~和ごはん歳時記~
季節がひとつ動くたびに、台所にも小さな変化が訪れます。
昔から受け継がれてきた行事や、その日に食べたい和のおかずたち——そんな“季節のしるし”を、日々のごはんといっしょに楽しんでみませんか。

「和ごはん歳時記」では、その月らしい習わしや、心ほっとする和のごはんをやさしくお届けします。季節の台所に、そっと寄り添うことができますように。

日差しがだんだんと強くなり、いよいよ本格的な夏がやってきますね。

蒸し暑さに少し体や心が疲れやすくなる7月ですが、昔の人はそんな時こそ「行事食」や「旬の食材」を上手に取り入れて、健やかに夏を乗り切る工夫をしていました。

「和食の行事って、準備が少し大変そう…」 そんな風に思わなくても大丈夫。ほんの少しのアイデアで、いつもの食卓に季節の彩りと涼を呼び込むことができます。

今回は、7月に楽しみたい行事食と、手軽に取り入れられるおいしいアイデアをご紹介します。


スポンサーリンク

7月の行事食カレンダー

2026年・7月の暦と行事の流れ

・7月2日  半夏生(雑節)
・7月7日  七夕(五節句)/小暑(二十四節気)
・7月20日 土用入り(雑節)
・7月23日 大暑(二十四節気)
・7月26日 土用の丑の日(行事食)

※2026年の夏土用は、7月20日(月)から8月6日(木)まで。土用の丑の日は、この期間中にあたります。

日付・時期行事名主な意味・由来行事食・食文化
7月1日頃半夏生田植えを終える目安とされた農の節目たこ料理(関西)/うどん(香川)など地域食
7月7日七夕星に願いを託す五節句のひとつそうめん
7月下旬土用の丑の日夏の土用に体調を整える知恵うなぎ・梅干しなど「う」のつく食べ物・滋養のある料理

▶︎ 🔗【8月の行事食まとめ】はこちら
お盆や処暑など、夏の終わりを整える8月の行事食を紹介しています。


スポンサーリンク

7月の主な行事と食文化

7月2日頃「半夏生(はんげしょう)」(2026年は7月2日)

~田植えの労をねぎらい、大地の恵みに感謝する~

7月に入ってすぐ、カレンダーで「半夏生」という文字を見かけたことはありませんか?

半夏生とは、二十四節気(にじゅうしせっき)という季節の区切りをさらに細かく分けた「雑節(ざっせつ)」のひとつ。夏至から数えて11日目にあたる日のことです。

昔の農家さんにとっては「この日までに田植えを終える」という大切な目安の日でした。無事に田植えを終えたお祝いと、神様への感謝を込めて、地域ごとにさまざまな行事食が食べられてきました。

なかでも有名なのが関西地方の「タコ」です。「作物がタコの足のように、大地にしっかりと根を張りますように」という願いが込められています。

また、香川県では「うどん」福井県では「丸焼きサバ」を食べる習慣もあります。

スーパーのお刺身コーナーにある「茹でタコ」を使えば、火を使わずにサッと一品が作れます。きゅうりと一緒に酢の物にしたり、カルパッチョ風にしたりして、夏の始まりを味わってみませんか?

【半夏生の和ごころ献立例(一汁三菜)】

  • 主食: タコと大葉の混ぜごはん(市販の茹でタコを刻んで、大葉・ごまと一緒に白ご飯に混ぜるだけ)
  • 主汁: お麩とみつばのお吸い物
  • 主菜: 鶏肉と夏野菜のさっぱり焼き(ポン酢味)
  • 副菜: 冬瓜(とうがん)のそぼろあんかけ
  • 副々菜: トマトの塩麹和え

半夏生は、大地の恵みに感謝して、体と心をひと休みさせる日。タコは市販のぶつ切りや、たこわさびを少しアレンジするだけでも十分ですよ。がんばった自分へのご褒美として、まずは『おいしく楽しむこと』を意識してみてくださいね♪

【ミニコラム】もうひとつの「半夏生」〜半分だけお化粧する、不思議な植物〜

実は、この時期になると、暦(こよみ)の「半夏生」とまったく同じ名前を持つ、不思議な植物が美しい見頃を迎えます。

ドクダミ科の多年草である「ハンゲショウ(半夏生)」。 この植物の面白いところは、1年の中でこの半夏生の時期にだけ、緑色だった葉っぱの表面が、まるで白いペンキを塗ったようにパッと真っ白に変化することです。

その姿が「葉の半分だけが白い(半分化粧している)」ように見えることから、「半化粧(はんげしょう)」と名付けられたという説があります。

また、ちょうどこの暦の時期に花を咲かせることから、「半夏生」と呼ばれるようになったとも言われています。

川辺や湿地に自生する植物ですが、この時期に白い葉を揺らす姿は、蒸し暑い日本の夏にハッとするような涼を運んでくれます。

昔の人は、お皿に敷く青葉として使ったり、一輪挿しにしてお部屋に飾ったりして、目からも「涼」を楽しんでいました。

もしお散歩の途中やお花屋さんで見かけたら、「あぁ、もう田植えが終わる季節なんだな」「本格的な夏が来るんだな」と、暮らしに巡る季節を感じてみてくださいね。


7月7日「七夕(しちせき)の節句」

~一年に一度の願いを込めて、涼やかな麺をすする~

7月7日は「七夕(たなばた)」。実は、桃の節句や端午の節句と並ぶ「五節句」のひとつで、古くは「しちせき」とも呼ばれます。

この日にいただく行事食の代表が「そうめん」。

これには諸説あり、七夕の神話に登場する織姫の「織り糸」に見立てたという説や、平安時代に宮中で食べられていた、小麦粉と米粉を練って作ったお菓子「索餅(さくべい)」が変化したものという説があります。

索餅には「無病息災を願って食べる」という意味があり、それがそうめんに受け継がれました。

いつものそうめんを、少しだけ七夕仕様にしてみませんか?

オクラを輪切りにすると、可愛いお星さまの形になります。これを茹でてそうめんの上に散らすだけで、一気に七夕の雰囲気に。錦糸卵や細切りのきゅうりを細長く並べて「天の川」に見立てるのも素敵です。

もし型抜きがあれば、お子様と一緒に人参やハムをお星さまの形にして飾るのもたのしいですね♪

【七夕の和ごころ献立例(一汁三菜)】

  • 主食: お星さまの七夕そうめん(オクラや星型に抜いた人参をトッピング)
  • 主汁: なめこと豆腐のみそ汁(そうめんがサッパリしているので、お味噌汁でコクを)
  • 主菜: サクサク天ぷら(海老やナス、大葉など、そうめんと相性抜群)
  • 副菜: 焼きナスの生姜醤油
  • 副々菜: 枝豆

★麺類が主食のときは、主菜に天ぷらなどボリュームのあるものを合わせると、満足感のある一汁三菜になります。

暑さが増す頃だからこそ、のどごしのよさや、食べやすさを大切にしたいですね。

【ミニコラム】そうめんのご先祖さま?不思議なお菓子「索餅(さくべい)」

七夕にそうめんを食べるルーツと言われている「索餅(さくべい)」。なんだか難しそうな名前ですが、実はとってもチャーミングなお菓子なんです。

小麦粉と米粉を練って、縄のようにねじってカラッと揚げたもので、形はちょっと「縄の結び目」や、沖縄のお菓子「サーターアンダギー」の細長い版に似ています。外はカリッと、中は素朴な甘さ。想像するだけで、ちょっと美味しそうですよね。

平安時代の人たちは、7月7日にこの索餅を食べると「一年間、無病息災で元気に過ごせる」と信じていました。

この索餅が、時代とともにだんだんと細く、長くのばされるようになって、江戸時代頃に今の「そうめん」の形に落ち着いたと言われています。

つまり、索餅はそうめんの『見た目のご先祖さま』であり、七夕に食べるという『お約束のご先祖さま』でもあるんですね。形は変わっても、健康を願う優しい気持ちは、ずーっと昔から引き継がれています。


7月中旬〜下旬「土用の丑の日(どようのうしのひ)」

~「う」のつく食べ物で、夏バテに負けない体づくり~

夏のスタミナ料理といえば「うなぎ」がおなじみですね。

この日に使われる「土用(どよう)」という言葉。実は「うなぎを食べる日」という特別な1日だけではなく、次の新しい季節へ移り変わる前の、約18日間の期間のことを指します。

ここでいう「季節が変わる日」とは、暦のうえで新しい季節が始まる日のこと(春の立春、夏の立夏、秋の立秋、冬の立冬)。7月の土用は、暦のうえで秋が始まる「立秋(8月7日頃)」の直前にあたるため、次の季節を迎えるための、いわば「季節のバトンタッチ期間」というわけです。

季節の変わり目であるこの時期は、昔からとても体調を崩しやすい時期とされてきました。

うなぎだけでなはく、「う」のつく食べものを食べるとよいとされる考え方もあります。これは、特定のごちそうに限らず、夏を乗り切るために、体をいたわる食事を意識するという知恵の表れです。

うなぎももちろんいいですが、もっと身近な食材でも、夏の体を優しく労わることができますよ。

うなぎを準備するのが難しい日でも、こんな「う」のつく食材も。
暑い日でもつるりとしたのどごしが嬉しい「うどん」、水分たっぷりの「うり(きゅうり・冬瓜・スイカ)」、クエン酸が疲労回復を助ける「梅干し(うめぼし)」。これらを取り入れるだけでも、立派な土用の行事食になります。

【土用の丑の日の和ごころ献立例(一汁三菜)】

  • 主食: ミニうな丼(または、梅干しをのせた冷やしうどん)
  • 主汁: お吸い物(お好みで、うなぎの「肝吸い」に見立ててお麩や三つ葉で)
  • 主菜: 豆腐のつくね焼き
  • 副菜: たたききゅうりと塩昆布の和え物(「うり」の仲間)
  • 副々菜: スイカ(食後のデザートとして、これも「うり」の仲間です)

高級なものを食べるということではなく、消化がよく、無理のない食材を選ぶ日と考えると、家庭の食卓にも、取り入れやすくなります。大切なのは『う』のつく食材で元気をチャージして、夏を笑顔で乗り切ろう


スポンサーリンク

7月の行事食を、家庭で手軽に楽しむ3つのコツ

「行事食をちゃんと作らなきゃ…」と身構える必要はまったくありません。日々の食卓を少しだけ整える——そのための、ささやかな目安として、どうぞ気楽にとりいれてみてくださいね。

冷たいそうめんやアイスが美味しい季節ですが、冷たいものばかりに頼りすぎると、胃腸が疲れてしまうことも。

この時期は、ただ体を冷やすのではなく、食卓を「整える」意識を持ってみませんか? 消化のよい食材を選んだり、ほどよく滋養のある温かいお味噌汁を添えたり。そんな少しの工夫で、夏を迎える体の準備がぐっと調いやすくなります。

行事のごちそうは、食卓の中心に主役がひとつあれば、それだけで大成功です。

  • 半夏生なら: いつものおかずに、タコの酢の物をプラスするだけ
  • 七夕なら: そうめんをメインに、あとはお野菜を添えるだけ

あれもこれもと頑張りすぎず、あとは旬の野菜を使ったシンプルな副菜を合わせるくらいが、心地よく続けられる無理のない形です。

お料理そのものを頑張らなくても、器や盛り付けをほんの少し変えるだけで、行事の瑞々しい気配はしっかり伝わります。

  • 涼を運ぶ器えらび: そうめんや酢の物は、ガラスの器に盛るだけで、目から涼しさを取り入れることができます。
  • 彩りのマジック: 青々とした大葉などの葉物や、みょうが・ネギといった薬味を添えて、涼やかな色合いを意識してみましょう。
  • 小さな模様替え: 七夕や節目の日は、箸置きを季節のものに替えるだけでも、食卓の気分がパッと変わりますよ。

毎日のごはん作りだけでも大変なのに、行事のことまで完璧にやろうとしたら息が詰まってしまいます。大切なのは『頑張ること』ではなく、季節の変わり目を『あぁ、心地いいな』と楽しむこと。お惣菜のタコを買ってきたり、そうめんにオクラをポンとのせるだけでも、あなたの優しい和ごころは家族にちゃんと届いていますよ。


7月の「旬の食材」を味わう

行事の日だけでなく、日々の食卓に「旬」を取り入れることも、立派な和食文化です。7月の旬の野菜は、どれも太陽の光をたっぷり浴びて、みずみずしく栄養満点。

◆ 夏の体を優しくいたわる「野菜」

太陽の光をたっぷり浴びた夏野菜は、水分やカリウムが豊富で、体にこもった熱を優しく逃がしてくれます。

  • トマト: 甘みと酸味のバランスが抜群。そのままはもちろん、だし浸しや白和えにも。
  • ナス: 油やだしをじゅわっと吸い込んだナスは絶品。焼きナスや揚げ浸しが定番です。
  • きゅうり: みずみずしく、体をシャキッと潤してくれます。酢の物や叩ききゅうりに。
  • トウモロコシ: この時期だけの弾ける甘さ。芯まで一緒に炊き込む「トウモロコシご飯」が人気です。
  • ピーマン / 万願寺とうがらし: ほのかな苦味が食欲をそそります。おじゃこと一緒に甘辛く炒め煮に。
  • ズッキーニ / 冬瓜(とうがん): 実はどちらも「ウリ」の仲間。みそ汁の具や、ひんやり冷やしたあんかけにぴったりです。
  • 大葉(しそ) / みょうが: 食欲が落ちがちな夏の食卓に欠かせない、爽やかな薬味の主役たち。

◆ 涼やかさとスタミナを届ける「魚介」

夏の味覚を代表するお魚や、行事食にも大活躍する頼もしい顔ぶれです。

  • タコ: 半夏生でもおなじみ。タコ飯や、きゅうりとワカメを合わせたさっぱり酢の物に。
  • うなぎ / 穴子(あなご): 土用の丑の日のスタミナ源。甘辛いタレが食欲を刺激します。
  • アジ(鯵): 一年中見かけますが、夏の時期は特に脂がのって美味しい季節。たたきや南蛮漬けに。
  • 鮎(あゆ): 清流の香りを運ぶ夏の使者。塩焼きにして、たで酢やカボスを添えて。
  • スズキ: 夏が旬の白身魚。お刺身を氷水で引き締める「洗い」は、目にも涼しい一品です。

◆ 食後の贅沢、みずみずしい「果物」

自然な甘みとたっぷりの水分で、体も心もホッと潤います。

  • スイカ: 土用の丑の日の「う」のつく食材としても大活躍。
  • 桃(もも): ジューシーで優しい甘さ。デザートにはもちろん、実は白和えにしても上品です。
  • ブルーベリー: 初夏から夏にかけてが国産の旬。ヨーグルトのトッピングなどに。

スポンサーリンク

おわりに|自分のペースで夏を迎える

日本の行事食や旬の文化は、「お料理を頑張るためのもの」ではなく、本来は「大切な人が、この季節を元気に過ごせますように」という優しい願いから生まれたものです。

きれいに飾り付けをしなくても、高級な食材を使わなくても大丈夫。 「今日は半夏生だから、タコを食べよう」 「暑いから、お昼は梅干しを添えよう」

そんな風に、暮らしのなかにほんの少し季節を迎え入れる気持ちこそが、何よりの「和ごころ」です。

今月も、おいしく食べて、健やかな毎日をお過ごしくださいね♪

あわせて読みたい♪

土用明けからお盆、処暑へ。夏の終わりを、やさしい食卓で迎える8月の行事食をまとめています。
▶︎ 🔗8月の行事食まとめ

6月の行事食では、夏を迎える前の節目「夏越の祓」についてもご紹介しています。あわせてどうぞ♪
🔗6月の行事食まとめ


日本の行事食を、月ごとにまとめた年間行事食一覧もご用意しています。
🔗1月~12月の年間行事食まとめ


※この記事は、以下の資料などを参考に、現代の家庭で手軽に楽しめるアイデアとしてご紹介しています。

【主な参考資料】

  • 農林水産省「うちの郷土料理」
  • 国立天文台「暦(こよみ)に関する資料」
  • 日本の歳時記・年中行事事典

スポンサーリンク