~和ごころ素材図鑑~
このシリーズでは、季節ごとの食材をていねいに紹介しています。
野菜や魚、乾物やお肉など、和食に寄り添う素材たちの魅力を知って、台所でのひとときをもっと楽しく。

夏から秋にかけて出回る、ちょっと珍しい野菜「金時草(きんじそう)」
葉の表は深い緑色、裏は鮮やかな紫色をしていて、茹でると赤紫の汁が出てくるユニークな姿が特徴です。

地域によって呼び名もさまざまで、昔から暮らしに寄り添ってきた伝統野菜のひとつでもあります。
今日は、そんな金時草の魅力をまるごとご紹介します。


金時草とは?

金時草は、石川県金沢市の「加賀野菜」としても知られる伝統野菜です。
葉の裏が紫色でとても美しく、茹でるとほんのりぬめりが出てきます。クセが少なく食べやすいため、おひたしや和え物にすると季節の彩りを手軽に楽しめます。

金時草には、土地ごとにいろんな呼び名があります。旅先で見つけると「これも金時草だったんだ!」と発見があって楽しいですよ。

  • 加賀野菜(石川県) … 「金時草(きんじそう)」
  • 熊本県 … 「水前寺菜(すいぜんじな)」
  • 沖縄・九州 … 「はんだま」
  • 愛知県 … 「式部草」

同じ野菜なのに名前が違うのは、昔から各地の暮らしの中で親しまれてきた証でもあります。

金時草の出回る季節は、初夏から秋(6月〜10月頃)
特に葉がやわらかく、色鮮やかなのは梅雨明けから夏にかけての時期です。

  • 6〜7月 … 葉が柔らかくて食べやすい
  • 8〜9月 … 紫色が濃く、栄養も豊富に
  • 10月頃まで … 直売所や家庭菜園では晩秋まで収穫できることも

石川県の加賀野菜としては夏の代表格で、夏バテ予防の食材としても昔から親しまれてきました。
スーパーではあまり多くは出回らないので、見かけたら旬の味覚としてぜひ手に取ってみてくださいね。

金時草は、彩りだけでなく体にもうれしい栄養がぎゅっと詰まっています。

  • アントシアニン … 紫色の成分。抗酸化作用があり、眼精疲労や老化防止に。
  • ぬめり成分 … 整腸作用があり、夏の疲れを和らげてくれる。
  • ビタミンA・C … 免疫力アップ、肌の健康維持に。
  • 鉄分・カルシウム … 貧血予防や骨の健康に。

夏バテしやすい時期にぴったりで、女性や成長期のお子さんにもおすすめです。


郷土食としての金時草

石川県では加賀野菜のひとつとして、昔から茶席料理や精進料理に使われてきました。
また、沖縄では「不老長寿の葉」と呼ばれ、健康を願う食文化の中で親しまれてきた歴史があります。
地域によって呼び名も食べ方も違うのは、金時草がいかに人々の暮らしに根づいてきたかを物語っていますね。


調理と保存のコツ

金時草はちょっとした扱い方で、彩りや風味をきれいに保てます。保存の仕方を知っておくと、旬の時期にまとめて買ったときも安心です。

  • 茹で時間は短く
    20〜30秒ほどで十分。長く茹でると紫色が濁り、ぬめりも出すぎてしまいます。
  • 冷水にとる
    茹でたらすぐ冷水にさらすことで、色鮮やかに仕上がります。
  • 茎と葉は分けて使う
    茎は少し硬めなので、葉はおひたしや和え物に、茎は天ぷらや炒め物にすると無駄なく美味しくいただけます。
  • 酸味との相性に注意
    酢やレモン汁を加えると紫色が抜けやすいので、彩りを楽しみたいときは控えめに。

💡 豆知識|色を活かすコツ
金時草の紫色は「アントシアニン」によるもの。酸性に傾くと色が抜けやすく、逆に弱アルカリ性ではより濃い紫になります。おひたしや和え物では、出汁やしょうゆベースでシンプルに仕上げると、金時草らしい色合いが美しく出ます。

  • 冷蔵保存
    濡らした新聞紙やキッチンペーパーに包み、ポリ袋に入れて冷蔵庫へ。2〜3日で食べきるのがおすすめ。
  • 冷凍保存
    さっと茹でて水気を絞り、小分けにしてラップ+保存袋で冷凍。約1か月保存可能。解凍は自然解凍か、汁物にそのまま加えてOK。
  • 作り置きおかずとして
    おひたしや胡麻和えは、冷蔵で2日程度保存できます。味をしみ込ませることで、翌日も美味しくいただけます。

金時草のおすすめレシピ

金時草はシンプルに食べても、少しアレンジを加えても美味しい野菜です。
ここでは、手軽に作れるおすすめレシピを5点ご紹介します。詳しい工程や写真は、個別レシピ記事でチェックしてくださいね。

シンプルに金時草の風味と色合いを楽しめる定番の一品。副菜にぴったりで、作り置きもできます。

金時草のおひたし

材料(2〜3人分)

  • 金時草 … 1束
  • だし… 150ml
  • 薄口しょうゆ … 大さじ1
  • みりん … 大さじ1
  • 鰹節 … 適量

作り方
さっと茹でて水気を絞り、出汁に浸して鰹節を添える。


詳しいレシピはこちらの記事へ▼

まろやかな豆腐と金時草の風味がよく合い、彩りも美しい一皿。箸休めやおもてなしにもおすすめです。

金時草と豆腐の白和え

材料(2〜3人分)

  • 金時草 … 1/2束
  • 木綿豆腐 … 1/2丁
  • 白ごま … 大さじ2
  • 砂糖 … 小さじ1
  • しょうゆ … 小さじ1

作り方
下茹でした金時草を豆腐とごま衣で和える。

ごまの香ばしさが金時草の爽やかな風味を引き立てる定番レシピ。お弁当のおかずにもぴったりです。

金時草の胡麻和え

材料(2〜3人分)

  • 金時草 … 1束
  • すりごま … 大さじ2
  • しょうゆ … 大さじ1/2
  • 砂糖 … 大さじ1/2

作り方
茹でて水気を絞った金時草を、ごまダレで和える。

鮮やかな色合いとぬめりが楽しめる味噌汁。シンプルながら体がほっと温まる一杯です。

金時草の味噌汁

材料(2〜3人分)

  • 金時草 … 1/2束
  • 出汁 … 400ml
  • 味噌 … 大さじ2

作り方
出汁に味噌を溶き、茹でた金時草を加える。

葉はサクッと軽く、硬めの茎も香ばしく仕上がります。塩でシンプルに味わうのがおすすめ。

金時草の天ぷら

材料(2〜3人分)

  • 金時草 … 1束(葉と茎)
  • 薄力粉 … 1/2カップ(もしくはてんぷら粉)
  • 冷水 … 1/2カップ
  • 揚げ油 … 適量
  • 塩 … 少々

作り方
葉と茎に衣をつけて揚げ、塩でいただく。


ミニコラム|金時草のちょっと豆知識

金時草を茹でたときに出る「赤紫の汁」、実はポリフェノールの一種「アントシアニン」によるものです。
初めて見ると驚くかもしれませんが、この色こそが金時草らしさ。昔は「体にいい色」とも言われてきました。

また、金時草は丈夫で育てやすく、家庭菜園でも人気があります。
ただし寒さには弱いため、冬の寒い地域では霜よけが必要。夏の家庭菜園に取り入れると、珍しい彩り野菜として楽しめますよ。

おわりに|

金時草は、鮮やかな紫色と栄養たっぷりのパワーで、食卓を楽しく彩ってくれる野菜です。
加賀野菜としての歴史や、沖縄での長寿の食文化に触れると、より一層ありがたみを感じられます。
スーパーや直売所で見かけたら、ぜひ手に取って試してみてくださいね。



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