。料理の主役になることは少なくても、仕上げに欠かせない存在――“和食の香りを支える果実”です。
今回は、ゆずの旬・種類・栄養・扱い方から、日々の台所で役立つ保存や使い切りの工夫まで、冬の暮らしに寄り添う視点で丁寧に紐解いていきます。
ゆずとは

柚子(ゆず)は東アジア原産の香酸柑橘で、日本では古くから親しまれてきました。果汁は少なめですが、果皮に含まれる精油成分が非常に豊かで、料理に添えると味わいに奥行きと品格を与えてくれます。
日本料理では、ゆずは“味を足すもの”というより、“香りで季節を伝えるもの”。吸い物、蒸し物、鍋物など、仕上げの一瞬に使われることが多いのもそのためです。
ゆずの旬と季節
ゆずの旬は、色によって異なります。
- 青ゆず:8〜10月
- 黄ゆず:11〜12月(最盛期)
とくに黄ゆずは、冬至の頃に最も香りが高まり、「ゆず湯」の風習とともに日本の冬の風景に溶け込んできました。年末年始の料理や保存食とも相性がよく、冬の台所に欠かせない存在です。
主な産地
ゆずの代表的な産地は、高知県。生産量は全国一で、香りの強さと品質の高さから、業務用・加工用としても高い評価を受けています。
そのほか、徳島県・愛媛県・九州北部などでも栽培され、産地ごとに皮の厚みや香りの立ち方に微妙な個性があります。
種類と特徴
一口に「ゆず」といっても、いくつかの品種や呼び分けがあります。香りや果汁量の違いを知ることで、使いどころが見えてきます。
● 本ゆず(在来種)

もっとも一般的に流通しているゆずで、香りの豊かさ・皮の使いやすさ・風味のバランスが抜群。果皮はやや厚く、黄色い部分には香り成分がぎゅっと詰まっています。
- 香り:華やかで上品、バランスが良い
- 果汁:少量だが濃い
- 用途:吸い物の皮、ゆず味噌、ゆず大根、鍋の仕上げ香など万能
日本のゆずの基本形ともいえる品種で、多くの料理人が最も使い慣れている存在です。
●多田錦(種なしゆず)

兵庫県多田村(現・川西市)で発見された品種。
最大の特徴は 種が非常に少ないこと。果汁が多く扱いやすいため、家庭用としても人気が高まり、加工品メーカーからも重宝されています。
- 香り:やや穏やか・優しい
- 果汁:多め
- 用途:ポン酢、ゆずシロップ、ゆずジャム、ゆず茶など“果汁を活かす料理”に最適
果汁の量がしっかりあるので、手作りポン酢を作るならまず選びたい品種です。
●獅子柚子(鬼ゆず)

直径20〜30cmにもなる大きな柑橘で、見た目のインパクトは圧巻!
ゆずの仲間ではなく別種の柑橘ですが、香りはゆずに似た爽やかさがあり、飾り切りや大鉢料理の“器代わり”にも使われます。
- 香り:ゆずより穏やかでフルーティー
- 果肉:大きいが味は淡泊
- 用途:砂糖煮、ピール、マーマレード、飾りなど
料理店では、正月料理の飾り柑橘として使うこともあります。
●青ゆず(未熟果)

秋までの早い時期に収穫される本柚子の未熟果。香りは鋭く、爽やかさが際立つため、薬味やゆず胡椒に最適です。
- 香り:キリッと清涼感のある香り
- 果皮:固く締まり、油胞が細かい
- 用途:ゆず胡椒、冷たい前菜、焼き魚の添え香、夏の椀物
青ゆずは「涼感を添える香り」として、夏の料理に扱われることが多いです。青唐辛子との相性も抜群です。
●黄ゆず(完熟果)

晩秋〜冬に出回る熟した本ゆず。
色鮮やかな黄金色に変わり、香りに丸みと甘さが加わります。「冬の香り」の象徴ともいえる存在です。
- 香り:丸くやわらかい、甘い
- 果皮:厚く削りやすい
- 用途:吸い物の皮、鍋物、蒸し物、ゆず味噌、白身魚の香りづけ
冬の料理がぐっと上品になる、和食の“仕上げ香”として欠かせません。
ゆずの栄養
ゆずは香りを楽しむ果実として知られていますが、栄養の多くは果汁ではなく皮に含まれているのが大きな特徴です。日本料理で皮を削って使う習慣は、香りだけでなく栄養面でも理にかなった使い方といえます。
◆ビタミンC
ゆずの皮にはビタミンCが多く含まれています。果汁よりも皮に栄養が集まるため、削り皮を添える日本料理の使い方は、香りとともに栄養を取り入れる工夫といえるでしょう。寒い季節の体調管理にも向いています。
◆香り成分(リモネンなど)
ゆず特有の爽やかな香りは、皮に含まれる精油成分によるもの。気分を落ち着かせ、食欲をやさしく引き出す働きがあるとされ、料理の仕上げに添えるだけでも、心地よい満足感をもたらします。
◆フラボノイド
ゆずの皮にはポリフェノールの一種であるフラボノイドも含まれています。血行を促す働きが知られ、冷えが気になる冬の食養生に寄り添う栄養素です。
美味しいゆずの選び方
- 皮につやとハリがある
表面がなめらかで張りのあるものは、鮮度がよく香りも豊か。しなびているものは香りが抜けやすくなっています。 - 持ったときにずっしり重い
同じ大きさでも重みを感じるものは、果汁や水分が保たれている証。乾燥が進んだものは軽く感じがちです。 - 香りがはっきりしている
近づけたときに、ゆずらしい爽やかな香りが立つものを選びましょう。香りが弱いものは、仕上げに使っても印象がぼやけます。
自然な色合いで、表面に不自然な光沢のないものがおすすめです。
ワックスが強くかかったものよりも、素朴な見た目のゆずの方が、皮の香りを安心して楽しめます。
保存方法(冷凍・香りの保ち方)
- 常温保存(短期間)
風通しのよい冷暗所であれば、数日〜1週間ほど保存できます。ただし乾燥が進むと香りが抜けやすいため、早めに使い切るのがおすすめです。 - 冷蔵保存(丸ごと)
ポリ袋や保存袋に入れ、野菜室で保存すると2〜3週間ほど香りを保てます。乾燥を防ぐことで、皮の香りが長持ちします。 - 皮の冷凍保存
黄色い部分だけを薄く削り、刻んでから冷凍すると、必要な分だけ取り出せて便利。香りをいちばん保ちやすい保存方法で、椀物や鍋の仕上げに重宝します。 - 果汁の冷凍保存
搾った果汁は製氷皿で小分け冷凍に。ポン酢や和え物に少量ずつ使えるため、香りを無駄なく活かせます。 - 丸ごと冷凍
長期保存したい場合は丸ごと冷凍も可能。香りはやや穏やかになりますが、鍋物や煮物の香りづけには十分使えます。
下処理の基本(皮・果汁・種の扱い)
皮の扱い(香りを活かす)
ゆずの香りは皮の黄色い部分に集まっています。包丁やおろし金で薄く削ぎ、白いワタはできるだけ除くのがポイント。削りすぎると苦味が出やすいため、香りを添える程度がちょうどよい使い方です。
果汁の搾り方
ゆずは横ではなく縦に半分に切ると、果汁が出やすく香りも逃げにくくなります。縦半分に切ったあと、房と房の間に浅く切れ目を入れ、力を入れすぎず手でやさしく搾ることで、えぐみの少ない果汁が取れます。
種の扱い
料理では種は取り除きますが、捨てずに取っておくのもおすすめ。洗って乾かし、焼酎に漬ければ、昔ながらのゆず化粧水として活用することもできます。
下処理のひと工夫
皮を使う前に、表面をぬるま湯でさっと洗い、汚れを落としておくと安心です。とくに皮をそのまま使う場合は、香りとともに清潔さも意識したいところです。
ゆずの美味しい使い方
ゆずは、たっぷり使う食材ではありません。ほんの少し添えるだけで、料理の輪郭が整い、季節感がふっと立ち上がります。
香りを主役にした、日本料理らしい使い方をいくつかご紹介します。
椀物・鍋物の仕上げに
吸い物や鍋物は、火を止めてからゆず皮を添えるのが基本。
湯気とともに香りが立ち、料理全体がすっと上品にまとまります。入れすぎず、「ひと香り」で十分です。
煮物や和え物の仕上げにも◎
ゆずポン酢・ゆず塩として
果汁はしょうゆや酢と合わせて自家製ポン酢に。
また、刻んだ皮を塩と合わせれば、焼き魚や天ぷらに合うゆず塩として活躍します。
ゆず味噌・浅漬けに
刻んだ皮を味噌に混ぜたゆず味噌は、ふろふき大根や焼き野菜の定番。
大根やかぶの浅漬けに加えれば、冬らしい香りの副菜になります。
炊き込みご飯・甘味に
少量のゆず皮を炊き込みご飯に加えると、後味が軽やかに。
また、シロップやジャムにすれば、香りを長く楽しめる保存食にもなります。

“少量で効く”のが、ゆずの最大の魅力。
仕上げにそっと添えるだけで、料理にグッと季節感が増します。いろいろな料理に合うので、とても使いやすい食材です♪
ゆずを使ったおすすめ料理
ゆず大根(冬の定番浅漬け)
大根の甘みと、ゆずの香りがやさしく重なる冬の定番副菜。切って和えるだけで、食卓に季節感が添えられます。
ゆず味噌(ふろふき大根・焼き野菜・焼きおにぎりに)

味噌のコクに、ゆずの香りをほんのり添えた万能だれ。冬野菜を引き立てる、ほっとする味わいです。
ゆず香る白だし鍋
だしの旨みをベースに、仕上げのゆずで香りを立たせたシンプルな鍋。素材の味を邪魔しません。
自家製ゆずポン酢
市販品とはひと味違う、香りの立つ手作りポン酢。鍋や湯豆腐、蒸し料理にも幅広く使えます。
ゆず皮の炊き込みご飯
炊き上がりに広がる、ゆずのやさしい香りが魅力。後味が軽く、冬でも食べやすいご飯ものです。
柚子茶(ゆず茶)

刻んだゆず皮の香りと、はちみつ(または砂糖)のやさしい甘さが広がる、冬の定番ドリンク。お湯で割るだけで、体の内側からほっと温まります。
おわりに|冬の台所に、ひとしずくの香りを
ゆずは、たくさん使って主張する食材ではありませんが、その存在感は抜群!皮をひと削り、果汁をひとしぼり添えるだけで、料理にはっきりとした季節の輪郭ができます。
寒い時期に黄ゆずのやわらかな香りを楽しみ、
夏には青ゆずのきりっとした香りで涼を感じる――
その使い分けの中に、日本の食卓が大切にしてきた季節感が息づいています。
いつもの料理が少し丁寧に、少し豊かに感じられる・・・
この冬も、台所に立つひとときに、ゆずの香りをそっと添えてみてください。
参考元
※本記事は、農林水産省および各自治体の公開資料、日本の食文化に関する文献を参考に作成しています。
\12月の行事食を愉しむ/
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\和ごはん歳時記年間カレンダー/
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\「冬至」にはかぼちゃ料理/
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\素材図鑑|かぼちゃ/
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