~和ごころ素材図鑑~
季節の移ろいとともに、旬を迎える日本の食材たち。
そのひとつひとつには、自然の恵みと、昔から受け継がれてきた知恵が息づいています。
「和ごころ素材図鑑」では、そんな和の素材を、旬・産地・調理法・行事との関わりなど、暮らしに寄り添う目線でご紹介します。
ピリッと小気味よい辛みと、ほろ苦さが特徴のからし菜は、冬から春にかけて食卓に爽やかな刺激を添える和の葉野菜です。
一口に「からし菜」といっても、しっかりと辛い“葉からし菜(一般的なからし菜)”、やわらかな辛みの“サラダからし菜(緑葉・赤葉)”など、種類によって食感も香りも大きく違います。
どれも同じ“からし菜の仲間”ですが、それぞれの使い方を知ると料理の幅がぐっと広がります。
この記事では、種類ごとの特徴と美味しい食べ方、そしておすすめレシピをわかりやすくご紹介します。
からし菜とは——和の“辛味”を楽しむ葉野菜
からし菜のルーツ
からし菜(カラシナ)はアブラナ科の野菜で、古くから日本各地で栽培されてきた伝統野菜です。
その辛みの正体は、アリルイソチオシアネートという大根やわさびと同じ辛味成分。
葉を刻んだときの爽やかな香りは、この成分が生み出すものです。
冬〜春が食べごろ
からし菜は寒さに強く、むしろ冷え込むことで辛みと香りが増します。もっとも美味しいのは、露地ものが出回る冬〜春先。
春の訪れを感じさせる苦味や香りもあり、季節の移ろいを小さな葉から感じられる野菜です。
種類と特徴|料理でどう使い分ける?
からし菜には性質の異なるタイプがいくつかあります。
① 葉からし菜

最も“からし菜らしい”辛みを持つ基本のタイプ。
茎が太く、葉は厚みがあり、噛むほどにピリッと刺激が広がります。
◆ 向いている料理
- 漬物(からし菜漬け)
- おひたし
- 炒め物
- 浅漬け
- 佃煮
生のままだと辛みが強すぎるため、加熱か漬けるのが基本です。
◆ 特徴まとめ
- 辛み強め
- 加熱で風味がやわらぎ、旨みに変わる
- 食感はしっかり
② サラダからし菜(緑葉)
生で食べるために選抜されたタイプ。
葉が薄くやわらかく、辛みは爽やかで食べやすいのが特徴です。
◆ 向いている料理
- サラダ
- 和え物
- 味噌汁の仕上げ
- ナムル風
包丁よりも手でちぎると辛みがしっかり立つのもポイント。
◆ 特徴まとめ
- 辛み穏やか
- 生食OK
- 切れ込みの深いフリル状の葉が多い
③ 赤葉タイプ(レッドマスタード系)

産直市場やサラダミックスで人気の高いタイプ。
赤紫〜赤茶色の葉が特徴で、見た目が美しく、ほろ苦さと軽い辛みがあります。
◆ 向いている料理
- サラダ
- 和え物
- 肉料理の付け合わせ
- 料理のアクセントに
赤いからし菜は、見た目よりも辛みが穏やかで、爽やかな風味が魅力です。
④ 高菜
高菜は「からし菜の一種」ですが、独自の伝統を持つ野菜。
葉が大きく肉厚で、高菜漬け・油炒めなど地域食に特化しています。
⑤ わさび菜
からし菜の仲間で、縮れたフリル状の葉が美しい野菜。
辛みは控えめで、生食に向きます。
👇「わさび菜」に関して、詳しくはこちらの記事へ
ミニコラム一般的なからし菜とサラダからし菜の違い
からし菜の旬と選び方
寒さが深まるほど、からし菜は香りを蓄えます。冬から早春の旬に合わせて、選び方のコツも確認しておきましょう。
旬
- 葉からし菜:冬〜春
- サラダからし菜:周年流通(冬が香り高い)
- 赤葉:寒い時期ほど色が濃く香りがよい
選び方
からし菜を選ぶときは、まず葉先までしゃきっと張りがあるかを確認しましょう。葉が元気なものほど、辛みや香りが生きています。
茎は太すぎず、みずみずしいものが新鮮な証。
赤葉タイプの場合は、色が濁らず鮮やかであることが質のよさにつながります。
また、切り口が乾いていないものを選ぶと、収穫が新しく、風味のよい一束に出会えます。
栄養と健康効果
からし菜は緑黄色野菜で、ビタミンA・C・E、食物繊維が豊富です。
特筆すべきは、アリルイソチオシアネート(辛味成分)による抗菌性と消化促進作用。
生で食べるサラダからし菜は特に、成分をそのまま取り入れることができます。
下処理と調理のコツ(種類別)
種類によって扱い方が変わるからし菜。辛みや食感を生かすための下処理と調理のポイントをまとめました。
葉からし菜(一般的)
葉からし菜は辛みがしっかりしているため、生食よりも加熱したり漬けたりする方法が向いています。茹でると辛みがやわらぎ、ほろ苦さが旨みに変わるのが特徴です。炒め物にすると香りが立ち、からし菜らしい風味をしっかり味わえます。
ポイント
- 加熱・漬け込み向き
- 茹でると辛みがまろやかに
- 炒めると香りがよく立つ
サラダからし菜(緑葉)
サラダ向けのからし菜は葉がやわらかく、基本的には洗って水気を切るだけで使えます。辛みをしっかり出したいときは手でちぎると香りが立ち、逆に辛みをおさえたい場合は少量の塩をふって5分ほど置くと食べやすくなります。生食の自由度が高く、さっと加熱してもおいしく仕上がります。
ポイント
- 生でそのまま使いやすい
- 手でちぎると辛みが立つ
- 塩で軽くもむと辛みがやわらぐ
赤葉(レッドマスタード)
赤葉タイプは辛みよりも香りとほろ苦さが特徴で、見た目も美しく、サラダのアクセントに最適です。ツナや鶏肉、卵など旨みのある食材と合わせると調和がよく、ドレッシングは酸味を控えめにすると野菜そのものの香りが生きます。
ポイント
- 彩りが良く、サラダ向き
- 旨みのある食材と相性がよい
- 酸味ひかえめの味付けが合う
種類別おすすめレシピ
からし菜は種類ごとに食感や辛みが異なるため、相性のよい調理法も変わってきます。ここでは、それぞれの特徴をいかしたおすすめレシピを4品ご紹介します。
① 葉からし菜のさっと炒め(加熱向け)
辛みの強い葉からし菜を、油揚げの旨みと合わせてやさしく仕上げる一品。火を入れることで辛みがほどけ、食べやすくなります。
② サラダからし菜の和風サラダ
生で楽しめるサラダからし菜の軽やかな辛みを、シンプルな和風ドレッシングで引き立てた一皿。副菜にも主菜のつけ合わせにも使える万能サラダです。
③ 赤葉サラダからし菜と油揚げのサラダ
赤葉ならではのほろ苦さと香りが、こんがり焼いた油揚げのコクと相性ぴったり。見た目も華やかで、食卓を明るくしてくれる一皿です。
④ サラダからし菜の味噌汁
味噌汁の仕上げにさっと加えるだけで、からし菜の爽やかな香りがふわりと広がる一杯。朝食や軽い食事にもぴったりです。
保存方法
からし菜は種類によって葉の厚さや水分量が異なるため、最適な保存方法も少し変わってきます。特徴に合わせて正しく扱うことで、辛みや香りをより長く楽しむことができます。
葉からし菜の保存方法
葉からし菜は比較的しっかりした葉質を持っているので、保存性が高い野菜です。水分が抜けてきたものは、漬物にすれば風味よく長く楽しむことができますよ。
◆ポイント
- 湿らせたペーパーで包み、ポリ袋へ
- 冷蔵で約5日保存可能
- 使い切れない分は漬物にすると長持ち
サラダからし菜(緑・赤)の保存方法
サラダ向けのからし菜は葉がやわらかく、乾燥に弱いのが特徴です。購入したら早めに使い切るのが基本。葉が薄いので、冷凍には不向きです。
◆ポイント
- 乾燥しないよう湿らせたペーパーで包む
- 3〜4日以内に使い切る
- 冷凍不可(食感・香りが損なわれる)
おわりに|からし菜で広がる、冬の台所
冬のからし菜は、辛みと香りがひときわ冴える季節の味。種類によって楽しみ方が変わるからこそ、料理するたびに新しい発見があります。
今日の気分に寄り添う一束を選んで、じんわり感じる辛みと香りを楽しんでみてください。
参考元
- 農林水産省|野菜の分類と特徴
- 種苗会社各社|からし菜・マスタードグリーン商品資料
- 野菜ソムリエ協会|辛味野菜の基礎知識
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