~和ごころ素材図鑑~
このシリーズでは、季節ごとの食材をていねいに紹介しています。
野菜や魚、乾物やお肉など、和食に寄り添う素材たちの魅力を知って、台所でのひとときをもっと楽しく。

夏の光が強さを増し、空気が少し重たく感じられる頃。
体は暑さに負けまいとがんばりますが、ふとした瞬間に食欲が落ちたり、疲れが長引いたりしますよね。

そんな季節に寄り添ってくれる夏ならではの食材、そのひとつが「モロヘイヤ」です。
アラビア語で「王家の野菜」を意味するその名のとおり、古くから人々の健康を支えてきた頼もしい存在です。

ぬめりのあるスルリとした喉ごしと、鮮やかな緑が、疲れた夏の体にじんわりと染み入る…そんな気がします。

今回は、モロヘイヤの旬や栄養、選び方、調理のコツ、そして和食にぴったりのレシピをご紹介しますね。


モロヘイヤってどんな野菜?

モロヘイヤの名は、アラビア語の「ムルキーヤ(Mulukhiya)」が語源で、「王家のもの」という意味。古代エジプトの王が病に倒れた際、この葉を煮たスープで快復したという逸話が残っています。
中東やアフリカ北部では今も日常的に食べられ、特にエジプト料理の定番スープは有名です。

日本には昭和50年代後半に紹介され、当初は珍しい外国野菜として扱われていましたが、その高い栄養価夏の暑さに強い性質から、徐々に全国で栽培されるようになりました。

日本での旬は6月から9月頃。特に真夏の7月〜8月に最盛期を迎えます。

高温と日照を好むため、夏場は葉が肉厚で香りも濃く、粘りもしっかりしています。地域によっては初秋まで収穫されることもあり、直売所や家庭菜園では長く楽しめます。

現在では群馬・岐阜・東京など各地で生産され、夏の直売所やスーパーでよく見かける野菜となりましたね。


栄養の宝庫と呼ばれる理由

モロヘイヤが“王の野菜”と呼ばれるのはなぜ?
その名にふさわしい栄養の豊かさがこちら♪

モロヘイヤは、緑黄色野菜の中でもトップクラスの栄養含有量を誇ります。

  • β-カロテン:100gあたり約10,000μg。ほうれん草の2倍以上。抗酸化作用が強く、皮膚や粘膜を健康に保ちます。
  • カルシウム:100gあたり約260mgで、骨や歯の健康維持に有効。小魚より多い含有量です。
  • カリウム:100gあたり約530mg。むくみや高血圧予防に役立ちます。
  • ビタミン類:C、E、K、B群、葉酸、パントテン酸、ビオチンなど多彩。
  • 食物繊維(ペクチン・マンナン):腸内環境改善、血糖値やコレステロールの上昇抑制、胃粘膜の保護に効果的。

特に注目したいのがぬめり成分。これは水溶性食物繊維の一種で、喉ごしを良くし、食欲がないときでもスルッと食べられるのが魅力です。


安全においしく食べるために

安心して味わうための下処理や注意点です。少し意識しておくことで、モロヘイヤの味も栄養もしっかりキープすることができます。

モロヘイヤは葉と柔らかい茎を食用としますが、種や莢には強心作用のある成分が含まれるため、家庭菜園などで収穫する場合は混入しないよう注意が必要です。
市販品は食用部分だけが出荷されているため安心です。

  • 茎は硬い部分を落とし、葉と柔らかい茎だけを使う。
  • 茹で時間は30秒〜1分程度。色と栄養を損なわないよう短時間で。
  • 茹でたらすぐに冷水にとり、色止めとぬめりの安定化を。

新鮮なものを選ぶコツ

  • 葉の緑色が濃く、艶があるもの。
  • 茎がみずみずしく、切り口が黒ずんでいないもの。
  • 葉がしおれていないもの。

保存方法

モロヘイヤは鮮度が落ちやすいため、買ったらできるだけ早く使い切るのが理想です。

冷蔵保存
湿らせたキッチンペーパーに包み、ポリ袋に入れて野菜室へ(2〜3日以内)。

冷凍保存
下茹でして水気を絞り、一食分ずつラップに包んで保存。解凍は自然解凍か、汁物へ直接投入。お味噌汁の具にとっても便利ですよ。


和食との相性と調理のコツ

モロヘイヤはクセが少なく、ほうれん草や小松菜のように幅広く使えるのが魅力です。特に和食では、ぬめりが食材や調味料を優しく包み込み、汁物・和え物・あんかけ料理にぴったりです。

調理のヒント

  • と組み合わせてβ-カロテンの吸収率アップ(胡麻油、オリーブ油など)。
  • 柑橘と合わせると、さっぱり感が増して夏に最適。
  • 他のねばねば食材(納豆、山芋、おくらなど)との相性抜群。

モロヘイヤを味わう和ごころレシピ3選

それでは、旬をおいしくいただく、やさしい和食レシピをご紹介しますね。

シャキシャキの長芋と、モロヘイヤのぬめりが絶妙。冷やして食べると夏の小鉢にぴったりです。

モロヘイヤと長芋のとろみ和え レシピ

材料(2人分)
モロヘイヤ…1束
長芋…150g
しょうゆ…小さじ2
だし汁…大さじ2
わさび…少々

作り方

  1. モロヘイヤは葉を摘み、さっと茹でて刻む。
  2. 長芋は短冊切りに。
  3. だし汁としょうゆを混ぜ、モロヘイヤ・長芋と和える。
  4. 器に盛り、わさびを添える。

\写真付きの詳しいレシピはこちらから/

ごまの香りと豆腐のやさしさで、涼やかな夏の副菜。

モロヘイヤと豆腐の冷やし白和え

材料(2人分)
モロヘイヤ…1/2束
木綿豆腐…150g
白ごま…大さじ1
砂糖…小さじ1
みそ…小さじ2

作り方

  1. 豆腐は軽く水切り。
  2. モロヘイヤは茹でて刻む。
  3. すり鉢でごまをすり、砂糖・みそ・豆腐を加えてなめらかに。
  4. モロヘイヤを和えて盛る。

だしの香りと生姜の風味で、どこかほっとする和の味わいです。

モロヘイヤのしょうがあんかけおひたし

材料(2人分)
モロヘイヤ…1束
だし汁…150ml
薄口しょうゆ…小さじ2
みりん…小さじ1
片栗粉…小さじ1(水溶き)
おろし生姜…小さじ1

作り方

  1. モロヘイヤは茹でて刻む。
  2. だし汁・しょうゆ・みりんを煮立て、水溶き片栗粉でとろみをつける。
  3. 火を止めて生姜を加え、モロヘイヤにかける。

ミニコラム|ぬめりと健康の関係

モロヘイヤのぬめりは、水溶性食物繊維(ペクチンやムチン様成分)によるものです。これらは腸内の善玉菌を増やし、血糖値の上昇を穏やかにする働きがあります。また、胃の粘膜を保護する作用もあり、胃の弱い方や夏バテ時の食事におすすめです。


おわりに|夏を支える緑の力

栄養たっぷりのモロヘイヤは、夏のからだを支えてくれる頼もしい存在。
ぬめりのやさしい喉ごしと、やわらかな香りは、食欲のないときもスルリと食べられるのが嬉しいですね。

冷たい和え物で涼やかに、あんかけでほっとひと息。
そんな一皿が食卓に並べば、きっと夏の日々が少し軽やかに感じられるはず♪

この季節ならではの恵みを、どうぞおいしく、やさしく味わってみてください。


参考文献

  1. 農林水産省「モロヘイヤ」
  2. 農畜産業振興機構(alic)「モロヘイヤの栄養と利用」
  3. カゴメVEGEDAY「モロヘイヤの旬とおいしい食べ方」
  4. わかさ生活「モロヘイヤの効能」
  5. フードリンク 食材事典「モロヘイヤ」
  6. 農研機構「野菜の栄養成分表」

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