~和ごはん歳時記~
季節がひとつ動くたびに、台所にも小さな変化が訪れます。
昔から受け継がれてきた行事や、その日に食べたい和のおかずたち——そんな“季節のしるし”を、日々のごはんといっしょに楽しんでみませんか。
「和ごはん歳時記」では、その月らしい習わしや、心ほっとする和のごはんをやさしくお届けします。季節の台所に、そっと寄り添うことができますように。
お正月のにぎわいが少し落ち着き、日常へと戻りはじめる頃。その節目に行われるのが 鏡開き です。
鏡開きは、年神様をお迎えし、祈りを託してきた鏡餅をいただくことで、新しい一年を本格的に歩み出すための区切りでもあります。
この記事では、鏡開きの意味・由来・日にちの違い・なぜ割るのか・餅の食べ方まで、わかりやすく、台所目線で解説していきます。
鏡開きとは?正月の締めくくりの行事

鏡開きとは、正月に供えていた鏡餅を下げ、割っていただく行事のこと。
鏡餅には、正月のあいだ 年神様が宿る と考えられてきました。
鏡開きは、
- 年神様をお送りする
- 鏡餅に宿った力を分けていただく
- 正月を終え、日常へ戻る合図
という意味を持つ行事です。
「食べる」という行為も、単なる消費ではなく、力をいただく という考え方に基づいています。
鏡餅の形や二重に重ねる意味・由来はこちらの記事で詳しく紹介しています。
▶鏡餅が丸い理由って?🔗
鏡開きはいつ?地域で日にちが違う理由
鏡開きの日は、地域によって異なります。
- 関東:1月11日
- 関西:1月15日 または 20日(地域差あり)
違いは、松の内(まつのうち) の期間の違いによるものです。
江戸時代、関東では松の内を 1月7日まで とし、その後の11日に鏡開きを行うようになりました。
一方、関西では松の内を 1月15日まで とする風習が残り、鏡開きも15日、あるいは20日に行う地域があります。
なぜ「切らずに割る」の?

鏡開きでは、包丁を使わず、割る・砕く という方法が基本とされています。その理由は、言葉と縁起にあります。
- 「切る」は切腹を連想させるため忌まれた
- 「開く」は、運が開ける・物事が開くという縁起の良い言葉
- 鏡餅は神聖なものなので、刃物を向けない
そのため、木槌で割ったり、手で砕いたりしていただきます。
固くなった鏡餅の扱い方
鏡開きは「酒樽」を割る行事にも使われる

「鏡開き」という言葉は、お正月の鏡餅だけでなく、酒樽を割る行事にも使われています。
結婚式や式典、開店祝いなどで行われる酒樽の鏡開きは、聞いたことがある方も多いかもしれません。
酒樽のふたが、まさしく「鏡」と呼ばれています。これを木槌で割って開くことから、鏡開きと呼ばれています。
酒樽の鏡開きに込められた意味
酒樽の鏡開きにも、鏡餅と共通する考え方があります。
- 「割る」ではなく「開く」
→ 運を開く、道を開くという縁起 - 刃物を使わない
→ 争いごとを避け、和を大切にする - 中身を分け合う
→ 喜びや福を皆で分かち合う
ここでも、「切る」という言葉や行為は避けられ、和やかに、前向きに始めるという意味が重ねられています。
鏡餅と酒樽、共通する「鏡開き」の心
鏡餅の鏡開きも、酒樽の鏡開きも、本質は同じです。
- 節目に行う
- 神聖なものに宿った力をいただく
- 皆で分かち合い、新しい始まりを祝う
つまり鏡開きとは、「区切り」と「始まり」を同時に表す、日本らしい所作。お餅であっても、お酒であっても、その根底にあるのは、和を尊び、幸せを願う心です。
鏡開きのお餅、どう食べる?
鏡開きで割ったお餅は、火を通してからいただきます。
これは、神聖なお供え物であった鏡餅を、丁寧に扱い、体に取り入れるという意味合いから。
地域や家庭によって食べ方はさまざまですが、いずれも「正月の名残を味わいながら、日常へ戻っていく」そんな節目にふさわしい料理です。
おしるこ・ぜんざい

鏡開きでもっとも定番の食べ方ですね。
小豆の甘みと温かさで、正月明けの体をゆっくり整える一杯です。関東ではおしるこ、関西ではぜんざいと呼び分けられることも多く、地域性が表れます。
おしるこ作りの基本となる、茹で小豆のレシピはこちら。
▶ふっくら仕上がる♪基本の茹で小豆レシピ🔗
鏡開きに割ったお餅を使った、おしるこ・ぜんざいの作り方をまとめています。
▶簡単♪お汁粉・ぜんざいの作り方🔗
雑煮
正月料理の締めとして、鏡開きにもう一度いただく雑煮。
具材や味付けはそのままに、餅だけを鏡餅に替える家庭もあります。正月の余韻を残しつつ、一区切りを感じられる食べ方です。
揚げ餅・焼き餅
甘いものが苦手な方や、保存性を重視する場合に向いています。
小さく割って揚げたり焼いたりすることで、香ばしさが増し、おやつや軽食としても楽しめます。
かきもち

割った鏡餅を風通しのよい場所でしっかり乾燥させてから揚げる、昔ながらの食べ方。
時間はかかりますが、その分、保存性が高く、少しずつ楽しめるのが特徴です。
カリッと揚がったかきもちは、噛むほどに餅の旨みが広がり、冬の手仕事の延長のような味わい。地域によっては、鏡開きのあとに作る定番として親しまれてきました。
おわりに|鏡開きは「ひと区切りの行事」
鏡開きは、華やかな正月を閉じ、日常へと戻るための静かな区切りの行事です。
鏡餅を割り、火を通し、いただく―――。
その一連の所作には、年のはじまりにいただいた恵みを、感謝とともに暮らしへ戻していく意味が込められています。
美味しいおしるこを家族で囲みながら、一年を元気に過ごせるように願う。
昔ながらの作法や意味を知ることは大切ですが、ぜひ、今の住まいや家族のかたちに合わせて、無理のない形で続けていただけたらといいのではと思います。
少し肩の力を抜くことで、昔からの大切な習わしは、無理なく、長く続いていくものかもしれません。
鏡開きをはじめ、七草粥や正月行事など、1月の行事食とその意味をまとめてご紹介しています。
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