6月も終盤を迎え、カレンダーをめくればもうすぐ7月。街のあちこちで、色とりどりの短冊が揺れる笹の葉を見かける季節になりましたね。
7月7日は、五節句のひとつである「七夕(しちせき)」。 みなさまは、七夕の日に何を召し上がりますか?
「我が家では、毎年なんとなく天の川に見立ててそうめんを食べているわ」という方も多いかもしれません。
実は、七夕にそうめんを食べるのは、単なる現代のブームではなく、千年以上の歴史を持つとても由緒正しい宮中行事が由来だといわれています。
今回は、知っていると夏の食卓がちょっぴり愛おしくなる、七夕そうめんに隠されたストーリーをお届けします。
なぜ七夕にそうめん?~始まりは「鬼の病気」を防ぐため~
今でこそ夏の定番であるそうめんですが、そのルーツは古代中国にまで遡ります。
始まりは、縄のような形をしたお菓子「索餅」

むかし中国に、7月7日に亡くなった皇帝の子どもが「鬼(疫病をもたらす神)」になり、街に病気を流行らせたというお話がありました。
人々は困り果て、その子が健在だった頃に大好きだった「索餅(さくべい)」というお菓子をお供えしたところ、ピタッと病気が収まったのだそうです。
索餅とは、小麦粉と米粉を練って、縄のようにねじって揚げた(または茹でた)お菓子。 これが「7月7日に索餅を食べると、1年間無病息災で過ごせる」という信仰になり、奈良時代に日本へと伝わりました。
「索餅」から、サラサラと美しい「そうめん」へ
室町時代頃になると、同じ小麦粉で作られた、より細くて食べやすい「そうめん」へと姿を変え、宮中の七夕行事には欠かせない供物となりました。

冷蔵庫もエアコンもない時代、夏を無事に越すことは命がけのことでした。「大切な人と元気に夏を乗り切りたい」そんな祈りを身近な食べ物に託し、時代を経て美しい習慣になる――。何不自由なく過ごせる幸せな現代だからこそ、私たちはその奥にある切実な想いと知恵を、大切に受け継いでいきたいものですね。
織姫の「糸」に願いをかける、もうひとつの風情ある理由

さらに時代が進むと、この細く長いそうめんの姿に、人々は七夕の物語を重ね合わせるようになります。
裁縫や芸事の上達を願う「白い糸」
七夕の主役のひとりである「織姫(織女星)」は、機(はた)を織る仕事の神様です。 そのため、江戸時代の女性たちは、真っ白で細いそうめんを「織姫の織り糸」に見立てるようになりました。
「織姫のように、お裁縫や手芸、芸事が上手になりますように」
そんな願いを込めて、七夕の日にそうめんをいただく習慣が庶民の間にも広がっていったのです。

現代なら、何か習い事を頑張っている方や、お子様の成長を願うのにもぴったりの意味合いですね。
💡夏の体を労る、上品な「薬味」の合わせ方

最後に、今年の七夕そうめんが格段に美味しく、そして体に優しくなるワンポイントをお届けします。
そうめんは体を冷やす性質がありますが、ここに「生姜(しょうが)」や「みょうが」「大葉」などの薬味を添えるのは、実はとても理にかなった先人の知恵です。
これらの薬味には、お腹を温め、殺菌効果を高め、食欲をそそる素晴らしいパワーがあります。
ネギだけでなく、ぜひお皿の上に数種類の薬味を上品に、少しこんもりと盛ってみてください。
緑や赤の色彩が加わるだけで、いつものそうめんが、まるで料理屋でいただくような特別な一品に早変わりしますよ。
おわりに|細く長く、健やかに
天の川のように美しく流れるそうめんを、お気に入りのガラスの器に盛って、涼やかな音と一緒にいただく。
何百年も前の人たちも、夜空を見上げながら健康を願い、そうめんをすすっていたのかも――。そんな風に、はるか昔の食卓に思いを馳せると、いつものそうめんが少し特別なものに感じられませんか。
今年の7月7日は、ただ「手軽だから」ではなく、先人たちの優しい祈りに想いを馳せながら、そうめんを味わってみてはいかがでしょう。
みなさまの願い事が、夜空の星まで届きますように。♪
本日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。
▼ 合わせて読みたいおすすめ記事
👉七夕の「短冊の色」に隠された秘密って?🔗
願いを届ける「5つの色」の秘密と、食卓がパッと華やぐ可愛いアレンジをご紹介しています。
👉土用の丑の日になぜうなぎ?🔗
7月下旬の大イベント!うなぎブームの裏に隠された歴史の逆転劇です。
👉7月の行事食まとめ(和ごはん歳時記シリーズ)🔗
七夕から土用まで、厳しい夏を健やかに乗り切るための先人の知恵と行事食をまとめています。
