秋の訪れとともに食卓に並ぶきのこは、日本の秋を象徴する味覚のひとつですね。
香りやうま味、食感の違いを生かせば、どんな料理にも寄り添ってくれる頼もしい存在。炊き込みご飯やお味噌汁、煮物や和え物、天ぷら……と、和食のどんな場面でも活躍します。
今回は、そんな「きのこ」を和食の視点から掘り下げてご紹介します。
種類や旬、うま味のひみつ、組み合わせの楽しみ方まで、森の恵みを味わう手がかりに。
きのこの旬と日本の食文化

きのこが美味しい季節
きのこがいちばん美味しい季節は、やはり秋。
天然ものは9〜11月ごろにかけて山に姿を現します。
人工栽培が進んだ現代では一年中手に入りますが、秋のきのこには独特の香りと深い味わいが宿ります。
秋の食卓に並ぶきのこは、古くから日本人の暮らしとともにあった“山の幸”です。
古くからの日本人ときのこの関わり
きのこは古代から日本人に親しまれてきた食材です。
『日本書紀』や『延喜式』には、すでにきのこを食した記録が見られ、平安の頃には貴族たちの食卓にも供されていました。
江戸時代には庶民の間でも「きのこ狩り」が行楽として楽しまれるようになり、山の恵みを採って食べる風習は、今も地方の秋の風物詩として受け継がれています。
信州や東北では、炊き込みご飯やきのこ汁など、山で採れたきのこを使った素朴な郷土料理が数多く残っています。
代表的なきのこの種類と特徴
それぞれの香り・うま味・食感を知ることで、料理の幅がぐっと広がります。
| きのこ名 | 特徴 | 主な使い方 |
|---|---|---|
| しいたけ | 香り高く、だしにも使える万能選手。乾燥しいたけは長期保存も可。 | 炊き込みご飯、煮物、天ぷら、汁物 |
| しめじ | クセがなく、うま味がしっかり。加熱すると香ばしさが増す。 | 炒め物、味噌汁、和え物 |
| えのきだけ | 食感が良く火の通りが早い。シャキシャキ感が魅力。 | 味噌汁、鍋、煮浸し、ナムル |
| 舞茸 | 芳香とコクのあるうま味が特徴。天ぷらにすると香りが引き立つ。 | 炊き込みご飯、汁物、揚げ物 |
| なめこ | とろみとつやがあり、ぬめりが滋味深い。 | 味噌汁、おろし和え、蕎麦 |
| エリンギ | 肉厚で歯ごたえがあり、クセが少ない。 | 焼き物、炒め物、バターしょうゆ炒め |
| 平茸 | 傘が大きく柔らかい。ほどよい香りとコクで汁物にも最適。 | 澄まし汁、煮浸し、炒め物 |
| 松茸 | 香りの王様。秋のごちそうとして格別。 | 土瓶蒸し、すき焼き、炊き込みご飯 |
きのこのうま味のひみつ
きのこの美味しさの正体は、“うま味”成分にあります。
代表的なのは「グアニル酸」「グルタミン酸」「アスパラギン酸」。
特にグアニル酸は乾燥きのこに多く含まれ、昆布のグルタミン酸や、かつお節のイノシン酸と組み合わせることで、うま味の相乗効果が生まれます。
和食が大切にしてきた“だし”の考え方と、きのこのうま味は深く通じています。
汁物や煮物にきのこを加えると、だしの香りと溶け合い、自然な奥行きのある味わいに仕上がります。
選び方と保存のコツ
新鮮なきのこの見分け方
・かさの裏が白く、開きすぎていないもの
・軸がしっかりしていて、乾燥していないもの
・全体にハリとつやがあり、香りが自然なもの
買ったその日が一番の食べごろ。使い切れない場合は早めの保存を。
保存方法
・冷蔵保存:キッチンペーパーで包み、ポリ袋に入れて野菜室へ。3〜5日以内が目安。
・冷凍保存:石づきを落とし、小分けにして冷凍。炒め物や汁物に凍ったまま使えます。
きのこ同士の相性とおすすめの組み合わせ

きのこは「一種類」よりも「数種類を合わせる」ことで、香りとうま味が何倍にも広がります。ここでは、おすすめの組み合わせ例を紹介します。
相性のよい組み合わせ
| 組み合わせ | 特徴 | おすすめ料理 |
|---|---|---|
| しいたけ × しめじ | 香りとうま味のバランスが絶妙 | きのこご飯、炒め物 |
| 舞茸 × えのき | 香ばしさとシャキシャキ食感が調和 | 鍋、汁物 |
| 平茸 × しめじ × エリンギ | 食感の違いで立体的な味わいに | ソテー、煮浸し |
| なめこ × しいたけ | とろみ+香りで滋味深い味わい | 味噌汁、おろし和え |
| 舞茸 × 平茸 | ふたつの“香り系きのこ”が調和し、香ばしく奥行きある味に | 炊き込みご飯、天ぷら、炒め煮 |
きのこ料理のポイント

きのこは、香り・うま味・食感のバランスを生かすことで、ぐっと美味しくなります。
扱い方ひとつで風味が変わる繊細な食材。ここでは、調理の前に知っておきたい基本をまとめています。
下ごしらえの基本
市販されているパック売りのきのこは、基本的には洗う必要はありません。
香りやうま味成分は水に溶けやすく、洗うことでそれらが流れ出てしまうためです。
- 原木しいたけや天然きのこ:土や木屑、葉などががついている場合があるので、こちらはしっかり洗い流すことが必要です。
- パック入りの栽培きのこ:清潔に育てられているため、基本的に洗う必要はありません。汚れが気になるときは、キッチンペーパーや乾いた布で軽く拭き取る程度に。
- なめこ・山伏茸など粘り系:ぬめりのもとが気になる場合は、さっと水洗いしてざるに上げ、水気をよく切って使います。水にくぐらせてぬめりを整えると、味がやさしく仕上がります。
火加減のコツ
きのこは炒めすぎ・煮すぎに注意。
加熱しすぎると水分が出すぎて香りが逃げ、食感もやわらかくなりすぎます。
炒めるときは中火〜強火で手早く、煮るときは仕上げに加えてさっと火を通すのがコツです。
また、炒める際に塩を早く加えすぎると水分が出やすくなるため、
味付けは火を止める直前、または最後の仕上げに加えると香りが立ちます。

きのこに焼き色がつくくらい炒めたい場合、きのこをフライパンの上に広げてたら、焼き色が付くまでなるべく動かさないのがポイントです。
だしとの相性を生かす
きのこは自らも“だしを出す”食材。
かつお節や昆布のだしと合わせると、うま味が重なり味に奥行きが生まれます。
たとえば、炊き込みご飯では“きのこを炒めてから炊く”、
汁物では、必要以上加熱して、きのこ自体の旨味を外に出し過ぎない、
このような、うま味を逃さない加え方を意識すると、風味がぐっと引き立ちます。
香りを仕上げに添える
きのこの香りは熱に弱く、調理の最後にふわっと立ち上がる瞬間が一番の見どころ。
火を止める直前に鍋のふたを開け、ふわりと広がる香りを感じながら仕上げる――それも“和の調理”の楽しみ方です。
きのこの料理いろいろ(レシピリンク集)
きのこの澄まし汁
澄んだだしにきのこの香りがふわりと立つ、秋の和の一椀。調味のコツ・きのこの組み合わせも丁寧に解説しています。
さつまいもときのこの白和え
ほっくり甘いさつまいもと香ばしいきのこを、豆腐の衣で包んだ秋の副菜。和のまろやかさと季節の香りが楽しめます。
きのことさつまいもの炊き込みご飯
さつまいもの甘みときのこのうま味を土鍋で炊き込んだ秋らしいごはんです。
菊花ときのこの和え物
菊花ときのこの組み合わせで、彩りと香りの調和を楽しむ秋の和え物。白だしの軽やかな味わいが特徴です。
地域ときのこの食文化
山々に囲まれた日本では、地域ごとに独自のきのこ文化が根づいています。
とくに信州、東北、北陸などの山間地域では、秋になると家庭や旅館の食卓に「きのこ汁」「きのこそば」「きのこの煮浸し」などが並びます。
おわりに|森の恵みをいただくということ
きのこは、決して派手な存在ではありませんが、きのこを加えると料理が深まり、香りがふっと立つ。
その控えめな存在感こそ、和食の美しさと通じるものがあります。
森の恵みをいただくという感謝の気持ちを込めて、旬のきのこを一皿に取り入れてみてはいかがでしょうか。
香り、うま味、食感の違いを感じながら、秋の食卓をしっとりと彩る「和のきのこ時間」を楽しんでください。
\こちらもオススメ♪秋の食材/
▼
\だしについて詳しく知る/
▼
\しょうゆで味わう秋のごはんはこちら/
▼
