梅雨が明けると、いよいよ本格的な夏の到来ですね。 じわじわと体力を奪う日本の暑さ。冷房や冷たい食べ物で、気づかないうちに体がバテてしまっていませんか?
「家族や自分の健康のために、体によいものを自然な形で取り入れたい」 そんな丁寧な暮らしを意識する皆様におすすめしたいのが、日本の伝統的な発酵飲料である「甘酒」です。
ひな祭りや冬のイメージが強い甘酒ですが、実は俳句の世界では「夏」の季語。
どうして甘酒が夏の季語なのか・・・
今回は、知れば誰かに話したくなる夏の甘酒のストーリーと、この夏試したくなる涼やかな楽しみ方をご紹介します。
江戸時代の街に響いた「甘酒売り」の声
現代の私たちにとって、甘酒は冬に体を温める飲み物という印象が強いかもしれません。しかし、江戸時代にタイムスリップしてみると、その景色は全く逆でした。
天秤棒(てんびんぼう)を担いだ「甘酒売り」が街を歩くのは、厳しい暑さが続く夏の日。 クーラーも保冷技術もない時代、過酷な夏を乗り切るための「飲む点滴(エネルギー補給飲料)」として、庶民は甘酒をこぞって買い求めていました。
幕府が「庶民の健康を守るため、甘酒の価格を高くしてはならない」と最高価格を規制していたほど、当時の人々にとってリアルな命綱だったんですね。
そんな当時の江戸の様子が垣間見える資料が残されています。
『守貞漫稿』にみる「甘酒売り」

『守貞漫稿』は、江戸時代後期の風俗考証家・喜田川守貞(きたがわもりさだ)が、天保9年(1838年)から約30年間にわたり書き綴った風俗解説書です。
江戸と上方(京都・大坂)の言葉、服装、職業、物売りなどの違いが、緻密なイラスト(挿絵)付きでリアルに描かれており、「江戸時代のタイムカプセル」とも言える超一級の歴史史料です。
この書物のなかに、天秤棒を担いで街を歩く「甘酒売り(当時の表記は『醴(あまざけ)売り』)」の記述があります。
① 江戸と上方(京都・大坂)で「売る季節」が違った!
江戸時代、甘酒は熱中症・夏バテ予防として大流行しました(俳句で「甘酒」が夏の季語なのはこのためです)。しかし、地域によって売る季節に違いがありました。
- 京都・大坂(上方): 「夏月の夜」にだけ売り巡る、夏の季節限定の商売でした。料金は1杯6文。
- 江戸: 夏だけでなく「四季を通じて(四時)」売り歩いていました。料金は1杯8文。

江戸の街では、甘酒の人気があまりに高く、季節を問わず一年中愛される国民的ドリンクになっていたことがわかります。
② 夏でも「あつあつ」が定番!
天秤棒の片側には「釜(鍋)」が据え付けられており、下にコンロ(火床)を仕込んで、いつでも温められるようになっていました。
当時の甘酒売りは、お客さんに手渡す際に「へい、お熱うございます」と言って売っていたと記録されています。

夏の暑い盛りでも、ふうふうと息を吹きかけながら「熱い甘酒」を飲んで、汗をかいて暑気払いをしていたのですね。
③ 江戸の恋の比喩「甘酒屋の荷(あまざけやのに)」
甘酒売りが担いでいた天秤棒の荷物には、面白い特徴がありました。
- 前側: 冷たいお盆や茶碗
- 後ろ側: 熱い甘酒の入った釜(コンロ付き)
「前は冷たく、後ろは熱い」というこの道具の構造から、当時の江戸っ子たちは「一方は熱(熱中)しているが、もう一方は冷めている」状態、つまり「片思い」のことを洒落て「甘酒屋の荷」と呼びました。

江戸の人々らしい、なんとも小粋なユーモアですね^^。
参考元:喜田川守貞 著『守貞漫稿』(『類聚近世風俗志』)
※国立国会図書館デジタルコレクション等で原文や挿絵(甘酒売りの図)が閲覧可能です。
「米麹」で作る甘酒が、夏の体に嬉しい理由

甘酒には、酒粕から作られるものと、米麹(こめこうじ)から作られるものの2種類があります。 丁寧な暮らしに取り入れるなら、おすすめは断然「米麹の甘酒」です。
お米と麹を発酵させて作るため、砂糖不使用なのに驚くほど優しい甘さ。さらにアルコール0%なので、小さなお子様や妊娠中・授乳中の方でも、家族みんなで安心して楽しめます。
麹菌が、お米のデンプンやタンパク質をすでに分解してくれているため、
- 体に吸収されやすいブドウ糖(エネルギーにすぐ変わる)
- 疲労回復をサポートするビタミンB群
- 健康な体を保つ必須アミノ酸 などが豊富に含まれています。

食欲が落ちてしまいがちな夏、胃腸に負担をかけずに栄養を補給できる、まさに理想的な「天然の栄養ドリンク」です!
※参考:文部科学省「日本食品標準成分表」、農林水産省「甘酒の栄養成分について」
ひと手間で涼やかに。暮らしを彩る夏の甘酒アレンジ
そのまま冷やして飲むのはもちろん、こんなひと工夫も♪お気に入りのグラスで、休憩時間にホッと一息ついてみませんか?
1. すっきり爽快「甘酒の炭酸割り」
甘酒と炭酸水を【1:1】の割合で割るだけ。甘酒のとろりとした甘みがシュワシュワとはじけ、驚くほどすっきりと喉を潤してくれます。
2. 涼を呼ぶ「おろし生姜」を添えて
冷たい甘酒に、ほんの少しすりおろした生姜を添えて。キリッとした風味が加わり、冷房で冷えがちな夏の体を内側から優しく温めてくれます。
3. 朝の楽しみに「トマト甘酒」
トマトジュースと甘酒を【1:1】で合わせると、まるでベリー系のスムージーのような爽やかな味わいになります。トマトの酸味と甘酒のコクが絶妙にマッチし、夏の朝の一杯にぴったりですよ。
4. ひんやりシャリシャリ「甘酒シャーベット」
甘酒をジッパー付きの保存袋に入れて冷凍庫へ。凍らせる途中で一度袋の上からモミモミとほぐして…口溶けなめらかな絶品シャーベットの完成です。
自然な甘みのひんやりスイーツで、火照った体も心地よく癒やされますよ。
おわりに|先人の知恵を味方につけて
厳しい暑さが続く毎日ですが、そんな時だからこそ、季節の移り変わりを慈しみ、昔ながらの知恵を暮らしに取り入れる時間を大切にしたいものですね。
江戸の人々が夏バテ防止に愛した甘酒。この夏は、そんな先人の知恵が詰まった「甘酒」を毎日の習慣にして、家族みんなで健やかに、そして涼やかに乗り切ってみませんか?
ほんのり甘くて優しい味わいが、夏の疲れをそっと癒やしてくれる気がします。
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