~和ごはん歳時記~
季節がひとつ動くたびに、台所にも小さな変化が訪れます。
昔から受け継がれてきた行事や、その日に食べたい和のおかずたち——そんな“季節のしるし”を、日々のごはんといっしょに楽しんでみませんか。
「和ごはん歳時記」では、その月らしい習わしや、心ほっとする和のごはんをやさしくお届けします。季節の台所に、そっと寄り添うことができますように。
お正月のおせち料理に欠かせない「栗きんとん」。
毎年当たり前のように食卓に並びますが、その色や甘さに、どんな意味が込められているかご存じでしょうか。
実は栗きんとんは、見た目の華やかさだけでなく、名前・色・材料のひとつひとつに縁起の理由がある料理。
今回は、基本の作り方に加えて、知るとちょっと話したくなる豆知識も添えながらご紹介します。
栗きんとんとは?|名前と色に込められた意味

「きんとん」は“金団”——黄金色に託された願い
栗きんとんの「きんとん」は、漢字で書くと金団(きんとん)。
金のかたまり、財宝を意味する言葉で、金運・商売繁盛・豊かさが家に満ちる一年を願って、おせち料理に欠かせない存在となりました。
あの印象的な黄金色は、着色されたものではなく、
・さつまいも
・栗
という、どちらも土の中で育つ食材から生まれる自然の色。
人工的な華やかさではなく、「実り」「蓄え」「積み重ね」を感じさせる色合いだからこそ、新しい年の始まりにふさわしい縁起色として大切にされてきました。
材料と役割|なぜこの組み合わせなのか

実は主役はさつまいも⁈——栗きんとんの“土台”の話
栗きんとんという名前から、「栗が主役の料理」と思われがちですが、実は全体の大部分を占めているのは、さつまいもです。
さつまいもは、昔から
- 土台
- 基盤
- 家を支えるもの
を象徴する食材とされてきました。
一方で、栗は
- 実り
- 成果
- 喜び
を表す存在。
つまり栗きんとんは、
「しっかりとした土台の上に、実りが実を結ぶ」
という、一年の理想的な姿を重ねた料理でもあります。
- 芋=支えるもの
- 栗=実るもの
この組み合わせそのものが、すでに縁起物。
だからこそ、なめらかな芋の土台を丁寧に仕上げることが、栗きんとん作りの要です。
なぜ栗きんとんは甘いのか?|おせち料理と「保存」と「祝い」の関係
甘さは“ごちそう”であり、“願い”でもあった
栗きんとんに限らず、おせち料理には甘い味付けのものが多く見られます。それは偶然ではなく、昔の暮らしと深く結びついた理由があります。
まずひとつは、保存のため。
冷蔵庫のない時代、砂糖やみりんを使った甘い味付けは、料理を日持ちさせるための大切な工夫でした。
特に正月三が日は「火を使わずに過ごす」期間。年神様を迎え、家族がゆっくりと新年を祝うため、事前に作り置きできる料理=おせちが発展していきます。
その中で、甘さは保存性を高める知恵として欠かせない要素でした。
甘さは、特別な日の味
もうひとつの理由は、甘さそのものが“ごちそう”だったということ。
現代のように砂糖が身近でなかった時代、甘い味は日常ではなく、祝いの日だけに許された味でした。
だからこそ、
・正月
・節目
・晴れの日
には、はっきりとした甘さを持つ料理が用意されたといわれます。
栗きんとんのしっかりした甘さは、「贅沢をするため」ではなく、新しい年を祝うための、分かりやすい幸福の象徴。
口に入れた瞬間に「いつもと違う」「今日は特別」と感じられることが、何より大切だったのかもしれませんね。
現代の栗きんとんは、少し軽やかでもいい
昔の価値観をそのまま再現する必要はないと思っています。
保存技術も、食の好みも変わった今、甘さを控えめに仕上げる栗きんとんも、ひとつの正解です。
それでも、「なぜ甘い料理なのか」を知った上で加減するのと、なんとなく砂糖を減らすのとでは、料理への向き合い方が少し変わってきます。

栗きんとんの甘さは、保存の知恵であり、祝いのしるしであり、一年の始まりを喜ぶ味。
その背景を知ると、いつもの一口が、少しだけ特別に感じられる気がしませんか。
レシピ 基本の栗きんとん

材料(作りやすい分量/4人分ほど)
- さつまいも(鳴門金時など粉質のもの)……500g
- 栗の甘露煮……200g
- 栗の甘露煮のシロップ……100〜150ml(甘さで調整)
- 砂糖……大さじ2〜3(お好みで)
- みりん……小さじ1(つや出し・風味付け)
- 塩……ひとつまみ
- くちなしの実……1個(あれば)
下ごしらえ
- さつまいもは皮を厚めにむき、1cm厚の輪切りにする。
- たっぷりの水にさらし(20〜30分)、アクを抜く。
- くちなしの実は半分に割り、だしパックやガーゼに入れる。

作り方
鍋にさつまいもと、あればくちなしの実を入れ、かぶるくらいの水を注ぐ。
中火で火にかけ、竹串がすっと通るまでやわらかく茹でる。

くちなしの実を取り除き、湯を捨てる。
さつまいもは熱いうちに裏ごしし、なめらかな状態にする。


少し手間ですが、この工程が、口当たりと仕上がりの品を左右するので、頑張りましょう!
裏ごししたさつまいもを鍋に戻し、弱火にかける。
栗の甘露煮のシロップを少しずつ加えながら、へらで練る。

砂糖・みりん・塩を加え、全体が均一でなめらかになるまで混ぜる。
甘さは味を見ながら調整する。

最後に栗の甘露煮を加え、形を崩さないようにさっと混ぜる。
全体がなじんだら火を止める。

おいしく仕上げるコツ
1)裏ごしは「熱いうち」に
さつまいもは、冷めるほど粘りが出て重くなり、裏ごしがしにくくなります。
茹で上がったら湯を切り、熱いうちに裏ごしすると、繊維がきれいにほどけて口当たりが格段になめらかに。

裏ごし器がない場合は、マッシャーでつぶしてから目の細かいザルでこすと近い仕上がりになりますよ。
2)甘露煮シロップは「少量ずつ」加える
栗の甘露煮シロップは、一気に入れると、ゆるくなって練り直しに時間がかかり、香りも飛びやすくなります。大さじ1〜2ずつ加え、練ってから次を足すくらいのペースが安心です。
見極めポイント:
木べらで混ぜたときに、鍋底が一瞬見えてから生地が戻るくらいが“ちょうどよい”硬さ。

さつまいもによっても水分量が違うので、少しずつ足しながら様子をみてくださいね。
3)みりんはで照りと香りを出す
みりんは入れすぎると甘さが強くなるだけでなく、加熱が長くなって香りが抜けやすくなります。最後に小さじ1程度を加えると、つやが出て、甘さが丸く整い、後味も上品に。
とくにおせちの口取りとして盛るとき、見た目の“つるん”とした美しさが出ます。
照りを強めたいときは、みりんを入れた後は長く煮詰めず、さっと全体をなじませて火を止めます。
よくある失敗と対策
水っぽくなってしまう
◆ 原因
甘露煮シロップを一度に入れてしまったり、裏ごし後に水分が残ったまま練り始めると、全体がゆるくなりやすくなります。
◆ 対策
シロップは大さじ1〜2ずつ様子を見ながら加え、都度よく練るのが基本です。ゆるくなってしまった場合は、弱火にかけて焦がさないように混ぜながら、余分な水分を飛ばすと落ち着いてきます。
甘くなりすぎる
◆ 原因
砂糖と甘露煮シロップを同時に多く使ったり、みりんを早い段階で加えて煮詰めてしまうことが原因です。
◆ 対策
まずは甘露煮シロップだけで甘さを整え、足りない分を砂糖で補うようにすると失敗しにくくなります。甘くなりすぎたときは、塩をひとつまみ加えることで、味が引き締まり、後味が整います。
ざらついた口当たりになる
◆ 原因
さつまいもが冷めてから裏ごししたり、つぶしが不十分なまま仕上げてしまうと、繊維感が残りやすくなります。
◆ 対策
裏ごしは必ず熱いうちに行い、なめらかな状態を作ることが大切です。裏ごしを省く場合でも、できるだけ細かくつぶし、仕上げにしっかり練ることで口当たりが改善します。
色がくすむ・きれいな黄金色にならない
◆ 原因
さつまいものアク抜きが足りなかったり、火を入れすぎることで色がくすみやすくなります。
◆ 対策
切ったさつまいもは必ず水にさらしてアクを抜きをしましょう。茹でた時に黒く変色した部分は取り除いてから裏ごしすると、くすみを軽減できます。火加減は弱めを意識し、必要以上に加熱しないこともポイントです。
栗が崩れてしまう
◆ 原因
栗を早い段階で加えて強く練ってしまうと、形が崩れやすくなります。
◆ 対策
栗は必ず最後に加え、混ぜるというよりも、全体になじませるイメージでやさしく扱うと、見た目よく仕上がります。
保存の目安
栗きんとんは水分と糖分が多く、比較的保存しやすい料理ですが、清潔に扱うことが日持ちのいちばんのポイントです。
冷蔵保存|3〜4日
清潔な保存容器に入れ、表面をならしてから密閉します。乾燥を防ぐため、表面にラップをぴったり密着させてからフタをすると安心です。
※風味が落ちやすいため、できるだけ早めに食べ切るのがおすすめです。
冷凍保存|2〜3週間
1回分ずつ小分けにし、ラップで包んでから保存袋に入れて冷凍するのがオススメ。
まとめて凍らせるよりも、小分けの方が食感を保ちやすく、使い勝手も良くなります。
解凍は冷蔵庫でゆっくり。急激に温度を上げると水分が出やすく、なめらかさが損なわれることがあります。
※解凍後は再冷凍せず、早めに食べ切ってください。
おわりに|毎年作るからこそ、意味を知って
毎年当たり前のように並ぶ栗きんとんも、意味や背景を知って作るとひと味違いますね。
なめらかさに気を配ったり、甘さを少しずつ整えたり。ひと手間をかける栗きんとんは、新しい年を迎える気持ちが反映されているようです♪
色々と詳しく解説してきましたが、完璧を目指さなくても大丈夫。家族の好みに合わせて、少し甘さを控えめにしたり、気負わず作る栗きんとんも、立派なおせちの一品です。
今年も、来年も。変わらず食卓にあたたかな時間を運んでくれますように、願いを込めて。
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