~和ごころ素材図鑑~
このシリーズでは、季節ごとの食材をていねいに紹介しています。
野菜や魚、乾物やお肉など、和食に寄り添う素材たちの魅力を知って、台所でのひとときをもっと楽しく。

夏が近づくと、八百屋さんや直売所で目を引くのが、赤い根元に葉がついた「葉生姜」。「どうやって食べるの?」「辛いのかな?」と、ちょっと手に取るのをためらう方もいるかもしれません。

けれど実は、生でそのまま食べることもできて、手軽に旬を楽しむことができる食材なんです!

爽やかな香りとやさしい辛味は、夏の暑さで食欲のないときも◎。

この記事では、葉生姜の旬や栄養、食べ方のコツ、そしておすすめレシピまでたっぷりご紹介しています。


葉生姜とは

葉生姜(はしょうが)は、生姜を若採りしたものに葉をつけたまま出荷した食材です

根元が小さく赤みを帯び、爽やかな香りとやさしい辛味が特徴。一般的に料理で使う「ひね生姜(根生姜)」に比べると辛味がマイルドで、初夏から夏にかけて旬を迎えます。

居酒屋で「葉生姜の味噌添え」として出てくるのが代表的な食べ方。薬味としてだけでなく、旬を味わう“主役”にもなれる食材です。

葉生姜は初夏から盛夏にかけてが旬です。季節感をたっぷり楽しめる食材として親しまれています。

  • 旬の時期5月〜8月頃に多く出回る
  • 主な産地:高知・千葉・静岡などが代表的
  • 地域の身近さ:各地の直売所でも初夏に農家さんが出すことがあり、鮮度の高いものが手に入る。

ミニコラム|『谷中しょうが』の由来

葉生姜の代表的な呼び名として有名なのが「谷中しょうが」。東京・台東区の谷中地域で盛んに栽培されていたことから、その名がつきました。

江戸時代から明治期にかけては「夏の風物詩」として親しまれ、居酒屋や屋台では味噌を添えて提供されるのが定番。庶民に広く愛されてきた食材です。

現在では東京での栽培は少なくなり、千葉県や高知県などが主な産地となっていますが、今も「葉生姜=谷中しょうが」と呼ばれるほど、その名は全国に浸透しています。

つまり「谷中しょうが」は、葉生姜そのものを指す代名詞的な存在。スーパーなどでこの名前を見かけたら「葉生姜のことなんだ」と思って大丈夫です。

葉生姜は、薬味としてだけでなく、体を整える効能も備えています。辛味や香りの成分が、夏場にうれしい働きをしてくれるのです。

  • 食欲増進:香り成分ジンゲロールが胃腸を刺激して食欲を高める
  • 消化促進:消化を助け、夏バテで食欲が落ちているときにもおすすめ
  • 抗菌作用:生魚の添え物にされるのは、食中毒予防の知恵でもある
  • 体を温める作用:冷房や冷たい飲み物で冷えやすい体を整える効果も期待

👉 薬味という脇役に見えて、実は夏の体調管理に役立つ頼もしい存在です。


食べ方と下処理

「どう調理すればいいの?」と思う方も安心してください。葉生姜は扱いやすく、特別な手間はかかりません。

  • そのまま生で食べられる
    味噌をつけてかじるのが定番。爽やかな辛味をシンプルに楽しめます。
  • 皮はむかなくて大丈夫
    赤い薄皮は見た目も美しく柔らかいのでそのままでOK。泥や汚れがある部分だけ軽くこそげ取ります。
  • 保存方法
    新鮮なうちはラップに包んで冷蔵で2〜3日。香りが落ちやすいので、できるだけ早めに食べ切るのがおすすめです。

難しい下処理がいらないので、買ったその日に気軽に食卓にのせられます


葉生姜を使ったおすすめレシピ3選

香り豊かな葉生姜に甘めの味噌を添えてどうぞ。お酒のお供にぴったりです。

葉生姜の甘味噌田楽|レシピ

材料(2人分)

  • 葉生姜 … 6本
  • 味噌 … 大さじ2
  • みりん … 大さじ1
  • 砂糖 … 小さじ1

作り方

  1. 葉生姜を洗って水気を拭く。根元の薄皮が気になる場合は軽くこそげ取る。
  2. 味噌・みりん・砂糖を小鍋で混ぜ、弱火で煮詰めて甘味噌を作る。
  3. 葉生姜を皿に盛り、味噌を添えていただく。

豚肉の旨みと葉生姜の爽やかさが絶妙に合う一品。ご飯が進みます。

葉生姜と豚肉の味噌炒め|レシピ

材料(2人分)

  • 葉生姜 … 4本(斜め薄切り)
  • 豚こま切れ肉 … 150g
  • 味噌 … 大さじ1
  • しょうゆ … 小さじ1
  • みりん … 小さじ1
  • ごま油 … 小さじ2

作り方

  1. フライパンにごま油を熱し、豚肉を炒める。
  2. 葉生姜を加えて炒め合わせる。
  3. 調味料を加えて全体に絡める。

お寿司や焼き魚の付け合わせに。保存もできる常備菜です。

葉生姜の甘酢漬け(ガリ風)|レシピ

材料(作りやすい分量)

  • 葉生姜 … 6本
  • 酢 … 100ml
  • 砂糖 … 大さじ2
  • 塩 … 小さじ1/2

作り方

  1. 葉生姜をさっと熱湯にくぐらせる。
  2. 酢・砂糖・塩を小鍋で温め、熱いうちに保存容器に注ぐ。
  3. 冷蔵庫で半日以上置くと味がなじむ。

葉生姜の爽やかさと梅の酸味で、豚バラもさっぱりいただける夏向きのおかずです。

豚バラ葉生姜巻き|梅肉しょうがだれ|レシピ

材料(2人分)

  • 葉生姜 … 6本
  • 豚バラ薄切り肉 … 6枚
  • 梅肉(叩いた梅干し) … 大さじ1
  • しょうゆ・みりん … 各小さじ2
  • おろし生姜 … 小さじ1

作り方

  1. 葉生姜を豚バラで巻く。
  2. フライパンで転がしながら焼く。
  3. 調味料を合わせ、仕上げに絡める。

👉 酸味がやさしく、後味すっきり。大葉を添えるとさらに爽やか。


アレンジのヒント

今回紹介したレシピのほかにも、葉生姜のおいしい食べ方はまだまだたくさんあります。

  • 天ぷらにする:衣を薄くつけて揚げると、香りがふんわり広がり上品な味わいに
  • 炊き込みご飯に加える:刻んで加えると、さっぱりとした香りがご飯全体に広がる
  • 薬味として使う:冷奴やそうめんに添えれば、夏らしい涼感がプラスされる

加熱調理は辛味がやわらぐので、お子様や辛さが苦手な方にもおすすめですよ。

保存方法

葉生姜は香りや食感が命。できるだけ新鮮なうちに食べたい食材ですが、工夫すれば日持ちもさせられます。保存法を知っておくと、買った後に使い切れないときも無駄になりません。

  • 冷蔵保存:新聞紙やキッチンペーパーで包み、ポリ袋に入れて野菜室へ。2〜3日が目安。
  • 甘酢漬け:酢に漬けておけば1週間〜10日ほど保存可能。常備菜にぴったり。
  • 冷凍保存:香りが飛びやすく食感も変わるため不向き。避けた方が安心です。

豆知識|はじかみは葉生姜でできてる???

焼き魚や天ぷらの添え物としてよく見かける「はじかみ」。赤く染めた細長い生姜を甘酢漬けにしたものを指します。

本来「はじかみ」は古語で山椒を意味し、口が「はじかむ(しびれる)」ことから名付けられました。のちに、生姜の若採りを漬けたものにこの呼び名が転じ、料理文化に定着しました。

  • 主に使われるのは矢生姜(やしょうが)矢生姜は、金時生姜という品種を若採りしたものが多く、根元が鮮やかな紅色をしているのが特徴です。
  • 葉生姜そのものではない:ただし地域や料理店によっては、葉生姜を漬けて「はじかみ風」に仕立てることもあります。

つまり「はじかみ=葉生姜」ではなく、一般的には矢生姜を加工した添え物。葉生姜と混同しやすいですが、また別物と覚えておくと安心です。


おわりに|季節を感じる葉生姜を食卓に

葉生姜は「薬味」以上の魅力を持つ、夏ならではの食材です。
生でも加熱しても楽しめる万能な存在で、見た目も涼やか。テーブルにのせるだけで食卓がぐっと夏らしくなります。

「ちょっと手に取ってみようかな」と思えたら、まずは味噌を添えてシンプルに。慣れてきたら炒め物や甘酢漬けに挑戦してみてください。きっと、夏の定番として毎年楽しみたくなりますよ♪


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