―――和ごころ素材図鑑|豆・豆加工品 ――
豆や豆加工品は、昔から日本の食卓を支えてきた、身近で頼もしい存在です。豆腐や油揚げ、厚揚げなど、姿や食感はさまざまでも、どれも大豆の恵みを生かした、和の台所に欠かせない素材ばかり。
和ごころ素材図鑑では、それぞれの成り立ちや特徴、使い分けを丁寧にひもときながら、日々の料理に取り入れやすい形で紹介していきます。
スーパーの油揚げ売り場に立つと、思った以上に種類が多くて、少し迷ってしまうことはありませんか。
薄いもの、厚いもの、手揚げ風、味付き――どれも同じ「油揚げ」だけれど、実はそれぞれ、向いている料理がはっきり違います。
いなり寿司がうまく開かなかったり、煮物の味が中まで染みなかったり。
そんな経験の裏には、油揚げ選びが関係していることも。
この記事では、油揚げの種類と特徴、料理ごとの使い分けを、家庭目線でわかりやすくまとめます。
油揚げって、どんな種類がある?
油揚げは、厚みや作り方によって向いている料理が異なります。
いなり寿司、煮物、刻み用など、それぞれの特徴を知っておくと、油揚げ選びに迷いません。
薄揚げ(寿司揚げ)

特徴
- 薄く、均一な厚み
- 開きやすく、破れにくい
- 煮汁が中まで染みやすい
寿司揚げは、生地が薄く、油揚げ全体の厚みがそろっているのが特徴です。
そのため、半分に開きやすく、煮ても破れにくいので、いなり寿司を作る際に扱いやすい油揚げとされています。
煮汁も中まで行き渡りやすく、ごはんと合わせたときに味のバランスがとりやすいのも魅力です。
スーパーでは「寿司揚げ」や「いなり寿司用」と表示されていることが多く、いなり寿司に最適な油揚げとして定番になっています。
京揚げ・厚めの油揚げ

特徴
- ふっくら厚みがある
- 大豆の風味がしっかり
- 煮崩れしにくい
京揚げなどの厚めの油揚げは、ふっくらとした厚みと大豆の風味が特徴です。
煮崩れしにくく、出汁を含ませる煮物や炊き合わせに向いています。食べごたえがあり、主菜や付け合わせにも使いやすい油揚げです。
ちなみに、京揚げは煮物などだしを含ませる料理向き、栃尾の油揚げは焼いて風味を楽しむ料理向きです。
手揚げ風・生揚げ(厚揚げ)系

特徴
- 表面が香ばしい
- 大豆感が強い
- 食べ応えがある
手揚げ風の油揚げは、表面が香ばしく、油揚げの中でも大豆の味わいをしっかり感じられるのが魅力です。中は油揚げ状で、コクと風味を楽しむ料理に向いています。
一方、生揚げ(厚揚げ)は、豆腐を厚めに切って表面だけを揚げたもので、中は豆腐のままやわらかく、みずみずしい食感が特徴です。油揚げよりも豆腐に近く、主菜として扱われることもあります。
どちらも、焼いて薬味を添えたり、刻んで和え物にしたりと、素材の風味を生かす料理に向いています。
小揚げ・刻み用油揚げ

特徴
- あらかじめ細かく刻まれている
- 下処理の手間が少ない
- 少量使いに便利
小揚げや刻み用油揚げは、あらかじめ細かく切られており、下処理の手間が少ないのが特徴です。
味噌汁や菜飯、和え物など、少量でコクや旨みを加えたい料理に便利な存在です。
味付きいなり揚げ(市販)
特徴
- すでに甘辛く味付け済み
- 手間がかからない
- 味が安定している
味付きいなり揚げは、すでに甘辛く調味されており、手軽に使えるのが魅力です。
下処理や味付けの必要がなく、行事食や忙しい日のいなり寿司作りを、無理なく支えてくれます。
油揚げの種類と使い分け【早見表】
| 種類 | 主な特徴 | 向いている料理 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 寿司揚げ(薄揚げ) | 薄く均一な厚み。開きやすく、味が染みやすい | いなり寿司 | 「寿司揚げ」「いなり寿司用」と表記されていることが多い |
| 味付きいなり揚げ | 甘辛く味付け済み。下処理不要 | いなり寿司 | 行事食や忙しい日に便利。煮汁は軽く絞ると◎ |
| 京揚げ・厚めの油揚げ | ふっくら厚みがあり、大豆の風味が強い | 煮物・炊き合わせ・焼き物 | 出汁を含ませて味わう・焼いて風味を楽しむ |
| 手揚げ風油揚げ | 表面が香ばしく、コクがある | 焼き物・刻み・和え物 | 素材をそのまま生かす料理に |
| 小揚げ・刻み用油揚げ | 細かく刻まれている | 味噌汁・菜飯・和え物 | 風味付け・保存に便利 |

油揚げは「どの料理に使うか」で選ぶのがいちばん。
いなり寿司には薄さを、煮物には厚みを意識すると、仕上がりが安定します。
料理別|油揚げの選び方
油揚げは、どの料理に使うかによって、選ぶ種類や下処理の考え方が変わります。
ここでは、家庭でよく作る料理を中心に、失敗しにくい油揚げ選びの目安を整理します。
いなり寿司

- おすすめ:寿司揚げ(薄揚げ)/味付きいなり揚げ
- 理由:薄くて開きやすく、味が中まで染みやすい
いなり寿司には、生地が薄く均一な寿司揚げが向いています。厚い油揚げは開きにくく、味も入りにくいため、仕上がりを安定させたい場合は避けるのが無難です。
行事の日や手軽に作りたいときは、市販の味付きタイプも便利です。
煮物・炊き合わせ
- おすすめ:京揚げ・生揚げ(厚揚げ)・厚めの油揚げ
- 理由:煮崩れしにくく、出汁を含ませやすい
厚みのある油揚げは、煮ても形が崩れにくく、出汁の旨みを含ませて味わう料理に向いています。
炊き合わせや含め煮など、油揚げそのものを味わう料理で力を発揮します。
味噌汁・汁物
- おすすめ:小揚げ・刻み用油揚げ・薄揚げ
- 理由:少量でコクと風味を加えられる
味噌汁や汁物には、刻み用の油揚げが便利です。
少量でも油揚げのコクが加わり、具材としても使いやすく、下処理の手間も抑えられます。
焼き物・和え物
- おすすめ:手揚げ風・生揚げ系
- 理由:香ばしさと大豆の風味を生かせる
焼いて香ばしさを出したり、刻んで和え物にしたりする場合は、大豆の風味がしっかりした手揚げ風が向いています。油抜きを控えめにすると、風味が残ります。
日常の副菜・少量使い
- おすすめ:小揚げ・刻み用油揚げ・薄揚げ
- 理由:手軽で、使い切りやすい
菜飯や和え物など、「少しだけ油揚げを使いたい」料理には、刻み用タイプが重宝します。冷蔵庫にあると便利な、常備向きの油揚げです。
また、薄揚げを刻んで冷凍保存しておくのもオススメ。
油揚げの下処理、必要?
油揚げは、料理に合わせて下処理を変えるのがおすすめです。
- いなり寿司・煮物
→ 熱湯をかけて油抜き - 焼き物・刻み
→ 軽く油抜き、または省略
いなり寿司・煮物の場合
表面の余分な油を落とし、煮汁や調味料を染み込みやすくするため、熱湯を回しかけて油抜きをします。
油を落とすことで、甘辛い味や出汁の風味が、油揚げ全体になじみやすくなります。
焼き物・刻み用の場合
香ばしさやコクを生かしたい料理では、軽く油抜きをするか、省略しても構いません。油を抜きすぎると、せっかくの風味や旨みが失われてしまうこともあります。

油揚げは、「必ず油抜きするもの」ではなく、どう使いたいかで判断してOK。
油揚げを使ったおすすめレシピ
油揚げは、いなり寿司だけでなく、煮物や汁物、和え物など、さまざまな料理で活躍します。ここでは、油揚げの種類や特徴を生かしたレシピを紹介します。
いなり寿司用のお揚げ
小松菜と油揚げの含め煮
小松菜のほろ苦さと、油揚げのコクを合わせた、だしの風味がやさしく広がる定番の含め煮です。
白菜と豚肉と油揚げの煮物
白菜の甘みと豚肉の旨みに、油揚げのコクを重ねた、大きく切って味わう、やさしい和の煮物です。
わさび菜と油揚げのさっと炒め
わさび菜のさわやかな香りと、油揚げのコクを合わせた、火を通しすぎず仕上げる簡単副菜です。
おわりに|油揚げは、料理にそっと寄り添う存在
油揚げは、目立つ存在ではありませんが、ひとつ加わるだけで、料理にやさしいコクを添えてくれます。
いなり寿司や煮物、味噌汁、和え物――気づけば、日々の食卓のあちこちで活躍している素材です。
選び方や下処理を少し意識するだけで、いつもの料理が、どこか落ち着いた味わいに。和ごころごはん帖のレシピでも、油揚げはたびたび登場します。
これからも、料理にそっと寄り添う存在として、油揚げを上手に取り入れてみてくださいね。
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▶🔗2月の行事食【初午】について
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参考元
- 農林水産省|和食文化と大豆加工品について
- 白ごはん.com|いなり寿司・油揚げの基本的な扱い方
- NHK きょうの料理|油揚げを使った家庭料理・下処理の考え方
※この記事は、上記の公開情報を参考にしつつ、和ごころごはん帖としての家庭目線・調理経験をもとに構成しています。
