~和ごはん歳時記~
季節がひとつ動くたびに、台所にも小さな変化が訪れます。
昔から受け継がれてきた行事や、その日に食べたい和のおかずたち——そんな“季節のしるし”を、日々のごはんといっしょに楽しんでみませんか。

「和ごはん歳時記」では、その月らしい習わしや、心ほっとする和のごはんをやさしくお届けします。季節の台所に、そっと寄り添うことができますように。

お正月のにぎわいがひと段落した頃、暦の上では「小正月(こしょうがつ)」を迎えます。

小正月は、華やかな祝いの日というよりも、家族の健康や一年の実りを静かに願う、「もうひとつのお正月」として大切にされてきた行事です。

小豆を使ったやさしい行事食をいただきながら、正月の忙しさで疲れた身体をととのえ、これから始まる一年の暮らしに、そっと気持ちを向ける——
そんな意味が、小正月には込められています。

この記事では、小正月の意味や由来、過ごし方、そして行事食について、台所の目線からご紹介します。


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小正月とは?

もともと小正月(こしょうがつ)は、旧暦で正月最初の満月にあたる日で、月の満ち欠けとともに、暮らしや農の営みを整える節目として大切にされてきました。

現代では、1月15日ごろに行われる、正月行事の締めくくりの日として、地域によっては、14日から16日頃までを小正月とするところもあるようです。

お正月といえば、元日を中心とした華やかな祝いのイメージがありますが、小正月はそれとは少し性格の異なる行事です。
年神様を迎える「大正月」に対し、小正月は 一年の暮らしや実りを願うための日 として位置づけられてきました。

  • 一般的には 1月15日
  • 地域によっては 14日〜16日 にかけて行うことも
  • 満月(望月)にあたることが多く、農耕行事と深く結びついてきた

松の内(※)が明け、正月飾りを下ろす時期と重なるため、「正月行事の一区切り」として意識されることも多い日です。

松の内(まつのうち)とは
お正月に年神様をお迎えしている期間のこと。一般的には 1月1日〜7日、地域によっては 15日まで とされ、門松やしめ飾りを飾って過ごします。

大正月と小正月は、どちらも正月行事ですが、その意味合いにははっきりとした違いがあります。

  • 大正月
     年神様を迎え、新しい年の幸せを願う祝いの日
  • 小正月
     一年の健康や豊作を願い、日々の暮らしへ戻っていく節目の日

にぎやかな祝宴から、暮らしを整えるための行事へ――
その切り替えの役割を果たしてきたのが、小正月です。


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小正月の意味と由来

小正月は、もともと 農耕の営みと深く結びついた行事 として生まれました。
一年のはじまりにあたって、家族の健康や五穀豊穣を願い、これから続く日々の暮らしが穏やかであるよう祈る――そんな意味が込められています。

元日の大正月が「年神様を迎える祝いの日」だとすれば、小正月は 暮らしへ戻るための節目の日

正月のごちそうから少し距離を置き、身体や気持ちをととのえる役割も担ってきました。

小正月が1月15日前後に行われるのは、この時期が 満月(望月)にあたることが多かった ためともいわれています。
月の満ち欠けは、古くから農作業の目安とされてきました。

そのため小正月には、

  • 豊作を願う
  • その年の作柄を占う
  • 実りへの感謝を表す

といった、農にまつわる行事が各地で行われてきました。

小正月が「もうひとつのお正月」と呼ばれるのは、元日の祝いとは異なるかたちで、一年の無事をあらためて願う日 だったからです。

にぎやかな祝い膳ではなく、小豆を使ったやさしい料理や、素朴な団子を囲む食卓。

そこには、日常の延長として続いていく一年を、穏やかに始めたいという思いが込められていました。

地域によっては、小正月を「女正月(めしょうがつ)」と呼ぶこともあります。
年末年始の支度で忙しかった女性たちが、ようやくひと息つくことのできる日として、静かに大切にされてきました。

身体を休める意味でも、小正月の行事食は 滋養があり、消化のよいもの が中心。
行事の意味と、食のかたちは、昔から自然につながっていたことがわかりますね。


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小正月に何をする?

小正月の過ごし方は、地域によってさまざまです。
ただ、どの風習にも共通しているのは、正月行事を締めくくり、一年の無事や実りを願う という思い。

にぎやかに祝うというよりも、火や食べものを通して、暮らしを整える――そんな静かな行事が多いのが、小正月の特徴です。

南信州のどんど焼き

小正月の代表的な行事のひとつが、どんど焼きです。
地域によっては 左義長(さぎちょう)、また どんと焼き・鬼火焼き・三九郎 など、さまざまな呼び方で親しまれてきました。

呼び名は異なっていても、正月飾りやしめ縄、書き初めなどを焚き上げ、一年の無病息災や厄払いを願う行事である点は共通しています。

火にあたることで健康を願ったり、書き初めを燃やして字の上達を祈ったりと、その土地ごとに受け継がれてきた意味や作法もさまざまです。

正月の終わりを告げると同時に、暮らしを日常へと戻していく節目――
どんど焼きは、そんな役割を担ってきた小正月の行事です

東日本や信州、東北地方などでは、だんご木繭玉(まゆだま) を飾る風習が見られます。

枝に団子や餅をつけ、稲穂や繭に見立てることで、その年の豊作や商売繁盛を願います。

だんご木や繭玉は、もともと実りを願うための「見立ての飾り」 ですが、地域によっては、行事のあとに焼いて食べたり、どんど焼きでいただくこともあります。

飾る・願う・いただく。
その土地の暮らしの中で、役割を少しずつ変えながら受け継がれてきたのが、小正月の団子文化といえそうですね。

地域によっては、小正月を女正月(めしょうがつ) として捉えることもあります。

年末年始の準備や正月行事で忙しかった女性たちが、ようやくひと息つくことのできる日。この日に合わせて、身体にやさしい食事をとる風習もありました。

行事のかたちは違っても、「無理をせず、整える」という考え方は、今の暮らしにも自然となじみますね。


小正月の行事食とは

小正月の行事食は、お正月のごちそうとは趣が異なります。

ごちそうで祝うというよりも、身体をととのえ、一年の健康を願うための食。それが、小正月の行事食の大きな特徴です。

正月の間に食べ慣れた、重たい料理から一度離れ、やさしく滋養のあるものをいただく――そんな知恵が、昔の暮らしの中で育まれてきました。

小正月の行事食に欠かせない食材が、小豆です。

古くから赤い色には、魔除けや厄払いの力があると信じられてきました。そのため小豆は、祝い事や節目の行事で大切に使われてきた食材です。

また小豆は、冬の間に不足しがちな栄養を補い、身体を内側から温めてくれる存在でもあります。

正月料理で疲れた胃腸を休める意味でも、小正月にふさわしい食材とされてきました。

地域によって違いはありますが、小正月には、次のような行事食が受け継がれてきました。
いずれも、正月のごちそうから少し離れ、身体をととのえることを意識した料理です。

◆ 小豆粥(あずきがゆ)

白粥に小豆を加えた、小正月を代表する行事食です。
赤い色の小豆には、魔除けや厄払いの意味が込められ、一年の無病息災を願っていただいてきました。

やさしい味わいで消化もよく、正月料理で疲れた胃腸を休める意味もあります。

小正月に食べられてきた、小豆粥。
小豆と米で作る、やさしい基本レシピはこちらでご紹介しています。

小豆粥(あずきがゆ)の基本レシピ🔗

◆ お事汁(おことじる)

大根や里芋、豆類など、家にある野菜をたっぷり使った具だくさんの汁物です。
地域によって具材や呼び名は異なりますが、実りへの感謝と健康祈願の意味をもつ料理として親しまれてきました。

素朴ながら栄養バランスがよく、小正月の食卓を支える一品です。

小正月にいただかれてきた、お事汁の基本的な作り方については、こちらの記事で詳しくご紹介しています。
▶︎ お事汁の作り方|小正月の行事食🔗

◆ 団子・餅料理

だんご木や繭玉に使われる団子や餅を、行事のあとにいただく地域もあります。

もともとは豊作や実りを願って作られたものですが、「願いを込めた食べもの」として食卓にのぼることもありました。

焼いたり、汁に入れたりと、土地の暮らしに合わせた形で楽しまれてきた料理です。

小正月の行事食には、「一年を無事に過ごせますように」というささやかで切実な願いが込められています。

ごちそうを並べるのではなく、家にある食材を使い、手間をかけすぎず、丁寧につくる。
その姿勢そのものが、暮らしを大切にする心を表しているようにも感じられます。

現代の暮らしの中では、行事食だからと、すべて準備するのは難しいと感じる方も多いと思います。

そんな中で、

  • 小豆を使った一品を添える
  • 胃腸にやさしい汁物を用意する

これだけでも、小正月の意味は十分に受け継がれます。

「意味を知って、無理なく取り入れる」―――
それが、今の台所に合った小正月の楽しみ方で、よいのではないかと思います。


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おわりに|静かに一年を見つめる、小正月

小正月は、お正月の華やかさが落ち着いたあとに訪れる、とても静かな節目です。

ごちそうで祝う日ではなく、日々の暮らしへ戻っていくために、身体や気持ちをそっと整える日。

その背景には、一年を無事に過ごしたいという、昔の人のささやかな願いが込められてきました。

行事のかたちは変わっても、そこに流れる思いは、今も変わりません。

小正月という行事を知ることが、冬の食卓や暮らしを見つめ直す、小さなきっかけになればうれしいです。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

小正月は、1月の行事食の締めくくりでもあります。
お正月から続く行事食の流れや意味については、こちらの記事でまとめてご紹介しています。

▶︎ 1月の行事食まとめ|お正月から小正月まで🔗


参考元・参考資料

  • 国立歴史民俗博物館|年中行事・小正月に関する民俗資料
  • 農林水産省|和食文化・行事食に関する解説
  • 『日本の年中行事事典』(日本民俗学会 編)

※本記事は、各地に伝わる小正月の行事や行事食を参考資料に基づいて紹介しています。風習や食べ物には地域差があります。

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